くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛してる!」「デュアル」

「愛してる!」

ROMAN PORNO NOW企画第二弾。日活ロマンポルノ全盛期の、しっかりとしたテーマをブレずにエロスで描くというスタンスがはっきり見える秀作。SMテーマを、人間の素顔を覆い隠す現代の矛盾というテーマに重ねて展開させるストーリーは、なかなかのバイタリティのある仕上がりでした。難を言えば主演の川瀬知佐子が少し弱いために、映画全体が平坦になった点でしょうか。それでも、SM表現に躊躇せずに絵作りをしていった力強さは認めるべき映画だと思います。監督は白石晃士

 

地下アイドルのステージで人気のユメカのステージが終わり、女子プロレスラー出身のミサ⭐︎ザ・キラーのステージに変わるが今ひとつパットしない。握手会でもユメカの人気が高く、ユメカに絡む男性ファンをセクハラと勘違いしたミサはラリアットかましてしまいそのステージを解雇される。その帰り、Hという名刺を持った一人のオカマにスカウトされる。映画は、ミサをドキュメンタリーに収めようとしている佐藤カメラマンの視点で展開していく。

 

ミサがそのHという店に行ってみると、なんとSMクラブだった。最初は拒否したものの、その店のNo. 1女王のカノンにからめられ、ミサは快感を覚えてしまう。そんなミサの本性を見抜いたオカマのママはミサを正式に採用しようとする。そこへ、この店のオーナー高嶋政宏がやって来る。そんなこんなにどんどん引き込まれるミサはHのクラブに正式に女王として採用されるべく、カノンの奴隷となって奴隷修行を始める。一方で、ミサはアイドルの夢も捨てきれず、芸能事務所のオーディションを受け地下アイドルとして再デビューすることになる。

 

ミサはどんどんカノンの奴隷として成長していくが、次第にカノンその人に惚れ込み始める。一方、アイドルデビューも成功、ミサの人気がどんどん上がる。さらにHでも正式に採用され女王様として仕事が始まる。人気が急上昇してきたミサに嫉妬するユメカはミサの秘密を知り、カノンを自分に向かせようと画策し、カノンはHの店から姿を消してしまう。

 

アイドルとしてどんどん人気が出るミサが、この日も自宅からネット配信しているとカノンが突然やって来る。そしてミサを全裸にし、そこへユメカを招き入れる。ユメカもカノンの奴隷となっていた。しかし、カノンの本当の思いはミサにあった。ミサがネット配信のスイッチを切り忘れていたため、三人が絡む様子は、ネットに拡散してしまう。そんな頃、高嶋政宏は、全裸で歩行者天国を歩き捕まってしまう。記者会見で、いつのまにか自分を隠している現代人に警鐘を与えるかのような発言をする。

 

アイドルの事務所では、今からミサのステージが幕を開けようとしていた。これまでのアイドルのステージではなく、先日のネット配信の反響を絡めての新しいミサ⭐︎ザ・キラーとしてのステージだった。ステージに立ち、全てを曝け出して歌いまくるミサの前にカノンが現れる。そしてミサともどもステージで乱舞する。その様子を憧れるように見つめるユメカの姿があった。「愛してる!」はミサとカノンのSMプレイの時にプレイ中止の合図ワードだったが、最後にミサは心の底からカノンに「愛してる!」と叫ぶ。

 

後日、ミサの部屋にカノンもいた。二人は本当の恋人同士の如くキスをし抱き合い始めて映画は終わっていく。全て佐藤カメラマンのドキュメンタリーの一部となっている。

 

フェイクドキュメンタリーという手法ながら、人間の本性をストレートに暴き出すテーマが実によくできている。ともするとSMシーンに目を奪われがちだが、そこを真摯な映像で貫くので、それほどエロさが前面に出ないのもいい。小品ながらちょっとした佳作だった気がします。

 

「デュアル」

笑ってしまうほど呆れた物語と展開。ツッコミどころ満載というより、一体なんの意図があってのエピソードなのかというほどのドライ感と何を描きたいのかという薄っぺらさの割に、意味深なラストシーンへの流れは、本当になんなのだという映画だった。出てくる脇役も笑えるほどに適当感満載。もう破綻した映画だった。監督はライリー・ステアンズ。

 

なにやら決闘シーンであるかのような場面、二人の男がテーブルの上の武器を取って戦いを始める。なんともチープなセットにまず笑ってしまう。ボウガンを持った相手が撃っている中、テーブルを背に、手にしたナイフで一気に敵に飛び込んで倒してしまう。どうやらオリジナリとそのクローンであるダブルとの決闘。そしてタイトルからカットが変わる。

 

主人公サラが恋人のピーターとビデオチャットをしている。なかなかリアルに会えない様子。ベッドで寝入ったサラは、仲の悪い母との奇妙な夢を見て、目を覚ますとベッドの上は血だらけ。実はサラは難病で余命幾許もない。医師に98%の確率で死ぬとあっさり言われ、リプレイスメントという方法でクローンを作りクローンに意識を引き継ぐかどうか尋ねられる。いかにも軽いアドバイスに呆れてしまう。

 

それほど悩むこともなくリプレイスメントに引き継ぐことを決意、その施設に行ってみると、唾液を摂るだけですぐにできるとあっさり言われ、間も無くサラと瓜二つのクローンが誕生し、恋人のピーターにダブルとして紹介され、サラの目の前で引き継がれる。ただ、ダブルはオリジナリと違って目の色が違うためカラコンが必要だった。

 

そして十ヶ月が経つ。死が迫っているはずのサラに、医師は病気は完治したと告げる。もう呆れる展開。しかも、ピーターはダブルをサラの母に紹介済みで、サラ本人が行っても、母もダブルを受け入れてしまっている。もう大笑いである。ピーターもダブルを受け入れるというし、サラは追い出され、クローンと共存はできないので決闘することになる。決闘は一年後と決まる。

 

サラは、決闘に勝つためにトレントというトレーナーに格闘術を学び始める。もう呆れた感がどんどん高まっていく。しかもいかにも適当なトレーニングシーンは続き、トレントは決闘に勝つためにサラにスプラッタームービーを見せたりする。

 

ところが決闘日が迫った日、突然一ヶ月延期が決まる。サラはダブルと会い、決闘後生き残った人たちの会に出てみたり、トレントに訓練延長のためにダンスを教えたり、なんともおちゃらけな展開が続く。そして、サラとダブルは決闘をやめて逃亡することにして、二人は森に入っていく。ダブルが用意した水を二人で飲んで森へ。

 

カットが変わると決闘場、足を引きずってサラがやってくる。自分がオリジナリだというが車の事故で遅れたのだと言い訳する。その言い訳が、サラとダブルが車の中でした会話で、ダブルは車の運転ができないという伏線で、これがクローンの方だとわかる。しかも、サラとトレントの訓練場面で、毒薬は効き目が遅いので武器にすることはないという伏線もあり、クローンがサラのオリジナリを騙して水に毒を入れ殺したらしいとわかる。裁判も終わり、クローンは晴れてオリジナルと認められたようで、母からの電話で、カラコンを買ったという知らせが入る。こうして映画は終わる。

 

呆れた感満載のB級SFである。実はオリジナルが勝ったのではという疑念もないわけではないが、ラストの意味深が一体この映画でなにを描きたいのかというのが全く伝わってこない薄っぺらさはさすがに笑ってしまう。そんな一本でした。