くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ビリーバーズ」「黒い下着の女 雷魚」

「ビリーバーズ」

エロスとシュールのバランスが悪いために、エロスが目立った結果、原作が本来持っている空気感が薄れてしまった感じで、終盤に向けてどんどんテンポが悪く間伸びしていく。オープニングからしばらくはちょっと面白いのかと思えるのですが、議長が副議長に性行為を強要し始めてから、その結末までが妙に演出に力が入っていて、その後の終盤へのシュール感の部分が力尽きたように終わっていく。監督は城定秀夫ですが、ピンク映画出身の彼の本質が表に出過ぎた感じでした。

 

私有地である無人島、三人の男女が足を広げてお互いに足の裏を合わせて瞑想している場面から映画は幕を開ける。この三人を延々と回転するカメラで捉え、それぞれが昨夜見た夢を語る。ニコニコ人生センターといういかがわしい団体に所属するこの三人は、センターのリーダー、先生の指導のもと、議長、副議長、オペレーターという呼び名で呼び合っていて、副議長だけが女性だった。

 

深夜に本部から船が来て、議長らが運び込んだ荷物を回収し新たな荷物を置いていくのだが、それと一緒に来る食料が途絶えがちになっていた。三人は前夜の夢を正直に話すことになっていたが、オペレーターは、淫夢を見てしまったと告白、穴に埋もれて浄化させられる。ある時、クルーザーが勝手に来て議長らと争いになり議長はクルーザーできた若者らを銃で撃ち殺してしまう。その死体は、深夜の船が持ち帰る。

 

副議長は次第にオペレーターを男として見るようになり、性欲が頭を持ち上げてきていた。一方のオペレーターも副議長に好意を持ち始めていた。

 

食料が底をつきかけてきたので、副議長とオペレーターが海へ貝などを探しに行くが、以前からそれとなく惹かれていた二人は裸になり体を合わせてしまう。そして、倉庫で抱き合っているのを見つけた議長はオペレーターだけ穴に埋め、自分の見た淫夢を浄化するためと称して副議長に自分のペニスをしゃぶらせる。次第にエスカレートしていく議長の行動に、副議長は本部へ忠信のメールをし、議長のペニスを噛みちぎって、いつもの船がやって来る倉庫に運び込む。

 

副議長とオペレーターが二人きりになり、SEX三昧の日々を送り始めるが、本部からメールが来て、理想の地へ旅立つ日が来たと連絡して来る。そして、何十人かの信者が船でやって来るが、そこに、かつて副議長が好意を持っていた第三本部長もやってきて、ニコニコ人生センターはもう終わりで先生は集団自殺するつもりだと真実を話す。

 

先生が到着し、信者全員に紫の液体が配られる。それは、かつて議長らに届いた腐ったような紫の饅頭に似ていた。毒だと判断したオペレーターらは声を上げるが、信者たちは機関銃で脅し始める。そこへ機動隊が突入して乱戦となる。副議長は大怪我をし、かつてこの島で殺人を犯したオペレーターは逮捕される。

 

刑務所にいるオペレーターに海外でテロ行為をした議長から電話が入る。人質の交換なのだというが、オペレーターは自由になるよりも拘束されていたいと答える。こうして映画は終わる。

 

なんとも言えない映画です。原作がどうなのかよく知りませんが、ピンク映画のように見えるほどエロシーンが濃厚すぎるために肝心のメッセージが全く見えなくなった感じでした。あまり好みの映画ではないです。

 

「黒い下着の女 雷魚

人間の業を凝縮させたような濃厚な愛憎劇で、男と女の性を表現手段にしながらの絵作りに胸苦しさを覚える映画でした。監督は瀬々敬久

 

一人の男和昭が水郷の川で魚を取っている。寄生虫がいるから商品にならない雷魚も混じっているが、雷魚に自分を投影してしまう。勤め先のガソリンスタンドへ行くと店長と女店員がSEXしている。ここに椎間板ヘルニアで入院している女紀子が夫に電話しているが見舞いにも来る気配がない。紀子は病院を抜け出し、かつて愛し合った高校の教師田辺に電話をする。その現場をじっと見つめると敵障害の女がいた。

 

田辺にあっさり振られた紀子はそこの電話ボックスに貼ってあるテレクラに電話をし、裕幸という男とホテルへ行く。裕幸は妻が妊娠していて女日照りだったが、子供服を買っていた。ホテルで抱き合った後、紀子は持っていた包丁で裕幸を殺害する。事情聴取を受けた紀子だが、知的障害の女の証言はあったが、裕幸の車で立ち寄ったガソリンスタンドの男和昭は嘘の証言をしたために紀子は釈放される。

 

帰り道、和昭は紀子に声をかけ、自分の子供がかつて殺されたが、人を殺すのはどんな気分かと尋ねる。二人はホテルに行き抱き合うが、紀子は風呂場で首を吊るような仕草をする。和昭は紀子をそのまま殺し、自分の田舟に乗せて焼いてしまう。和昭は知的障害の女と会い、雑踏の中へ消えていく。こうして映画は終わる。

 

暗い過去をひきづりながら生きる男女の未来のない一瞬を描いた濃厚な作品で、少々、しんどいところもあるけれど見応えのある映画でした。