くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハッチング 孵化」「バーニング・ダウン 爆発都市」

「ハッチング 孵化」

映画としての出来栄えもそこそこですが、ホラー映画としては傑作。いかにも幸福な家族こそが真の恐怖の裏返しであるという風刺を巧みに使った人間の恐怖を具現化した映画でした。少々グロいシーンもあるものの、これが北欧ホラーの醍醐味。しかも主演の女の子が実にキュート。二度見たいとは思いませんが、色んな意味で怖かった。監督はハンナ・べルイホルム。

 

いかにも幸せそうな家族の動画を、これまたどこか異常なくらいにニコニコ撮る母の姿。わざとらしいほどの笑顔を見せる父、そして一人娘ティンヤ、弟のマティアスの画面から映画は始まる。冒頭タイトルバックに流れる、口ずさむ歌が妙に不気味なオープニングです。ソファに座って家族全員がカメラに微笑んだところで窓に何かが当たる音がする。ティンヤが窓を開けると一羽のカラスが飛び込んできて、部屋を飛び回り、食器やガラス、末はシャンデリアまで落として大暴れ。ティンヤが布をかぶせて捕まえるが、母は布ごとカラスをひねり殺し、ティンヤに生ゴミにしてるように指示する。ぞくっとするシーンです。

 

ティンヤは、クラシックバレエをしていて、実は、母親は、太ももに無残な手術痕があり、どうやら母の夢を叶えるためにティンヤを指導しているようである。コンテストが間近に迫り練習を見つめる母は、失敗するティンヤを異常なくらいの圧力で練習させる。深夜、昼に殺した鳥の声を聞いたように思って森に行ったティンヤは、横たわるカラスを見つける。しかし、苦しむカラスを石で叩き潰して殺してしまう。ところがそばに卵が残されていた。ティンヤは、その卵を持ち帰り、育て始める。

 

そんなティンヤの隣にレーテという少女が引っ越してくる。彼女もバレエをしていて、なかなか上手い。ティンヤが育てた卵は日に日に大きくなってくる。ある日、ティンヤが帰ると、母親がテロという男性といちゃついているのを目撃する。母親はティンヤに口止めするが、母はテロと恋に落ちたと平然と告白する。しかも、テロの別荘にティンヤも連れていくと言い、それをにこやかに受け入れる父親。明らかに何かがおかしい。ティンヤは、母の姿に悲しくなり涙を流すが、その頃には卵は相当大きくなっていた。そしてティンヤの涙を受けてついに孵化し、鳥の化け物のような物が現れる。

 

夜、レーテの飼っている犬がうるさく泣く。しばらくすると、化け物はティンヤのベッドに惨殺した犬の死骸を置いていた。思わず嘔吐するティンヤだが、化け物はその汚物を食べる。この場面がかなりエグい。化け物はティンヤが悪意を持ったり、ティンヤに危害を加えようとするものを襲うようになる。コンテストの選考か近づいた頃、一人帰ったレーテは、何者かに襲われるが、それはティンヤの化け物によるものだった。しかも、次第に化け物はティンヤの姿に瓜二つになっていく。

 

テロの別荘に着いたティンヤと母だが、テロには前妻との間に生まれた赤ん坊もいた。母が不在の時、異様な叫び声を聞いたテロがティンヤの部屋に入ると、なんと、ティンヤの汚物を食べる化物を目撃してしまう。しかも、ティンヤが、コンテストのストレスでそうなったと勘違いするが、部屋に入るのを阻止しようとして、テロは手に怪我をする。

 

コンテストの日、テロの赤ん坊を可愛がる母を見たティンヤは母に嫌悪感を持つが、化け物は、その赤ん坊を狙いはじめる。ティンヤがコンテスト会場で演技をし始めた頃、化け物は赤ん坊を襲おうと迫っていた。しかし、ティンヤがわざと鉄棒から落ちて手首を痛める事で、赤ん坊を救う。ティンヤと化け物の体は一心同体だった。

 

テロは、化け物をティンヤだと勘違いしてティンヤと母を追い出す。わけもわからず狂ったようになる母だが、家に帰ると、化け物がティンヤを待っていた。ティンヤが責めるが、化け物の姿はほとんどティンヤと同じになっていた。母の前に現れた化け物を母はティンヤだと思って髪をすいてやるが、そこへティンヤが現れる。化け物は母に襲いかかるが、ティンヤに引き剥がされ、ティンヤに責められると化物の口が避けて悍ましい姿になり逃げる。化け物の存在を知った母はティンヤと化け物を殺そうと家の中を探し始める。

 

そして、ついに二人は化け物を追い詰め、母がナイフを突き刺そうとするが、ティンヤが庇うようなかたちで、胸を刺されてしまう。そして、ティンヤの血が化け物に注がれると、化け物はティンヤの姿に再度変貌していき、「ママ」と言葉を発する。こうして映画は終わる。

 

人間の奥底に潜む残虐性をホラー映像として具現化した感じの作品で、化け物の視線とティンヤの視線が同一になる映像演出や、決して100%いい子ではないティンヤの姿、異常なくらいにいい人に見える父親や、どこか感情的に不安定な弟の存在など、何もかもが怖い。この後、家族はどうなるのかという余韻にも寒気がします。なかなかの傑作でした。

 

「バーニング・ダウン爆発都市」

さすがに香港映画、なんの中身もないけれど、見せ場の連続と、ストーリーテリングのシンプルな面白さで見せてくれます。単純に面白かった。監督はハーマン・ヤウ

 

旅客機が香港空港へ向かっている場面から映画が始まり、同時に空港にテロが行われるという連絡から、核弾頭を積んだ列車が空港に突入、大爆発を起こしキノコ雲が起こって映画は始まる。時間が遡り、爆破処理班のフォンが、自分の防御服を使ってまで爆弾を見事の処理する場面に移る。相棒のドンと次の任務につき、二人の市民に仕掛けられた爆弾を見事に処理、退出しようとするが、フォンがレンジの中に閉じ込められていた猫を逃してやるとそこにも爆弾が仕掛けられていて爆発が起こり、フォンは片足を失ってしまう。

 

必死でリハビリをしたフォンは現場復帰できるものと思っていたが上層部は彼に内勤を命じる。フォンは警察をやめ、行方不明となる。時は経ちテロ組織復生会がホテルでテロを実行する。その現場にいたのが、復生会でテロ行為をしていたフォンだった。しかし、テロ実行の際、フォンは逃げる際に爆発に巻き込まれ記憶を失って発見される。彼の元恋人が彼の記憶を取り戻す手助けをする。そして、フォンは復生会に潜入操作していて、マーと呼ばれるリーダーが計画している次のテロを阻止しようとしていたことを思い出させる。

 

マーは、フォンを助けて呼び寄せ、次のテロ計画である香港空港爆破と金融センターおよび九龍駅爆破の計画を進めていく。マーはフォンに、かつて二人は幼馴染で、マーはテロ組織のリーダーに、フォンは警官になって行ったのだ。マーは、フォンが警察をやめたことを知り、さらに闇サイトにアクセスして来たのがフォンだと確信して連絡を取り再会、空港爆破の計画を立てたのだと教える。

 

フォンの元恋人は、発見されたフォンをテロ組織の一因だとしたくないために潜入捜査官という偽の記憶を埋め込んでいたのだ。これもまた無茶な展開。フォンは、元恋人と相棒のドンの力になるべく、復生会のテロ行為を阻止すべく行動を開始する。マーはフォンを裏切り者と知り、拉致して計画を先に進める。

 

金融センターと九龍駅の爆破は阻止したが、マーが運転する核弾頭を積んだ列車は香港国際空港へ向かっている。空港への橋の途中に爆薬を仕掛け、核弾頭ごと海に落とすことで阻止しようと警察側は考え、ドンとフォンが橋で準備するが、列車の操作室での操作がうまくいかず、間に合わない。フォンは、今更戻っても普通の人間に戻れないからとドンを脱出させ、自ら犠牲になり爆破を実行、列車は海へ落下して大爆発をする。元恋人は、フォンとの最初の出会いの記憶を消せないものかと相談をしている場面でエンディング。

 

ものすごい展開と設定で、ラストはもう爆弾処理の話ではなくなってる感がありますが、派手なシーンが実に面白くてスピーディ。これこそ香港エンタメ映画の醍醐味でした。