くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アントマン&ワスプ クアントマニア」「ノベンバー」

アントマン&ワスプ クアントマニア」

ありきたりのセリフと個性的なセンスも何もない美術、時間稼ぎするような展開の数々、ダラダラした脚本、といういかにも安直に作ったエンタメ映画ですが、ストーリーがあまりにシンプルなので、時間を感じさせられれず最後まで見ることができる。それだけの映画でした。そろそろハリウッドも考え方刷新しないとじり貧やね。監督はペイトン・リード。

 

ジャネットが量子世界で何やら戦っていて、間一髪、一人の黒人に助けられてタイトル。平穏な毎日を送るスコットが街を闊歩する姿から映画は始まる。そこへ、娘のキャシーが留置されたという連絡で引き取りに行く。家に帰れば、愛する妻ホープ、父のハンク博士、その妻ジャネットがいる。キャシーが祖父の研究をヒントに量子世界を作ったというのでみんなが見守るが、量子世界に通信を送っているというのを聞いてジャネットが警告を発する。直後、キャシーが作った機械が輝き、スコットたちは量子世界に引き込まれる。なんで?

 

スコットとキャシー、ハンク博士とホープ、ジャネットの二組で逸れてしまい、お互いを捜索することになる。量子世界には先住民がいて、ジャネットたちは先住民に捕まる。一方、スコットたちは黒人のカーンという男に捕まる。実はジャネットが量子世界にいた頃心が通じ合ってカーンと親しくなり、エネルギー装置を修理したのだが、実はカーンは量子世界に追放されていた破壊神だった。様々な時間や空間を破壊し、横暴の限りを尽くして来たのだ。それを知ったジャネットはカーンの脱出を阻止するが、カーンは量子世界に先住民を支配して独自の世界を構築してジャネットが戻ってくるのを待っていた。

 

物語はカーンの独裁を止めるべく先住民達と立ち上がり、スコット=アントマンやキャシー、ホープらが元の世界に戻るべく画策する一方でカーンの企みを阻止する戦いとなる。そして、これまでかと思われたところへ、蟻の大軍を連れたハンク博士が現れカーンを倒す。そしてスコットたちは自宅へ戻ろうとするが最後の最後に負傷したカーンとスコットは最後に殴り合い=(笑)。そして、応援に戻ったホープと共にカーンを倒してめでたく自宅へ戻る。こうして映画は終わるが、エピローグで、様々な次元のカーンを呼び集めたカーンが復讐を叫んでエンディング。

 

なんのことはない、マンネリの極みのアベンジャーズ映画だった。

 

「ノベンバー」

エストニア作品らしく、寒々とした映像の、まさに北欧ダークファンタジー。全体が御伽話のごとく展開し、魔術やアニミズムの思想が交錯する物語は独特の世界です。モノクロ映像なのと、ハイキーな露出を多用した絵作りが美しいのですが、いかんせん構図が平凡なのが実に勿体無い。エロティックな映像や、ややグロテスクな描写もちらほらする空気感で描かれるエピソードがもう少しうまく溶け合って行けばもっとシュールな秀作になったろうに今一歩物足りなかった。監督はライナー・サルネ。

 

雪深いエストニア、森の中を狼が走っている。タイトルが被った後、何やら枝に動物の骸骨と鎌がついた物が器用にころころと歩いて一頭の牛のところに行き、牛を鎖で絡めて空へ舞い上がる。そして一軒の小屋にたどり着いて、出て来た男に引き渡す。そしてその枝はもっと仕事をくれと言う。出て来た男は、パンで梯子を作れと命令、枝の化け物はパンと梯子を見比べた末、混乱して爆発、メインタイトルとなる。この化け物はクラットという使い魔で、悪魔に魂を渡す約束をしてクラットの魂を貰うのだった。

 

この村に住む少女リーナは村の若者ハンスが好きだった。死者の日、森に行ったリーナはハンスの姿を探す。やがて霧の中から白い装束を着た死者が現れる。死者は各家に迎えられ、作られたサウナに入るのだが、サウナの中では死者は巨大な鶏になるらしい。なんともシュールである。

 

ある時、教会に行った村人たちの中で、男爵の娘をハンスは認めて一目惚れしてしまう。男爵の家の使用人に頼んで、寝静まった娘の部屋に入れてもらうのだが、娘は突然起き上がり、夢遊病のように屋敷の屋根の上に歩いて登る。落ちる寸前男爵に抱き止められる。以来ハンスは男爵の娘をどうにか手に入れたいと考える。

 

一方リーナはハンスの心を得るために魔女に相談する。魔女は、矢で男爵の娘を殺すしかないというが、結局殺せず、屋根から落ちかけた娘を助けることになる。男爵の屋敷に使える女中は男爵夫人の衣装を盗んでリーナに売るつけようとするが、リーナの家に伝わるお宝のうち、リーナは指輪だけしか持ち出せず、スカートの裾を手に入れただけだった。

 

ハンスは、悪魔に魂を渡す代わりにクラットの魂を手に入れ、雪だるまを作ってその人形にクラットの魂を吹き込む。雪だるまは、これまで魂として経験して来た様々をハンスに話す。そこにはゴンドラに乗った恋人の話があり、そにゴンドラの男が恋人の女性に指輪を与える話をする。女性を得られるなら指輪などいらないとその男が言って、女性は指輪を川に捨て、男に抱かれる。雪だるまのクラットが話す物語は詩的なものだった。

 

村に疫病がやってくるという噂が広まり、村人たちはズボンを頭にかぶって難を逃れようとする。なんとも言えないエピソードである。リーナは、かつて男爵夫人の服を手に入れる際、女中に、全部欲しければ銀のブローチを持ってこいと言われたことを思い出し、床下に隠してあるお宝からブローチを盗む。父に見つかり取っ組み合いの末に持ち出し、ドレスを手に入れて、ベールをかぶって男爵の娘のふりをしてハンスと森で会う。雪だるまのクラットは次第に溶けて間も無く消えてしまう。

 

森でハンスに出会ったリーナはベールを取らずにハンスにキスをする。正体を明かせずハンスの元を去るリーナだが、ハンスは雪解けの川で、クラットが話していた指輪を見つけ、それを娘に与えるべく馬車を走らせる。しかし、クラットが溶けてしまったことを聞いた悪魔はハンスの首を捻り切って殺し、魂を取る。リーナの横を、ハンスの死体と共に馬車が走り去り、リーナは必死で後を追うが追いつけない。そんな頃、男爵の娘は屋根の上から飛び降りて死んでしまう。

 

絶望の末、リーナは川に身を沈めて死のうとするが、魔女たちは川に溢れるお宝を見つける。そして、リーナの体も救い出し、金貨のネックレスだけ与えてその場を去る。ハンスと男爵の娘の葬儀が厳かに行われて映画は終わる。

 

なんとも言えない作品で、それぞれのエピソードが全く融合されてこないので、なんのために語られているのかわからない部分も散見される。男爵の屋敷の女中に恋焦がれて媚薬を作る男の話や、リーナと結婚しようと強引にくる爺いの話など、一体なんで必要なのかと疑問を感じる。冒頭の死者が戻ってくるエピソードも結局終盤になんの意味もないし、どう感想していいかわからない作品でした。