くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「セイント・フランシス」「なまず」

「セイント・フランシス」

あまり好みの物語ではないのですが、素直にいい映画だなあと思える一本でした。レズカップルやその家族、それに接する人々を自然に描ける時代になったんだなと思います。しかも、決して無理矢理肯定させようとしない姿勢も好感。決して出来栄えの良い映画ではないのだけれど、嫌悪感が全くないし、ラストのエピソードの畳み掛けも素敵でした。監督はアレックス・トンプソン。

 

とあるパーティで退屈そうにいる一人の女性ブリジット。彼女は三十四歳なのだがいかにもな男が口説いている。しかし年齢を聞いてあっさりと去った後にジェイスという男性が近づいてきて意気投合したままベッドイン、そして二人は一緒に暮らし始める。夏休みでナニーといういわゆる子守りをする仕事に就くことになったブリジットはとある家にやってくる。そこは女性二人のレズカップルの家庭で、娘のフランシスの面倒を見ることになっていた。アニーとカトリックの熱心な信者のマヤが暮らしていて、マヤはお腹が大きい。

 

なかなか打ち解けられないブリジットとフランシスだが、しばらくして、夏休み中面倒を見てほしいとマヤらに頼まれる。すでにマヤは赤ちゃんを産んでいてやや産後うつになっていた。そんな頃、ブリジットは妊娠してしまうが中絶することにする。中絶後、出血が頻繁になる中、次第にフランシスとも仲良くなっていくブリジット。物語は、赤ん坊の世話にうつ病になっていくマヤの姿、ブリジットの両親との関係やフランシスがギターを習いに行った先でのギターの教師へのブリジットの憧れなどが展開していく。

 

アニーはマヤが浮気しているのではと、何かにつけブリジットに迫るようになるが、ある時、公園でマヤが授乳しようとして、公園にいた別に母親に非難され、敢然と自分の意見を言って、さらにフランシスも毅然と接したことからマヤの心はすっかり晴れ、家で出迎えたアニーとの間の確執も一気に消えて、マヤ達とフランシス、ブリジットらはお互いに信頼の絆と友情に結ばれていく。

 

やがて夏休みが終わり、フランシスを学校へ送って行ったブリジットは、これでしばらく別れることになると寂しい思いを隠せないが、フランシスは、いずれ生理になったらきっと連絡するからとブリジットを抱きしめる。こうして映画は終わっていきます。

 

しつこいほどにブリジットの出血シーンが出てきて若干鼻につかなくもないのですが、終盤にかけてどんどん映画が心地良くなっていくので、いつの間にか画面に食い入ってしまいました。作品の出来の良し悪しはともかく、レズカップルの描き方も、ブリジットの存在の描写もとってもいい感じで、その清々しさが映画に透明感を与えたと思います。いい映画でした。

 

なまず

韓国発不条理劇という作品で、やはりこの手の作品は国柄も何もないので、見ていて無国籍に見えてしまいます。ブラックユーモア的な面白い作品ですが、平凡と言えば平凡、もうちょっとキャラクターの個性を強調したら、背後のミステリアスな設定が生きてきた気がします。監督はイ・オクソプ。

 

とある病院のレントゲン室で、看護婦のユニョンと恋人のソンウォンがSEXをしているのだが、突然、撮影のスイッチが押されたことに気がつく。そして病院内にいかがわしい画像が広まり、ユニョンはてっきり自分達の画像だと疑い、退職を覚悟する。イ副院長はその画像をユニョンと確定して自宅待機を求めるがユニョンはそんなことを無視して出勤してくる。ところが病院の職員全員が体調不良で出勤してこない。で、入院患者は?と思うが一人も画面に登場しない。

 

そんな頃、韓国全土で巨大な穴が突然現れる現象が起こり、その埋め戻し工事の仕事をソンウォンは手にする。しかし、仕事中、事あるごとに眠ってしまうソンウォンは、ある時指輪を無くしたことに気がつく。それはユニョンとのペアリングなので必死に探すが見つからず、同僚を疑い始める。そんなソンウォンをユニョンは疑い始める。ユニョンはソンウォンの元カノのジヨンと話をすることがあり、ソンウォンの過去を色々と聞く。ジヨンは、ソンウォンに殴られたことはないかとユニョンに聞く。

 

次第に疑念が膨らんでくるユニョンは、再開発で転居しなければいけなくなり、その時に、ソンウォンに殺されかけたという疑念まで持つに至って、ソンウォンを追い出してしまう。病院の地下ではその様子を一匹のナマズが見つめていた。患者が置いて行ったそのナマズを持ってソンウォンに会いに行ったユニョンは、過去に女を殴ったことがあるかとソンウォンに問い詰める。ソンウォンは元カノジヨンを殴ったことがあると答えるが、その瞬間、ソンウォンの足元に大きな穴ができてその中にソンウォンは落ちてしまう。それを見つめるユニョンのカットで映画は終わる。

 

イ副院長とユニョンが作る奇妙なコマーシャルや、そこかしこに散りばめられるどこか心地悪い展開が映画全体に不思議な世界を構築していきます。ただ、なまずの意味合いが明確に掴みづらかったのとそれぞれのキャラクターが平坦に見えてしまったのはちょっと勿体無い出来栄えでした。面白い作品なんですが、後一歩でしょうか。