くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コンパートメントNo.6」「夜光る顔」

「コンパートメントNo.6」

静かに展開する物語ですが、とっても丁寧に書き込まれた脚本が映画全体をハイレベルな仕上がりにしている。大きな感動とかそういうものはないのだけれど、ここまでシンプルな話を人間ドラマとして描き切った手腕は評価できる映画でした。監督はユホ・クオスマネン。

 

テンポのいい曲をバックにタイトルが終わると、主人公ラウラが、レズビアンの恋人イリーナのホームパーティに来ている。来客は皆知識人のような風体で、イリーナはいきなりラウラにキスをしたりする。ラウラは10000年前に書かれた岩絵ペトログリムを見るためにムルマンスクへ行く予定だったが、一緒に行くイリーナは仕事が忙しくてキャンセル、一人旅立つことになっていた。一夜をベッドで過ごした後ラウラはシベリア特急に乗り込むが同じコンパートメントに同席した男性リョーハは、粗野で酒を飲みながら絡んでくる男で辟易としてしまう。

 

席を変えてもらおうとしてもダメで、ラウラはサンクペテルスブルクで降りるつもりで荷物を持って出て、イリーナに電話を入れるが忙しそうで早々に切られてしまう。ラウラは覚悟を決めて列車に戻るが、別の客がラウラの席に座っている。リョーハともどもしばらく一緒に旅をすることになる。しかし、ラウラはリョーハと会話を交わすうちにいつのまにか気持ちが通い始めているのに気がつく。そんな時一人の若者が乗ってくる。言葉が通じないその若者を助けてラウラは自分のコンパートメントに入れてやるが、どこかリョーハの態度がよそよそしい。しかも。先に降りたその若者はラウラのビデオカメラを盗んでしまい、様々な思い出の記録したカメラをなくしてラウラは落胆する。

 

次の駅で列車が一晩停車するということで、リョーハは、老婦人の知り合いの家に行こうとラウラを誘うがラウラは拒否し、再度イリーナに電話を入れるがつながらない。通りかかったリョーハの車で老婦人のところにいくことになる。そして老婦人ともども三人で酒を飲み、次第にラウラはリョーハに惹かれ始めていた。リョーハはラウラと同じ駅が目的地でそこで鉱山の仕事をするのだと言っていた。ムルマンスクの駅が近づいた頃、二人は最後に食堂車で食事をし、ラウラはリョーハをスケッチした絵をプレゼントし、自分も描いて欲しいというがリョーハは断る。電話番号を聞くがリョーハはうやむやにして、そのまま喧嘩別れのようになる。

 

コンパートメントに戻り、ラウラとリョーハはキスを交わすが、ラウラはリョーハにイリーナという恋人がいると告白する。朝ラウラが目覚めるとリョーハは先に列車を降りて、すでにいなかった。ラウラはホテルに行きペトログリムへのツアーを探すが、冬は通行止めだと断られる。他のツアーに参加するも納得できず、採掘場へ行ってリョーハへの託けをする。その夜リョーハがホテルにやってきて、段取りがついたからとペトログリムへ向かう。リョーハが交渉して船を出してもらい極寒の地へ辿り着く。目的を果たしたラウラとリョーハは帰路につく。ラウラが車の中で気がつくとリョーハはいなかった。車の運転手からリョーハからのメモを受け取る。そこにはリョーハが書いたラウラの絵と、ラウラが最初に教えたフィンランド語の「くたばれ」の意味の言葉があった。しかしそれはリョーハが教えて欲しいと言った「愛してる」というのをラウラが教えた嘘のフィンランド語だった。こうして映画は終わる。

 

労働者階級としてのリョーハの存在と知識階級としてのライラの存在、さらにレズであるという設定や、乗り込んできた若者の存在など、そこかしこに散りばめられた世相の設定が実に見事で、思い返せば返すほど奥の深い作品になっていることに気付かされます。カンヌ映画祭グランプリも納得できる一本でした。

 

「夜光る顔」

普通のサスペンス映画で、当時の娯楽映画の一本という感じの作品でした。音声が悪くてセリフが聞き取りにくかった。監督は久松静児

 

霧深い夜、一人の男野辺地が歩いていると、向かう先に男女の声がする。女性は誰かと別れて門の中へ。カットが変わると野辺地とこの家の主人で兵器産業の社長倉石が脱税の相談をしている。突然明かりが消え、目の前に仮面の男が現れる。そして。金庫の宝石を国家に帰すべしと宣言し消えてしまう。不良機関銃などを作り巨万の富を得た倉石への警告だった。早速山崎警部がやってきて警備にあたるが、約束の時間になっても宝石はそのままであるままにすぎてしまう。ところが宝石はあらかじめすり替えられていた。

 

倉石家には母方の姓稲田を名乗りレビューの演出をしている徳穂と後妻昌枝の娘美也子がいた。事件当日美也子を訪ねていた徳穂に嫌疑がかかる。しかしアリバイは成立、そんな頃、盗まれた宝石は山崎警部の元に届けられる。そのことから山崎警部は徳穂はもう一人いるのではと考える。一方野辺地は脱税の分前を得ようと画策し徳穂を利用しようとしていた。ある時、野辺地は高橋という謎の男と対談中、突然高橋は野辺地の陰謀を罵る。そして逃げようとする野辺地の前に徳穂の顔に変わった高橋がいた。

 

その頃、山崎警部は徳穂に双生児の弟一穂のあることを突き止める。それを倉石に問い詰めていると、徳穂がやってくる。そこへ野辺地が真犯人を見たと飛び込んでくる。そこへもう一人の徳穂が現れ、先にいた徳穂が顔に覆っているものを剥がすとアザがあった。それこそが徳穂だった。彼は倉石の会社の不良兵器で戦友が死んでいくのをみかねて計画したのだ。しかし、彼はそれを告白するとその場に倒れる。銃で撃たれていたのだ。こうして事件は一件落着。山崎警部の元に徳穂の命を取り留めたと連絡が入り映画は終わる。

 

とにかく、せりふが聞きづらくて物語が追いきれなかった。普通のサスペンス映画という感じの作品でした。