くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラ・スクムーン」「冬の猿」

「ラ・スクムーン」

これは良かった。旧作「勝負をつけろ」と雲泥の差の出来栄えで、一人のアウトロー大河ドラマのような展開と、男の悲哀、女の切なさが見事にスクリーンに浮かび上がっています。しかも、音楽も素晴らしいし、映像が洒落ていて粋なのもとっても素敵な映画でした。監督はジョゼ・ジョバンニ

 

教会、この地域を牛耳る男ヴィラノヴァが、ある男に何やら指示をする。指示された男が外にいる男ロベルトを撃とうとしてロベルトに撃たれ死んでしまう。ロベルトの傍にはメキシコ人がオルガンを奏でている。その男にロベルトは近づいてタイトル。メキシコ人が奏でる回しオルガンに被るメインタイトルに引き込まれていきます。

 

ロベルトの友人のグザヴィエが無実の罪に嵌められて収監される。なんとか釈放させようとするがうまくいかず、妹のジョルジアがロベルトに助けを求める。「ラ・スクムーン」というあだ名を持つロベルトをヴィラノヴァは疎ましく思っていて、排除すべく呼び出すが逆にロベルトに撃たれ死んでしまう。ヴィラノヴァの部下を手懐けてこの地を収めることになったロベルトは売上を自分のものにしてグザヴィエの釈放のための資金にしようとする。しかし、結局グザヴィエは二十年の刑が確定する。

 

そんなロベルトにかつてのヴィラノヴァの部下たちは良い気持ちではなかった。そんな頃、ロベルトが仕切る街にアメリカ人の集団が暗躍し始める。ロベルトはジョルジアに任せていた店がアメリカ人に荒らされるにつけ、単身でアメリカ人の集団を迎え撃ち、その時、最後の最後で負傷、逮捕され、正当防衛も認められず収監される。

 

一方、刑務所ではグザヴィエは、看守とトラブルを起こし独房に入って看守長にいじめを受けていた。同じ刑務所に入ったロベルトは、巧みにトラブルを起こし、グザヴィエのいる独房へ移り、看守長を脅し、グザヴィエを助け出す。ロベルトには作戦があり、それを待っていた。それはメキシコ人やジョルジアらによる脱走の手はずだったが、結局それは失敗に終わり、その際それまでロベルトの片腕だったメキシコ人は命を落とす。間も無くして第二次大戦が勃発、フランスの劣勢で、恩赦による出征を期待したが叶わなかった。

 

やがてドイツ軍が撤退、そのあとの地雷処理の任務について刑期を短縮させようとグザヴィエもロベルトも志願するが、そこでグザヴィエは利き腕の左手を失う。

 

やがて戦争が終わり、晴れて刑期を終えたグザヴィエとロベルトは古巣の店で用心棒のような仕事をしていた。しかし、片腕を失ったグザヴィエは心が荒れてしまっていた。グザヴィエとジョルジアのためにロベルトは強引に店を譲り受け、それを高値で転売して郊外に牧場を手に入れて、グザヴィエらに移り住ませようと計画するが、ロベルトが不在の時に、強引に店を取られた男たちがグザヴィエとジョルジアを襲う。そこでグザヴィエは死んでしまい、ジョルジアも重傷を負って入院する。

 

裏の世界に飽き飽きしていたロベルトだが、最後の仕事にとその時にグザヴィエが殺し損ねた二人を追って夜の街に消えて行って映画は終わる。

 

とにかくフィルムノワールである。主人公が実にかっこいいし、時の流れを切々と綴る物語が実に情感溢れていて見ていて画面に引き込まれてしまいます。奏でる音楽の調べも実に素晴らしく、まさに一級品という映画でした。

 

冬の猿

流石に、とってもいいドラマでした。画面も美しいし映画になっているという仕上がり、ストーリーの組み立てもしっかりしていて見ていて安心して見ていられる作品でした。監督はアンリ・ヴェルヌイユ

 

第二次大戦末期、丘の上のバーへ一人の女が登っていく。店ではアルベールと友人のエノーが飲んだくれている。空襲の中、二人は自宅を目指す。アルベールの家はホテルを営んでいて、妻のシュザンヌに、戦争を無事切り抜けられたら酒は止めると宣言する。そして十数年が経った。

 

あれ以来酒を絶って、飴を食べる日々のアルベールは、向かいでバーをしているエノーともそれなりに楽しく暮らしていた。ある夜、フーケという若者がやってくる。この街の寄宿舎にいる娘のマリーを連れ戻しに来たのだが、元来の酒好きで、飲むとヘベレケになって騒ぎを起こす。そんなフーケを見てシュザンヌは、またアルベールが酒浸りになるのではと不安になり始める。

 

アルベールはフーケを見ているうちに次第に若き日の自分を重ね始め、ある夜、とうとう二人でヘベレケに酔って、マリーの寄宿舎に怒鳴り込んだり、花火屋に行って大量の花火を浜辺で打ち上げたりしてしまう。そんなアルベールを、不安げに見つめるシュザンヌ。翌朝、アルベールが父の墓参りに行く時間、フーケとアルベールはホテルに戻ってくる。シュザンヌは、一時のハメ外しだったことを知り、また

シラフになったフーケもマリーを連れ帰ることになり、二人を駅に送り出す。列車に乗るアルベール、フーケ、マリー。乗り換え駅で降りたアルベールを列車からフーケとマリーが見送って映画は終わる。

 

決して大傑作ではないのですが、実にしんみりと心に迫ってくるちゃんとした映画という印象の良い作品でした。