くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スワンソング」「恋する惑星」4K「キングメーカー大統領を作った男」

スワンソング

音楽は抜群にいいのですが、なんともダラダラと間延びのする映画だった。スローモーションがそのまま映画を弾き伸ばしているようなリズム感がたまらなくしんどかった。実話を元にしているということもありストーリーはそこそこいいのですが脚本が悪いのか演出が緩いのか、久しぶりのウッド・キアの怪演が生きていなかった感じでした。監督はトッド・スティーブンス。

 

客のいないステージに颯爽と現れるゲイのパットの姿、それは夢で、目が覚めると施設のベッド、こうして映画は幕を開ける。毎日同じことを繰り返す老人ホームで暮らすパットは、かつてはカリスマ美容師として成功していた。そんな彼のところに弁護士のシャンロックが現れる。かつての親友で上顧客だったリタが亡くなり、遺言で死化粧をパットに頼んできたのだ。しかし、今さら復帰する気もないパットは一旦断るのだが、それから落ち着かない日々が続き、パットは施設を抜け出してリタの元へ向かう。

 

街に着いたものの、今さら知る人もほとんどなく、かつての恋人のデビッドの墓に参り、ステージに立っていたバーに行くがその日が閉店日だと知らされ時の流れを知る。パットの弟子でかつて彼の向かいに独立したディ・デイに会う。リタの家に行くと孫のダスティンが迎えるが、パットはデビッドの葬儀にこなかったリタへの複雑な思いが蘇り家を後にする。

 

いつもトイレにいたかつてのゲイ友達に声をかけ、昔話をするが、実は彼もすでに亡くなっていた。パットは今夜閉店の店に行き、ダンサーの髪の毛をセットしてやり、久しぶりに弾けて、乗りすぎて頭に怪我をして病院に担ぎ込まれる。気がついたパットは区切りがつき、リタの葬儀場へ行き、髪の毛をセットしてやる。そこへダスティンが現れパットの傍に座り礼を言うが、パットは鼻血を出しその場で息を引き取る。パットの足にはリタが履いていたヒールがあり、それを微笑ましく見つめるダスティンの姿で映画は終わります。

 

とにかく、エピソードの挿入のタイミング、尺、何もかもが良くなくて、頻繁に使われるスローモーションがさらに映画のテンポを狂わせていきます。演出センスのない映画というのはこういうものだなという典型的な一本でした。

 

恋する惑星

ついこの間見たばかりでしたが、時間があったので再見。やはり抜群の音楽センスと美しいカメラ、洒落たストーリーに魅了されます。何度見てもいい映画ですね。監督はウォン・カーウァイ

 

雑踏の中、刑事モアが何やら犯人らしい人物を追いかけて一人の金髪の女性とすれ違う。その女性は犯罪を実行するために金を配って人間を集め、おそらく麻薬の密売だろう準備をして空港まで行くが、雇った男たちが姿をくらましてしまう。一方モアはエイプリルフールの日に失恋し、一ヶ月後の自分の誕生日までパイナップルの缶詰を買い続ける。恋人への思いを忘れるためにその夜に出会った女性に恋をしようとして金髪の女性に出会う。金髪の女性は一晩中男ども探した挙句、とうとう見つけて銃で撃ち殺し、金髪の鬘を取ってその場をさる。

 

ハンバーガー店の店先、633号という警官がいつも立ち寄る。店の女性フェイは密かにその警官に恋していてという洒落たストーリーが展開していく。警官が付き合っていたCAと最近疎遠になり、CAはハンバーガー屋に手紙を預けて旅立っていく。フェイはその手紙の封筒に入っている鍵を見つける。たまたま市場で出会った警官が家の場所を教えたことから、警官が留守の日にフェイは警官の部屋に入り、好き放題に至福の時を過ごすようになる。

 

恋人が去って落ち込んでいた警官は、知らない間に部屋の景色が少しづつ変わって行くのは、気持ちが前に進んできたと勘違いするが、フェイと鉢合わせてしまう。しかし、すっかり立ち直っていた警官はフェイをデートに誘い、待ち合わせの店で待つが、フェイは手紙を店の主人に託して姿を消す。手紙は一年後の行き先を書いた手書きの搭乗券になっていた。

 

一年後、ハンバーガー屋を買い取った警官が開店準備しているとフェイがCA姿になってやって来る。フェイは再び手書きの搭乗券を書き、警官の行きたいところへ行こうと書く。そして警官はフェイをフライトに送り出し映画は終わる。

 

音楽と映像が心地よくマッチングする素晴らしい映像センスに頭が下がるし、映画がとってもスタイリッシュで洒落ている。何度見ても楽しめる作品ですね。

 

キングメーカー大統領を作った男」

韓国映画らしい稚拙な演出はところどころに見られるとはいえ、エンタメ映画としてはみるみるレベルが上がってきているのを証明する作品でした。ただ、事実を元にしているためか少し長すぎる気がします。もうちょっと思い切って削ぎ落としたらもっとキレのいいポリティカルサスペンスになったかもしれません。一方で、人間ドラマとして描こうとしたとしたら、もっと掘り下げるべきだったかもしれない。前半の細かいカット編集から次第にシリアスなドラマへのテンポの流れは上手い。なかなかの映画でした。監督はビョン・ソンヒョン

 

一軒の薬局、一人の男が、自宅の鶏の卵が盗まれるのだがどうしたら良いかと相談している。薬局の男は、鶏に赤い紐をつけ、一羽を隣の鳥籠に入れて盗んだと訴えろとアドバイスする。アドバイスした男はチャンデと言う。時に地方議員で当選を目指すウンボムが演説をしている。その訴えを聞いていたチャンデは、ウンボムの主義に共感する旨の手紙を何度も送っていたが受け入れられず、とうとう強引に選挙事務所に押しかけ、自分に手伝わせて欲しいと訴える。その理由に何かを感じたウンボムは、チャンデを選挙事務所に雇う。

 

脱北者でもあるチャンデは、ウンボムの影となって、勝つためには手段を選ばない違法スレスレの方法でチャンデを勝利に導くが、事務所内の反感もあり間も無く謹慎処分となる。しかしさらに上を目指そうとするウンボムは、再度チャンデを招き入れ、国会議員選挙での勝利を目指す。そして、さらに大統領選の候補となるべく画策、チャンデの策略でついに大統領候補に当選する。しかし、敵側の仕業か、ウンボムが海外遊説の際にウンボムの家族の自宅が爆破される事件が起こり、その直前にチャンデが提案した作戦に似ていたこともあり、チャンデは逮捕されてしまう。

 

総裁の力添えでチャンデは釈放されたものの、ウンボムが一対一で詰め寄った時に、チャンデはウンボムがすでに自分を信頼していないと悟り、自分がやったと告白、ウンボムは仕方なくチャンデを切り捨てる。チャンデは金で敵陣営に招かれ、その手腕を発揮したためにウンボムは結局大統領にはなれず、十五年の時が経つ。カフェでチャンデはウンボムと会う。チャンデはウンボムに鶏の卵に話をするがウンボムはそれなら卵を分けてやれば良いと提案する。チャンデは自分と考え方が違うウンボムに政治家としてのあり方を目の当たりにした。まもなくして正当な選挙で大統領が選ばれたというニュースの声で映画は終わる。

 

大河ドラマを見ているような展開で、一本の映画作品としての仕上がりとは少し違う気がしますが、どこか胸に迫ってくる人間ドラマとしては見応えのある一本でした。