くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「戦争と女の顔「グレイマン」

「戦争と女の顔」

細かい演出の隅々が恐ろしいほどにクオリティが高いのですが、いかんせんお話が辛すぎていけません。カメラも美しいし、画面の隅々まで行き渡った映像は素晴らしい。いい映画です、でも辛い。監督はカンテミール・バラーゴフ。

 

1945年レニングラードの包囲戦が集結した病院、PTSDの発作で身動き取れず硬直しているイーヤのカットから映画は始まる。しばらくして意識が戻り勤務を始める。彼女にはパーシュカという息子がいて、患者たちの間でも人気である。ある夜、イーヤがパーシュカと戯れあって遊んでいる時に発作が出て、イーヤはパーシュカに覆いかぶさったまま硬直、パーシュカは死んでしまう。

 

まもなくして、戦友でもあったマーシャが復員してくる。実はパーシュカはマーシャの子供だった。脳震盪の後遺症でレニングラードに返されるイーヤに子供を預けたのだ。しかし、パーシュカが亡くなったことを知ったマーシャはイーヤを誘って夜の街に出ていく。そこで、ナンパしようとしていたサーシャら二人の青年と知り合う。サーシャはマーシャに初めての女性として体を合わせる。

 

後日、軍病院に政府要人の女性リューボフィがやってくる。彼女の手伝いに来た青年はサーシャで、サーシャはリューボフィの息子だった。イーヤの勧めでこの病院に勤めていたマーシャはサーシャと再会する。サーシャはマーシャに惚れていて、イーヤとマーシャが暮らしているアパートに頻繁に来るようになっていた。マーシャは戦争の怪我で子宮を無くしていて子供が産めない体だった。マーシャはイーヤがパーシュカを殺してしまったことを責め、代わりに子供を産んでほしいと頼む。そしてその相手に軍病院のニコライ院長を選ぶ。

 

イーヤは傍にマーシャに寝てもらいニコライと体を合わせる。イーヤは密かにマーシャを慕っていた。まもなくしてつわりの兆候が現れるが、実は妊娠ではなかった。サーシャとマーシャがどんどん親密になるにつれ、イーヤは妊娠することでマーシャを繋ぎ止めようとニコライの元に行く。しかし、ニコライは優しく、この街を出るから一緒に行こうと誘う。

 

一方マーシャはサーシャとの関係を続け、サーシャは両親に合わせるべくマーシャを自宅に招く。複雑な思いでマーシャを送り出すイーヤ。しかしサーシャの両親はマーシャを完全に否定してしまう。自分の境遇を目の当たりにしたマーシャは路面電車に乗って帰途に着くが、途中、電車が急停車する。背の高い女性を轢いたのだという。マーシャは、イーヤが以前からのっぽというあだ名がつくほどの背が高かったことで不吉な予感で列車を降りる。

 

慌てて自宅に戻ったマーシャの前に、発作で硬直しているイーヤを見つける。彼女は列車に轢かれていなかった。イーヤはマーシャに三人で一緒に暮らそうと誘う。抱き合うイーヤとマーシャの場面で映画は終わる。

 

画面も綺麗で、ピュアな純愛映画にも見えるのですが、どこかしら辛い展開がなんとも言えないほどに殺伐としてしまう映画でした。

 

「グレイマン

単純に面白い。目まぐるしいほどに次々と見せ場を羅列していく物語にあれよあれよと引き込まれるのですが、それ以上のものではないのと、やはり画面のスケールが小さいのはカメラワークの弱さだろう。緩急を付けるタイミングを無視して、ただただストーリーを前に進めるだけという工夫のなさは、名作か凡作かの差になってしまいました。でも、単純に楽しめます。カメラワークの大胆さや、繰り出すアクションの面白さはそれなりに楽しい。でもいろんなところに適当さがあって、ラスト何故タイマンかと思わせるし、エピローグのエピソードにも今ひとつキレはない。まあエンタメ映画としては退屈しませんでした。監督はアンソニー・ルッソジョー・ルッソ

 

フロリダ、刑務所で囚人コートはCIAの職員フィッツロイから、ここから出す代わりにCIAの暗殺者として仕事をするように提案される。そして18年が経ち、シエラ・シックスのコードネームでグレイマンとなったシックスはバンコクでのミッションに参加していた。相棒は工作員のダニだった。ターゲットを追い詰めたシックスだが、最後の最後、ターゲットはフォーというコードネームの元グレイマンだと明かす。そしてなぜ自分が命を狙われたのかという真相のデータをシックスに託す。フォーはCIA上層部のカーマイケルの手段を選ばないミッションの映像を入手していた。シックスはそれを手に入れるが、CIAは彼からそのデータの奪還のため、サイコなエージェントロイドを送り込む。

 

ロイドはフィッツロイの娘クレアを誘拐し、フィッツロイも拉致してシックスを誘き出そうとするが、なんともお粗末な作戦な上に、結局フィッツロイから情報を得られないままに勝手にシックスの居場所を突き止めてしまうのだから、一体ストーリーの練り込みもクソもない。シックスは信頼のおける元エージェントに接触し、ロイドの追撃を交わしながら、フィッツロイとクレア救出のためにダニと一緒に大バトル切り広げる。というか、よく考えるとどこかチグハグだ。

 

フォーから手に入れたデータを何かに使うという大元のミッションから、フィッツロイとクレア救出がメインになり、データ奪還に必死になるカーマイケルとの展開はただ目先の見せ場を作っているだけ。しかも、ロイドの手下らは警官隊さえも敵に回して大バトル。リアリティもクソもなくシックスとダニを追い詰めていく。じゃあ、フィッツロイ拉致の目的はなんだったのというお粗末な展開へ進む。

 

それでも、逃げるシックスとロイドらの大アクションはとにかく派手で面白いので、中身はめちゃくちゃでも見ていて楽しめる。そして最後の最後、シックスにフィッツロイとクレアをあっさり奪還され、フィッツロイは自爆でシックスとクレアを逃し、シックスはロイドとまるで「シャイニング」の迷路の中でタイマンの末、最後はロイドの監視役で来ていたCIA職員スザンヌにロイドは撃ち殺される。ってどうなんや。なんで迷路なのかという適当さ。スザンヌは今回の失態を全てロイドのせいにして、出世街道へ乗ろうとする。

 

クレアはCIAの監視下に置かれ、シックスは重症で入院。しかし、シックスは病院から脱出してクレアを救出、カーマイケルや上層部はとりあえず難を逃れて映画は終わっていく。

 

もうちょっと整理して、お話しの筋道をきっちり仕上げていけば傑作になったのに、目先の面白さだけを追いかけた映像づくりは舐めているというほかない。確かにアクションは面白いが、中身がチグハグな駄作との入り乱れたエンタメ映画に終始したのは残念というか、所詮配信映像というその場限りの作品だった気がします。