「コンペティション」
モダンな建物と徹底したスタイリッシュな構図で描きながらの会話劇は、まるで人を食ったように毒々しくも本能のぶつかり合いになっている。まるで演技のワークショップかと思えるようなストーリー展開、天才監督ローラが何が天才なのか迫ってこない存在感、ベテラン俳優が何がベテランかの迫力にかける中途半端さ、実力もある人気俳優の悪ふざけのオーラの塊、そして、影に隠れているが、一番曲者の大富豪、そんなどことなくリアリティのないある意味シュールな映画に辟易としながらも、アハハと笑ってしまう、そんな映画だった。監督はガストン・ドゥプラット。
一代で製薬会社を立ち上げ大富豪になったウンベルトの80歳の誕生日、どこか虚しさを感じる彼は、何か残すべきだと秘書と相談する場面から映画は始まる。自分の名を刻んだ橋を作るか、いや映画を作ろうという事になり、当代の天才監督ローラを雇い、ベテランの盟友イバンと人気絶頂の実力派フェリックスを起用してリハーサルが始まる。原作は「ライバル」という本でウンベルトが是非にと提案したが読んだことはないという。ここから笑わせる。
やがて、ローラの指示でリハーサルが行われ、時にイバンとフェリックスは対立しながらも、順調に進む。ところが、中盤で、フェリックスは膵臓癌であることを告白、イバンは、万一の時は一人二役で演じるとローラに提案するが、実はフェリックスの話は嘘だった。その迫真の告白にイバンは絶賛するがそれもまた社交辞令の仕返しだった。フェリックスは、日頃から合気道を練習している場面が挿入される。
そして、紆余曲折の中、リハーサルは終わり、二日後のクランクインを待つばかりとなって、この日ウンベルトら揃ってのパーティが行われていた。席を離れたでフェリックスは屋上でイバンがフェリックスの悪口を言っているのを耳にする。フェリックスは屋上へ駆け上がり、イバンに突っかかるが、イバンがやり返してきたので、つい合気道で交わしてしまいイバンは地上に転落してしまう。
フェリックスは困惑するが分かるはずはないと割り切って騒ぎの渦中に入るが、ローラはなんとなくわかっていた。やがて映画は完成、この日、記者会見で一人二役したフェリックス、ローラ、ウンベルトらが記者の質問に答えていた。カットが変わるとウンベルトは、新しい橋の除幕式にいた。植物状態だったイバンが目覚め、フェリックスの名をつぶやいて、ローラの顔のどアップ、終わる映画もあれば終わらない映画もあるというセリフで映画は終わる。
ウンベルトの娘と濃厚なキスをするローラのエピソードや、ミーハーにフェリックスに近づくイバンの妻、スクラップブックのようなローラの絵コンテ帳、数々の賞のトロフィーをイバンとフェリックスの目の前で粉砕する場面など、毒とユーモアで笑い飛ばして行く流れは面白い。しかも、スタイリッシュな画面造りを徹底した演出も引き込まれる。にも関わらず、何かが物足りないので、映画に魅了されない。これでいいのか、欠点があるのか、不思議満載の一本でした。
「恋する女たち」
いい映画ですね。登場人物がみんなキラキラしているし、楽しくて仕方ない。アイドル映画だとたかを括って当時見に行って圧倒されて感動してしまった思い出が蘇りました。斉藤由貴の「MAY」が流れてきたら、たまらないノスタルジーに浸りました。こんな映画作れる人はそういませんね。本当に素敵な青春映画でした。監督は大森一樹。
主人公多佳子があぐらを描いて壁に向かっている。傍に友達の緑子からの葬式の案内が来ている。高校時代からの親友多佳子、緑子、汀子は、何かあるたびに葬式をしてみんなを呼び寄せる緑子といつもの会話に盛り上がっている。最近の彼氏のこと、最近自分が見られている気がする多佳子のこと、姉比呂子は、間も無く白山の実家の旅館に帰る事になっている。多佳子と比呂子は、旅館組合の2階で住んでいるが、比呂子を慕う家庭教師の教え子神崎に多佳子はどこか気になるものがある。
とはいえ多佳子は中学からの同級生沓掛勝に好意を持っていたが、野球部でもある沓掛には彼女がいた。汀子は年上の小林という恋人がいる。小林は作詞家で人気があったが短歌が好きで、今は作詞をしていない。そんな小林にも多佳子は興味がある。それぞれの恋があり、失恋があり、青春がある姿を交錯させ、絡ませながら、あまりに甘酸っぱい学生生活が描かれて行く。
多佳子は沓掛に失恋し、比呂子を慕っていた神崎と多佳子はいつの間にか惹かれあっていた。多佳子は沓掛が彼女と喧嘩しているのを偶然見かけて、自分が失恋したように落ち込んでしまう。そして神崎の部屋に上がり込むが、深夜神崎の父と比呂子が車で戻ってくるのを目撃してしまう。比呂子は比呂子でちゃんと恋愛していた。緑子を取り合って暴走族の男同士がバイクで決闘をしたりし、それを見終えた緑子にも何か感じるものができたと多佳子に言う。
この日、海岸で多佳子、緑子、汀子が野立てをしていた。毎年の恒例行事で、お互いの今をさりげなく語り合う。多佳子は兼ねてから絹子に頼まれていた裸体像を描かせてやり、それが美術展の掲示され、それを見つめる沓掛の姿から斉藤由貴の「MAY」が流れる中、映画はゆっくりと終わって行く。
とにかく素敵な映画です。場面一つ一つ。人物の一人一人がキラキラと輝いています。ノスタルジーでもなんでもない、人生の青春の一ページを切り取れば誰もがこんなにキラキラしていたんじゃないでしょうか。本当にいい映画でした。