くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「日本一短い「母」への手紙」「ぼっちゃん」

「日本一短い「母」への手紙」

一流の脚本というのはこういうのを言いますね。シンプルでどこにでもありそうな話なのに、本筋の背景に埋め込んだ伏線が最後の最後まで生きてきます。福井県が企画した母への手紙をモチーフにしたオリジナル作品ですが、エンドクレジットで涙が止まりませんでした。親子ってこんなに素晴らしいものですね。いい映画だった。監督は澤井信一郎

 

老人施設でしようか、目の見えない老婦人に一人の女性が手紙を届けてきます。老婦人の息子からの手紙のようで、届けに来たのはその妻でしょうか。女性の名前は水島多恵という。彼女は銀座でホステスをしていた。

 

福井の田舎、前原真紀と弟の宏は父の百箇日の法要を営んでいた。宏は大学生で、東京へ戻っていくが、真紀は希望していた文化財修復の仕事が決まって張り切っていた。

 

宏は、ある日、銀座のクラブを尋ねる。そこに、十八年前に姉弟を捨てて出て行った母多恵がいることを知っていたからである。こうして宏は多恵と再会し、多恵も久しぶりに息子に会って幸せな日々が蘇る。多恵の夫は三年前に亡くなっていた。その夫とよりを戻したために宏たちの父と別れたのである。そんな多恵を許すことができない真紀だった。

 

しかし、多恵はシンガポールの店に移る話が来ていた。東京の店が赤字続きだったこともある。しかも、長年の心労で体調も悪く、宏はそんな母に検査するように勧めていたが、その病院の帰り道、宏は猫を助けようとして交通事故に遭う。駆けつけた真紀は、最初は多恵に言葉をかけられなかったが、仕事先の社長で密かに慕っている坂田の言葉もあり、真紀は多恵に初めて「お母さん」と声をかけ、ようやくわだかまりが解ける。しかし、成長した子どもたちの姿を見た多恵は一度は断ったシンガポール行きを再度決心する。

 

退院した宏の快気祝いのためみんなで集まることになっていたが、多恵は、シンガポールへ旅立つ。これが母の本当の子供たちへの思いだった。冒頭の老婦人にも真相を話す。こうして映画は終わっていきます。

 

若干、描ききれず投げてしまった登場人物もありますが、多恵が病気であるかもしれないという伏線を残して映画を終わらせる手腕は見事です。澤井信一郎作品の中では中レベルの一本かもしれませんがエンドクレジットでは涙が止まりませんでした。

 

「ぼっちゃん」

なんとも鬱陶しい映画だった。展開がとにかくダラダラ引っ張るし、中身がひたすら後ろ向きで前に進む何者もないし、登場人物に共感していけないし、救いも何もない映画、それを意図した作りになっているのもまた嫌悪感を抱いてしまう映画でした。作品としてのクオリティよりもどうしようもなく避けたくなる映画でした。監督は大森立嗣。

 

一人の男梶が、自分のことを卑下しながら秋葉原の交叉店を眺めている。場面が変わり、吉田工業という会社の面接を受けるべく向かう姿。途中、フライボールを受けようとして突然倒れる男を目撃するが素通り。そして面接を受ける。一緒に岡田というイケメンながら粗暴な感じの男と一緒だった。部屋をあてがわれ、寮で隣同士となる。

 

梶は岡田とファミレスで食事をしていて、田中というおどおどした男と知り合う。彼も吉田工業に勤めていて部屋も隣だった。彼は興奮すると気を失う病気を持っていた。岡田が女遊びで出かけた後、梶と田中は急速に接近し、お互いを卑下しながら、所詮ブサイクはブサイクで何も友だちはできないとお互いに傷を舐め合うように行動を共にするようになる。岡田は手に入れた女をおもちゃにして体を蹂躙する変態男だった。

 

ある時、岡田はかつてスピードスケートを一緒にしていた男の妹ユリと出会う。実は岡田というのはユリの兄の名前で、本名は黒岩と言った。黒岩はユリを誘ってドライブに行くが、同じところへ梶と田中も来ていた。ユリは黒岩が異常者だとわかり、車から逃げ出し、梶たちの車にやってくる。ユリが部屋に泊めて欲しいというのでジャンケンで勝った田中の部屋にユリは泊まる。次第に田中とユリは心を惹かれ始める。

 

一方黒岩は田中たちを追っていた。田中は病気が原因で会社を首になり、黒岩から逃げるユリと郊外の部屋で生活する。梶は次第に結局自分は孤独だと再認識し、黒岩に言われるままに田中の居場所を探り、二人は田中とユリのいる部屋に行く。ユリを襲う黒岩をナイフで刺した梶は、田中とユリを後にして、黒岩を乗せて車で秋葉原に向かう。黒岩は、車で突っ込んで、あとはナイフで暴れればいいとアドバイス。人で賑わう交差点を見つめながら、黒岩はサイドブレーキを下ろすが梶は再度引き上げ、叫び続けて映画は終わる。

 

どうしようもなく鬱陶しい作品で、どこまで行っても入り込めない映画だった。