くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「華麗なる女銀行家」「太陽が知っている」

「華麗なる女銀行家」

ロミー・シュナイダー特集。フランスの女性銀行家マルト・アノーをモデルに描いた作品。後編に向かうに連れてみるみる面白くなってくる秀作。主人公エンマが世話をしている元恋人(女性)の子供の描写が映画に深みと温かさを与え、前半の実業家として成功して行く下から後半、巨大権力に翻弄されながらも立ち向かう力強い生き様の描写に移る展開が実にうまい。サスペンスフルでさえある良い映画でした。監督はフランシス・ジロー。

 

サイレント映画のようなモノクロコマ落としのハイテンポな映像で、主人公エンマが生きている時代背景を描いていき、カラー映像になって、帽子屋の母の元で働きながら、ある裕福な家に帽子を届けチップをもらう。女性とベッドにいるところを見つけられ、噂になったエンマは母の店をやめる。恋人が裕福な男性と結婚したことから、エンマは、モイーズと結婚し、財力を得て、今や銀行の頭取となったエンマの姿へ繋がって物語は本編へ向かう。

 

大銀行のように裕福な人たちだけを相手にせず、市民の金を集め、持ち前の才覚で株などに投資して、大きな利息を約束して、市民の信頼を得て行くエンマ。一方で、政界、財界にもコネを広げ、権力を固めて行く。そんな彼女は、女性だけしか愛せないと思っていたが、フラン擁護委員会にルクードレと不倫関係になる。そんな彼女を大銀行の大立者バニステールや首相は疎ましく思い始める。

 

まもなくして、政府の画策で無実の詐欺罪をかけられたエンマは、銀行の支払いを無理やり止められ、収監されてしまう。しかし、一貫して支払いは必ずできることを約束するエンマは、絶大な人気を失うことはなかった。収監された刑務所で、断食抗議をし、死の直前で病院に移され、そこを脱出して、着々と反撃に出る。彼女を助けたのは、絶対にルクードレに罪を被せず自分だけを逮捕するように突っぱねたことで信頼したルクードレの妻コレットだった。

 

フラン委員会の力を借りながら、反撃しようと運動するが、新聞はルクードレを攻撃し、とうとうルクードレは自殺してしまう。落ち込むコレットを励ますエンマはフラン委員会とのつながりを緊密にする。パリの病院へ転院させてもらったエンマは左翼のブレオーが首相となった事で仮釈放となり、委員会のメンバーの前で、支払いの約束の演説をする。しかし、バニステールや元首相プレファイユ、政府上層部は、暗殺者を雇う。演説に立つエンマは銃で撃たれ、命を失う。こうして映画は終わる。

 

サスペンスフルなストーリーが実にテンポが良くて、前半から中盤、後半、クライマックスときっちりと区分けされた演出が実にうまい。大傑作とは言わないまでもなかなか良くできた作品だったと思います。

 

「太陽が知っている」

当時アラン・ドロンの婚約者だったロミー・シュナイダーが出演。淡々とした男と女の心理ドラマなので、アラン・ドロンロミー・シュナイダーモーリス・ロネなどスターのカリスマ性でストーリーを牽引して行く感じの映画でした。監督はジャック・ドレー。

 

プールサイド、ジャン=ポールが寝ているところから映画は始まる。突然プールに飛び込んだのは、まだ結婚はしていない恋人マリアンヌだった。二人はラブラブで、ことあるごとに抱き合い、口づけをしている。そこへ、旧友のハリーから電話が入る。ミラノへ行く途中、立ち寄りたいという連絡だった。ハリーはマリアンヌのかつての恋人だった。どこかソワソワするマリアンヌに嫉妬するジャン=ポール。

 

間も無く、ペネロープという娘を連れて高級スポーツカーに乗ってハリーがやってくる。ペネロープは18歳で、自然とジャン=ポールの視線が彼女に向けられる。そんな些細な変化をマリアンヌも勘づいてしまう。ジャン=ポールは、何かにつけマリアンヌに、遠慮せずハリーと一緒に過ごせと促すが、気持ちは正反対である一方、ペネロープに惹かれて行く自分を誤魔化すようでもあった。

 

ある夜、ハリーは街に行って大勢の友達を連れて戻ってくる。夜を徹してのパーティになるが、ジャン=ポールとペネロープは急速に接近する。ハリーとマリアンヌが街へ買い物に行って戻ってくると、ジャン=ポールとペネロープは海に行ったと言って遅くに戻ってくる。そんな娘の様子を見ていたハリーは、深夜街から戻ってきて、出迎えたジャン=ポールに、明日ここを立つと告げる。ジャン=ポールはハリーにさまざまなことで嫉妬していて、それを知っているハリーはジャン=ポールを責め、酔っ払った勢いで殴りかかりプールに落ちてしまう。上がるのに手を貸せというハリーにジャン=ポールは、逆に何度もプールに押し返し、まもなくしてハリーは溺れて死んでしまう。

 

ジャン=ポールは、ハリーの服を脱がせ、新しい服をプールサイドに並べ、さも、泳いでいて溺れたかを装う。ハリーの葬儀が終わるが、しばらくして一人の刑事がやって来る。不審な点があるのだという。刑事の説明を聞いたマリアンヌは、ジャン=ポールが殺したと確信する。マリアンヌは、ジャン=ポールの犯罪を隠すことを決意し、まずペネロープを帰し、刑事の元を訪れる。刑事は、このまま隠したままにするのはきっと後悔するとマリアンヌを帰す。旅立とうとするジャン=ポールだが、マリアンヌは、一人で汽車で帰るという。そんなマリアンヌを優しく抱くジャン=ポール。最初は拒んだものの、その胸に顔を埋めるマリアンヌの姿でエンディング。

 

ジャン=ポールがハリーを殺してしまいたいほどになる動機づけが弱いために、映画全体が平坦に仕上がってしまい、ちょっと退屈気味な映画になった感じです。キャストが当時の人気俳優ゆえに最後まで見ていられますが、それがければしんどかったかもしれません。