くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女子高生に殺されたい」「やがて海へと届く」

「女子高生に殺されたい」

傑作とまでは行かないけれど、相当に良くできたサイコミステリーの秀作。わざとらしいフェイクが全く見られないのにどんどんミスリードされていく演出が見事で、ラストがラストまで全く見えない脚本の妙味を徹底的に楽しむことができました。少々、締めくくりがくどい気もしますが、それでも長すぎず短すぎず、程よい余韻を残したエンディングも面白かった。監督は城定秀夫。

 

スタンダード画面で、白衣を着た主人公東山春人が話をしている。臨床心理士を目指していた頃、教室で質問されている授業での映像から映画は幕を開ける。カットが変わり、桜満開の新学期のニ鷹高校の登校風景、1人の新任教師東山春人が歩いている。その端正な容姿から早くも女子高生たちの噂になっている。

 

春人は希望を出してこの学校へ転任してきたのだが、彼は七年前からある計画を立て実行していた。そんな彼に、不穏なものを感じたのが小杉あおいだった。彼女はアスペルガー症候群で、並外れた感覚の持ち主で、親友の佐々木真帆と一緒に行動し、身近な死を感じたり、地震を予知などした。

 

東山春人はオートアサシノフォリアと呼ばれる精神的な病気だった。それは、自殺はしないが、誰かに殺されることを望むという精神疾患だった。春人は赴任し、計画に沿って、さまざまな女子高生に接触しながら、自分への好意を巧みに利用して計画を進めていく。彼が殺されるにあたって、犯人が罪に囚われず、しかも犯罪とわからないように完全犯罪でないといけないことという絶対条件があった。

 

春人は、自分のファンである君島に近づき、巧みに決行日の11月8日文化祭の日に上演する演劇の演目を操っていく。さらに、柔道部で腕力もある沢木にも近づき当日の役割を演じさせるべく心に入り込んでいく。春人はその演目の中で叫ぶ「キャサリン」の言葉が必要だった。そして、訓練した警察犬を使って、夜、公園に一人の女子高生を呼び出し、警察犬に襲わせ、君島の声で吹き込んだ「キャサリン」の言葉を拡声器で流す。次の瞬間、警察犬は女子高生に殺されてしまう。

 

翌日、教室に殺された警察犬が置かれていた。春人は予期しなかった展開に戸惑うが、それを巧みに利用しながら計画を進めていく。しかし、この事件で生徒のカウンセリングが必要と考えた学校側は心理カウンセラーを招致する。やってきたのは春人の大学時代の元カノで臨床心理士になった深川五月だった。

 

学生時代、同じ道を目指す春人と五月は自然と交際を始める。そんな頃、八歳の少女が大柄の男性を締め殺すという事件が起こる。その事件に興味を持った春人は資料を集め没頭し始め、やがて五月とも別れてしまう。その少女の名前は佐々木真帆だった。彼女は、父親からの暴力から逃れるべくカオリという人格を作り出していた。さらに、大男が家に侵入して襲われた際、たまたまテレビで流れていた洋画のセリフ、「キャサリン」から、次の人格キャサリンを作り出す。キャサリンは異常な怪力の持ち主で、襲いかかってきた大男を紐で締め殺したのだ。春人は彼女の成長を待ち、大人になる直前の十七歳の時に、再度キャサリンを覚醒させて自分を殺してもらおうと計画したのだ。

警察犬に襲わせたのは真帆で、キャサリンが今も存在しているかの確認だった。

 

五月は生徒たちとも仲良くなり、この日、保健室で一緒に真帆とあおい、そして真帆に気がある川原と一緒に弁当を食べていた。あおいが突然、大きな地震が来ると言い出し、慌てて真帆とあおいは布団をかぶる。地震がさって、五月が真帆に話しかけると、なんとそれはカオリという人格だった。五月は初めて真帆が多重人格者だと知る。そして、それがかつて春人が夢中になっていた八歳の少女の今の姿だと知った五月は、春人の計画を聞き出そうとする。

 

11月8日文化祭の日がやってきた。春人は、舞台の幕が機械で上がらないように細工をし、沢木と手動で幕を開ける。たるんだロープで自分を殺してもらい、そのまま、電動のスイッチを入れると自分がぶら下がって事故に見えるように細工をする。しかし、計画を未然に防ぐため五月は春人を呼び出し、コーヒーに睡眠薬を入れて現場に行かせないようにするが、春人は逆にコップを入れ替えて五月を眠らせ舞台へ向かう。

 

やがて、幕が開く。春人は、真帆に見えるように沢木を抱きしめ真帆に嫉妬心を起こしカオルの人格を呼び出す。そして、春人はカオルを綱元に連れ出す。そして春人はカオルを襲うふりをする。間も無くして、舞台では君島の「キャサリン」を絶叫するセリフが聞こえてきて、カオルはキャサリンを呼び出し、春人の首を絞め始める。

 

一方、目が覚めた五月はあおいや川原と体育館に飛び込んでくる。そして、あおいの鋭い感で舞台上部にいる春人と真帆を発見、飛び込んだ川原が春人とキャサリンになった真帆を引き剥がすが、誤って、春人は首を吊る形で落下してしまう。キャサリンになった真帆はあおいの必死の説得で真帆に戻ることができた。

 

命は助かった春人は記憶を失って入院していた。五月は、かつて学生時代に質問した映像を見せて、思い出すまで見るようにという。真帆やあおいも見舞いにやってくる。真帆は一人春人の病室に入る。春人は記憶が十分戻っていなかったが、真帆の一言に何かを感じ、また見舞いに来てほしいと告げて映画は終わっていく。

 

原作を大胆に改編した、ほとんどオリジナルに近い作品というのも良いし、伏線を散りばめるというよりも、時間と空間を前後させてミスリードしていくサスペンス仕立ての作劇が実によく成功している。それでいて、女子高生の危うい心理を巧みに操るストーリー展開も秀逸。大傑作とは行かないまでも、とにかく面白い映画でした。

 

「やがて海へと届く」

なんとも間延びしたダラダラした映画だった。これでお金取るのかと思えるような作品に久しぶりに出会った。無駄なシーンの繰り返しと、しつこいストーリーの重複に参った。浜辺美波を見に行っただけとはいえさすがにこの映画はいただけない。監督は中川龍太郎

 

アニメで何やら意味深な映像が描かれ、カットが変わると、夜のレストランに勤める主人公真奈の後ろ姿。来客があるという知らせでロビーへ行くと学生時代からの友人で親友すみれの彼氏でもあった遠野が来ていた。二人はそのまま、すみれの荷物をマンションに取りに行く。どうやらすみれは行方不明らしく、というかおそらくなくなっているらしく、荷物の整理をする。そこで、猫のポーチを真奈が見つけて時は大学入学の場面へ。

 

クラブ勧誘を通り抜けている真奈は猫のポーチを拾い上げる。そこへすみれがやって来て二人で同じクラブに入り、新歓コンパに参加。場に居づらくなり二人は先に帰る。やがて親友同士になり、すみれは真奈の部屋に住むようになり、間も無くしてすみれは遠野という彼氏ができる。そして真奈の部屋を出て、遠野と同棲するようになるすみれ。

 

すみれはある時一人で旅行に出る。そこで、東日本大震災津波で流されたらしい。真奈は遠野とすみれの実家に行く。そんな頃、真奈の勤めるレストランのチーフが亡くなり、真奈はしばらく行っていなかった、すみれが最後に旅に出た場所にシェフと一緒に行く。と、一体どんな展開かという感じである。ここから、実際に被害に遭った素人のインタビュー映像が入れられて、帰ってくる。もう勘弁してほしい感じである。

 

ここから、真奈と出会った頃からのすみれが歩んできた過去が語られる場面が再度繰り返され、最後に冒頭のアニメシーンから、すみれが溺れていく。さらに真奈の場面に戻り、すみれが大事にしていたカメラに、すみれに向かって話しかける真奈の映像で映画は終わっていく。

 

ダラダラした駄作。こういう映画に、今人気の俳優を投入して、なんとも安易な作品に仕上げた制作側の態度に腹が立つ一本でした。