くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ひとりぼっちじゃない」「オットーという男」

「ひとりぼっちじゃない」

ダラダラと間延びした脚本と演出、意図的だろうがぼそぼそと台詞を喋らせる展開で、二時間が退屈の極み。しかも同じシーンを繰り返すシュールさに面白さもなく、暗転を繰り返す編集もしんどい。蓉子が登場するまでの流れとその後の構成のバランスが悪い。終盤いきなりホームドラマの如くなってその後一気に無理やり終わらせる。面白い映画なのですが、こういうスタイルなら二時間越えにしてはいけない気がします。監督は伊藤ちひろ

 

歯科の器具を見ている歯科医ススメの場面から、医院での治療風景に場面が飛んで映画は始まる。彼の住むマンションの階下に宮子というアロマ店を営む女性がいて、彼女は部屋に鍵もかけないので、何かにつけて宮子の家を訪ねるススメ。人とコミュニケーションを取るのが苦手なススメは、何も言わず、観葉植物の中、ただ隣で横になってくれる宮子に惹かれていく。映画は二人の行き来を繰り返し繰り返し描くが、ある時、宮子は友人の蓉子を伴ってススメと会う。実は蓉子は近くのスーパーでバイトしているのだが、ススメは初めてのような印象を受ける。

 

ある時、ススメは道で倒れ、そばを車が通り、足を轢かれて骨折する。どこからか車椅子を持ってくる宮子にどこか不自然な印象を持つ。まもなくして足も直り、勢いで宮子を抱きに行くススメ。夜、車椅子を押す宮子を見かけたり、何者かに追いかけられたりする。突然ホラーテイストの映像になり戸惑う展開です。

 

ススメはいつも行く中華料理店でたまたま蓉子と出会い、宮子は実は不思議な存在なのだと聞かされる。クローゼットの引き出しに過去に交際した男の髪の毛を巻いてあったり、部屋で男性が亡くなったり、彼女の周りの人が事故などに遭ったりするのだという。宮子の部屋に髭面の男性が訪ねてくる描写がある。先に部屋に入ったススメはベランダの物置の中からのぞいている。あとで蓉子に聞いたが、どうやら宮子の兄であるようだが不明。ススメは蓉子を抱き、好きだというが、宮子への気持ちはどうなのか全く掴めない。

 

ススメを心配する母がいるが、母は同年代の女性と暮らしているようである。ススメは母の家を訪ね、長崎に行くと告げる。部屋を片付け、宮子の頭を彫っていたものを完成させ、宮子の部屋に置いて、長崎へ立つ。宮子が部屋に入ると、丸い木彫りのものが置かれていて、それをベランダの物置にしまう。部屋に兎が残り、映画は終わる。

 

どうも理解しづらいというか、伝えたいことが映像にできていないのではないかと思える作品で、原作もあるし、原作者自らが脚本を書き演出もしているのだが、思い切ってきるべきところを切れなかった感じの仕上がりになっています。水の音の演出も意味をー掴みづらい。面白い話になりそうですが、残念な一本でした。

 

「オットーという男」

いい映画でした。静かなフィックスのカメラアングルで物語を語っていく。オリジナル版にアメリカ的な色合いをつけて、これはこれで深いメッセージを付け加えたのはとっても良かったけれど、一方で、オリジナル版の構成が少し乱れたせいか映画としては若干出来が落ちた感じです。でも、謎が少しづつ明らかになる中盤から後半は涙が止まりませんでした。監督はマーク・フォースター

 

ホームセンターで、主人公オットーがロープを買っている場面から映画は幕を開ける。店員に文句を言いながら、とりあえずロープを手に自宅に帰る。居間を片付け、電話や電気を止め、正装して、天井にロープをかけて首を吊る準備をする。妻を亡くしたオットーは彼女の後を追うためにこの日自殺を決意していた。ところが、いざという時にドアの外で車の駐車に四苦八苦している若夫婦を認め、我慢できず家を飛び出す。

 

向かいにきたのは、お腹の大きいマリソルとその夫トミーだった。オットーは縦列駐車してやり一段落するが、いざ首を吊ろうとすると天井のホックが崩れて落ちてしまう。オットーの近所には若い頃から親しいルーベンという黒人が住んでいたが、認知症が進み妻が介抱していた。しかも、日本にいる息子が勝手に家を売って施設に入れようとしていた。

 

オットーは、ガレージで車の排気管を引いて自殺しようとするがまたもマリソルの邪魔が入る。マリソルに車の運転を教えてやり、今度は列車に飛び込もうとするが、近くの老人が線路に転落したため、老人を助け出してやり、ネットで話題になってしまう。オットーの側には猫がうろつくようになり、最初は近所の男が育てるはずだったがアレルギーだということでオットーが飼うことになった。妻ソーニャの墓の前で、もうしばらくそっちに行けないと報告するオットー。次第にオットーの過去が挿入され、妻ソーニャとの馴れ初めなどが語られていく。

 

オットーは銃で自殺しようと準備をするが、そこへ、かつてのソーニャの教え子でトランスジェンダーのマイケルが泊めて欲しいとやってくる。そんな頃、ルーベン夫婦が不動産業者から強制的に立ち退きさせられそうになっているのを聞いたオットーは、回避するためマリソルの家に行き電話を借りようとする。しかし、ソーニャの服などを片付けようと提案したマリソルを邪険にしたオットーにマリソルは冷たい態度をとる。オットーはルーベンのことやソーニャのことを語り始める。

 

ソーニャが妊娠して六ヶ月の頃、オットーは初めて二人でバカンスに行く。ところがバスが事故を起こし、ソーニャは赤ん坊を無くしてしまう。そして三ヶ月前、ソーニャは癌で亡くなった。オットーは後を追って死のうと考えていると告白する。やがて、SNSレポーターなども呼んだオットーはルーベン夫妻を守るが、直後オットーは倒れてしまう。生まれつき心臓肥大症だった。マリソルが付き添っていたが陣痛が始まりマリソルは男の子を出産する。

 

三年が経つ。マリソルは息子の誕生パーティーをしていたが、トミーが、いつも雪かきをしているオットーが見えないとマリソルに知らせる。慌ててマリソルはオットーの家に行くが、オットーはベッドで息絶えていた。側にマリソル宛の手紙があり、オットーのものはマリソルに与えると書かれていた。こうして映画は終わる。

 

難民問題やトランスジェンダー、マリソルが大学卒だったりという人種問題も盛り込んで、ちょっと詰め込み過ぎた感じがする作品としてリメイクされていますが、根本的なストーリーはしっかりしているので素直に泣いてしまいました。でもオリジナル版の方が映画としてよくできていたと思います。