くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「花様年華」4K版「ブエノスアイレス」4K版

花様年華

二年ぶりの再見、クリストファー・ドイルの美しいカメラと抜群の音楽センスで奏でる不倫ドラマは、幻想的であり、詩的であり、寓話の如く夢幻の陶酔感に浸ることができます。ただ、中盤までのテンポ良い流れが、終盤は少し間延びする様に思います。監督はウォン・カーウァイ

 

隣同士に同じ日に引っ越してきたチャンとチャウ。チャンの夫は頻繁に出張を繰り返し、日本企業の社長秘書をしているチャンはいつも一人で食事をとっている。一方、新聞社に勤めるチャウの妻も出張気味で家にいない。ある時、チャンの仕える社長のネクタイに気がついたチャンはチャウの妻と不倫しているのではないかと疑問を抱く。一方のチャウも、妻と同じバッグをチャンが持っていたことで妻の不倫に気がつく。こうしてお互いの伴侶の不倫を知ったチャウとチャンは、次第に頻繁に会う様になり、逢瀬を繰り返し始める。しかし、最後の一線を超えることはなかった。

 

全てを捨ててチャウに飛び込みたい衝動を抑えるチャンと、全てを捨てて誘いたいチャウのお互いの心の葛藤が、美しい映像と、流れる音楽のリズムで描かれていきます。雨、夜の灯り、屋台の階段、狭い廊下に並ぶ部屋、スエン夫人、チャウの友人のピンなどなど、空間と人物描写がさらに物語をスタイリッシュなものに変えていく。

 

まもなくして、チャウは、身をひくためにシンガポールのピンの元へ仕事で行ってしまう。航空券がもう一枚取れれば一緒に行ってほしいというチャウの呼びかけ、もう一枚取れれば連れて行ってほしいというチャンの気持ちが交錯したまま、結局、チャウはシンガポールへ。時が流れ、チャンは久しぶりに香港のかつてのアパートにやってくる。たまたま部屋が空き、スエン夫人はアメリカに旅立つということで部屋を借りて住むことにする。時を同じくして、チャウもまた香港に戻り、かつての部屋にやってくるが別の家族が住んでいた。隣の部屋には婦人と子供がこしてきたという。実はチャンとその息子だったが、それを知らず、チャウはバンコクへ向かう。バンコクで、時の流れを実感しながら映画は終わっていく。

 

終盤の流れが少し乱れるものの、非常にいい感じの作品であることは間違いない。美しい映像詩で描く人生の機微、大人の恋の物語は、何度見ても引き寄せられるものがあります。

 

ブエノスアイレス

十年ぶりに見直しましたが、スタイリッシュな映像と素敵な音楽センス、カラーとモノクロを織り交ぜた美しいクリストファー・ドイルのカメラに酔いしれる映画でした。監督はウォン・カーウァイ

 

モノクロ画面で、恋人同士のウィンとファイが愛し合っている場面から映画は幕を開ける。二人はイグアスの滝を目指して車を走らせるが、道に迷い、結局行きつけなかった。金を使い果たし、そのまま言い争って喧嘩別れしてしまう。ファイはブエノスアイレスで、ホテルのドアマンの仕事を見つけ客の呼び込みをしていたが、そこへ白人の男たちとウィンが車で乗り付ける。まもなくして傷だらけになったウィンがファイのアパートに転がり込んでくる。何かにつけて喧嘩ばかりする二人だが、心はお互いを求めていた。ファイはウィンの怪我が治らず、このまま一緒に暮らせたらと思って、ウィンのパスポートを隠してしまう。

 

ファイは、ドアマンの仕事をやめ、身入りの良い調理場の仕事に着く。そこで、旅の金を貯めるためにバイトをしているチャンと知り合う。やがて怪我が治ったウィンはファイの留守中出歩く様になり始め、ファイは、嫉妬も手伝って何かにつけてウィンに当たり散らす。まもなくしてウィンは出て行ってしまう。強気の言葉を投げながらも、ウィンがいなくなり寂しさを隠せないファイは、チャンに誘われるままに酒を飲み、悪酔いを繰り返す。ウィンも実はファイのことが忘れられない。

 

しばらくしてチャンは金が溜まったからと旅に出ていく。最果ての地を目指すのだという。ファイも香港へ戻る金が溜まり、香港へ帰っていく。父の友人を騙して金を取った償いもあった。ウィンはブエノスアイレスに戻ってきてファイのアパートにやってくるが、既にファイはいなかった。部屋を掃除し、ファイがいつも並べていたタバコを並べ、二人で行くはずだったイグアスに滝の回り灯籠を直して、ファイの毛布を抱きしめて泣きじゃくる。

 

ファイは香港へ戻る前にイグアスの滝へ行く。着いたものの、傍にいないウィンを思って、寂しく感じた。チャンは最果ての地へ行き、かつてファイに、記念に録音してほしいと言ったテープを再生するがそこには泣き声の様なものだけだった。ファイは、香港から台湾に行き、チャンの両親の店に立ち寄る。そこにチャンの写真を見つけ、そっと盗んで、列車に乗る。夜の街、ファイの姿で映画は終わる。

 

スタイリッシュな映像詩という感じの素敵なラブストーリーで、男同士の恋物語だからこそ成り立つ展開が実に上手い一本。久し振りの再見でしたが、見直して良かったです。