くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「モガディシュ 脱出までの14日間」「わたしのSEX白書 絶頂度」

モガディシュ 脱出までの14日間」

オープニングあたりに韓国映画らしい幼稚な演出は見られるものの、本編に入ってからは、かつてのような重苦しいだけの戦闘シーンではなく、映像として楽しめる動きのある画面が作られていて、素直に面白かった。それでいて、人間愛の部分をちゃんと描いている余裕がとっても良い映画でした。監督はリュ・スンワン。

 

1989年、国連加盟を目指す韓国は国連での発言力のあるアフリカの国々への接触を試みていた。1990年の年末、韓国はソマリア大使ハンを通じてソマリア大統領バーレーへのロビー活動のために、本国からカン参事官を送り込む。一方、北朝鮮もリム大使の元ソマリアへのロビー活動を進めていて、韓国の活動を妨害するような行動に出てくる。冒頭のカンの贈り物を奪う場面、タクシーとのやりとりなど、特に必要のない場面でのオープニングはいただけないが、ソマリアの首都モガディシュでのハン大使とリム大使、さらにカン参事官、リムの側近のテ参事官らのやり取りあたりから面白くなってくる。

 

ハンとリムがモガディシュのホテルで鉢合わせした頃、街で、バーレ政府へにの反対分子がクーデターを起こす。そして、殺戮と暴力で町中を蹂躙し始める。ハン大使らはなんとか大使館に戻り、脱出する方法を模索するが、ソマリア政府軍も暴徒に近くなっていた。大使館に反乱軍が迫ってくる中、カン参事官は、ソマリア政府軍に金を渡し護衛するように要請する。一方、リム大使ら北朝鮮大使館でも反乱軍が押し寄せ、大使館を後にせざるを得なくなる。リムらは中国大使館を目指すが、入ることができず路頭に迷う。襲ってくる反乱軍に身を隠したリムらは、韓国大使館に逃げ込むことを決意し、ハン大使に、韓国大使館前で訴える。

 

南北それぞれの思いが交錯する中、ハン大使はリムらを大使館内に入れる。最初はぎこちなかったものの、いつの間にか人間同士のつながりを感じ始める。次の問題は脱出方法だった。韓国は国交のあるイタリアに、北朝鮮はエジプトに交渉することになりそれぞれの大使館に向かう。しかしエジプト大使館はリムらの要望を断る。イタリア大使館は国交のある韓国だけを認めるという回答をする。カン参事官はハンに、リムらを韓国へ転向させることにして救出する方法を提案、イタリアも了承する。

 

車に分乗した南北の大使館員と家族は約束の時間までにイタリア大使館に到着するべく車の周りに本や砂袋を取り付けて銃弾から守るようにして出発。夕方の祈りの時間を見計らって街中を走るがやがて祈りの時間が終わる。政府軍のバリケードに遭遇したカンらは大使館員だと訴えるがふとした手違いで政府軍の銃撃を受けることになる。さらに反乱軍もそれに加わってくる。ここからのカーチェイスシーンがなかなか面白い。

 

そしてようやくイタリア大使館に着き、間一髪で南北の大使館員と家族は脱出に成功する。しかし、テ参事官は銃撃の中亡くなってしまう。ケニア空港に着いたハン、リムらだが、待っていたのはそれぞれの国の政府関係者で、それぞれ複雑な国の事情が一気に現実となる。ハンらは先に降り、リムらに他の外国人と降りるように提案、さっきまで人間同士の関係だったそれぞれがまた国の違う人となって別れて行って映画は終わる。

 

この映画を見ていると、本当に心があったかくなる一方、今の世界の情勢は本当に馬鹿げていると思ってしまいます。クライマックスのカーチェイスシーンのカメラワークも面白いし、夕方の祈りの時間を使った脱出劇という設定も上手い。もちろん実話の映画化なのですが、全体にテンポも良く出来上がっているし、国同士の面倒なプロパガンダ部分をあっさり流したのも良かった。娯楽映画として楽しめる一本でした。

 

「わたしのSEX白書 絶頂度」

これはなかなかの秀作でした。ロマンポルノなので濃厚なSEXシーンは連続しますが、その合間に男と女、男と男、女と女の愛憎劇が垣間見られ挿入される映像作りが見事。胸焼けがするほどの凝縮された重苦しさはありますが、一時間余りに詰め込まれたメッセージが圧倒的な迫力で伝わってきます。いい映画でした。監督は曽根中生

 

とある駅を遠景で捉えるカット。一人のヤクザものらしい男が歩いてくる。自分の情婦が待つ部屋に行くと女がベッドで寝ている。ヤクザ者は借金の支払いにお前を差し出したからとしゃあしゃあと話し、情婦は男のために身支度をする。

 

採血室で働くあけみは弟?のキヨシと暮らしている。キヨシのところにヤクザ者が封筒をあづける。あけみがその中を見ると、エロ写真である。キヨシがそんな運び屋をやってることを責める。間も無くしてヤクザ者があけみの職場にやってくる。エロ写真を撮るのに売春の仕事を持ちかける。実はあけみは出入りする弁当屋の男と婚約していたがその男とのSEXが物足りなかった。あけみはヤクザ者に連絡して、その仕事をするという。

 

一方キヨシの親友が突然の病で入院、すでに手遅れであることを知る。キヨシはその親友のために看護婦を脅し、親友とSEXさせてやる。間も無くして親友は死んでしまう。あけみは、ヤクザ者に紹介された次の客が変態プレイを好む男で、二人の男のプレイに絡ませられ、逃げ出して帰って来る。親友を亡くし落ち込むキヨシにあけみは抱いて欲しいとせがむが、キヨシはアパートを出ていく。

 

あけみはヤクザ者のベッドでヤクザ者に抱かれる。そこへ情婦が帰ってきて、ヤクザ者にやめて欲しいと懇願するがヤクザ者は写真を撮れという。情婦はどうしても二人の写真が撮れず、自分もベッドに入る。三人で体を求め合って映画は終わっていく。

 

ベッドシーンの連続にも関わらず、男と女の愛憎ドラマがぶれずに描かれていく演出力は見事。隠れた名作と呼べる一本かもしれない映画だった。