「マルチプル・マニアックス」
悪趣味の極みという解説で覚悟してみたが、今時のホラー映画の方がよっぽど悪趣味に見える。決して面白いわけでもないものの、やりたい放題のバイタリティは見ていて心地良くなるところもあるから不思議です。監督はジョン・ウォーターズ。
変態一座という奇妙なテントの中での出し物を口上しているデヴィッドのシーンから映画は始まる。一座の座長はディヴァインという太った女で、デヴィッドはその愛人である。訳のわからない出し物に客を誘い金を奪って家に帰ってきたディヴァインらは、家でいちゃついている娘らと言いたい放題に悪態をつく。
一方デヴィッドには金髪の女が誘惑してきて、デヴィッドはその女と浮気をする。それを知ったディヴァインはデヴィッドらを殺しに出かけるが、途中教会で、ロザリオで犯されたり、二人の若者にレイプされたりとめちゃくちゃ。
自宅に戻ったデヴィッドらは、ディヴァインの娘を殺してしまい、そこへディヴァインも帰ってきて、デヴィッドの浮気相手を殺し、デヴィッドも殺し、一人になったディヴァインに巨大なロブスターが襲いかかる、一体なんやねんという展開から、ロブスターに犯されたディヴァインは車を奪って街へ行き、街の人を襲って、最後は軍人?らしいのに撃ち殺されて、アメリカを讃歌するような歌が流れ、映画は終わる。
なんとも呆れるひどさだが、今時の何かにつけ規制規制で縛られ、いい子ぶって映画を撮っている作品に比べればよっぽど力のある作品になっていると思う。まあ悪趣味なのは分かりすぎるほどわかるもののモノクロなので許せるとしよう。
「恐怖の足跡」
不思議な映画でしたが、なかなか面白かった。シュールなようでサスペンスのようで、中編くらいの長さに詰め込まれたミステリアスなお話を楽しみました。監督はハーク・ハーヴェイ。
女性らが乗った車を男どもが揶揄うところから映画は始まる。競争するということになり二台の車が疾走を始める。修理中の橋に差し掛かってもスピードを緩めず突入するが、女性三人の乗った車は橋の下に落ちてしまう。しばらくして一人の女性メアリーだけが泥だらけで川から出てくる。そして彼女は街を出てユタ州へ行くことにする。
彼女はパイプオルガンの奏者で、ユタ州にある教会でパイプオルガンのを弾くことになった。しかし、車を運転する途中、窓の外に不気味な男が現れたりする。教会の近くの下宿を見つけたが、向かいの部屋の青年がやたらしつこくメアリーを誘ってきたりするのが実に不気味。しかも、時折、不気味な男の影が見え隠れする。
街のそばに、今はさびれてしまったダンスホールの施設があり、興味をそそられるメアリー。服を買っていて突然音が消えて、誰も彼女に気が付かなくなり、公園で戸惑っていると、医師だという男が通りかかって、診察をしたりする。
教会で無意識に反キリストの音楽を弾いていて牧師に怒られクビになる。自暴自棄になり、彼女にアプローチしてくる向かいの青年と食事に行ったりするが、興が乗らない。青年にも嫌われ、メアリーは寂れたダンス施設に行くが、そこには黒服の男女が踊っていて、それに巻き込まれ、カットが変わると車の中で死んでいる場面となる。
死を彷徨った主人公のシュールな世界を描いたという解説になっていますが、彼女を認める周辺の人たちの存在もあり、どこか矛盾もしているのですが、それでも、なかなか面白い作品でした。