くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「銀河鉄道の父」「丹下左膳」(丹波哲郎版)「コレラの城」

銀河鉄道の父」

手持ちカメラによる長回しや、ランプの灯りを配置した絵作りなどなど、作品への工夫は随所に見られるのですが、映画全体をレベルアップするだけの効果が出ていないのと、原作はどうかわかりませんが、宮沢賢治の父親に的を絞った人間ドラマにならず、結局宮沢賢治のカリスマ性に頼らざるを得なくなったストーリー展開はちょっと物足りません。悪い映画ではないのですが、もう少し、政次郎の存在感が胸に迫る迫力が欲しかった。監督は成島出

 

汽車の中、後の宮沢賢治の父政次郎が長男誕生の電報を持って帰省を急ぐ場面から映画は幕を開けます。この汽車の映像がラストシーンに再度かぶるという脚本になっています。そして、宮沢賢治といえば銀河鉄道なので、汽車にも被る。花巻に戻ってきた政次郎は、赤ん坊に駆け寄り、祖父から、賢治という名にしたことを告げられる。やがて少年になった賢治は赤痢になり、駆けつけた政次郎が必死で看病する。こんにゃくを熱くして腹に置くエピソードが語られる。

 

賢治は中学へ行き、戻ってきて質屋を継ぐも、情に流され,客に騙され正次郎に叱られるエピソードが続き、やがて進学を決意して政次郎に懇願する賢治の姿から、妹トシの結核発病から死、日蓮宗に傾倒して狂気の如くなる賢治の姿、やがて、賢治本人も結核になり、政次郎に看取られて死んでいくラストへと流れていきます。賢治の死後、宮沢賢治全集が自宅に届き、それを読む政次郎はいつのまにか汽車に乗っている。賢治とトシの姿を見かけ、向かいに座り、どこまでもいくという二人を見て窓の外を眺めて映画は終わる。

 

先日見た、大森一樹監督の「我が心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」と、ほとんど同じ流れで物語が展開するので、それぞれが有名なエピソードなのでしょう。賢治の死の間際、政次郎が「雨にも負けず…」を絶叫する場面は流石に迫力がありましたが、それ以外は、政次郎=役所広司の実力が発揮できていない気がするし、菅田将暉、森七奈も今一つ精彩に欠いていたように見えたのは残念です。振り回すカメラワークの効果が不十分なのも勿体無い。そんな映画の仕上がりでした。

 

丹下左膳

典型的な娯楽時代劇で、物語はあるのですが、ダラダラと二転三転して展開するのでやたら長く感じる。チャンバラ場面を繰り返しながら、これでもかと次のネタが出てくる。丹波哲郎のカリスマ性だけで見せる映画でした。でもこれが日本映画黄金期の作品なんです。監督は内川清一郎。

 

柳生家で、間も無く若殿源三郎と、江戸の司馬道場の娘萩乃との縁談が近づいていた。司馬道場では引き出物に柳生家の名刀を献上して欲しいと言われ、渋々献上。ところが、ここに将軍家から、日光御廟の修繕を命じられる。貧乏大名の柳生家には財産がない。そこで、生き字引という一風の知恵を拝借すると、なんと埋蔵金があるという。その謎は先日献上した名刀にあるということで、急遽引き出物を取り戻しに向かう。

 

ここに萩乃に密かに想いを寄せる丹下左膳という浪人者がいた。司馬家に引き出物返却の使者がやってきたが、道場で試合をして勝てば返すという芝司馬家当主の申し出で試合が始まる。柳生家の源三郎の弟が最後まで勝ち、名刀を手にしようとしたところへ丹下左膳が現れ、刀を持ち去ってしまう。司馬道場の後目争いで師範代が悪事を企んでいることも絡み、物語はどんどん深みにはまって行く。

 

さらに、名刀一本では謎が解けないらしく、対になった脇差が必要だとわかる。しかもその脇差は左膳が懇意にしている寺にあるらしい。左膳が赤ん坊の頃この寺の軒先に捨てられていて、脇差が添えられていたのだという。どうやら左膳と源三郎は双子だったらしく、左膳は、城の爺やに捨てられたことがわかる。左膳は名刀も脇差も柳生家に返すことにして、あとは追ってきた司馬家らと大立ち回りの末大団円。

 

とにかく、一つ終わったかと思えば次の展開が出てくるという連続ドラマのような流れの作品で、丹波哲郎ではなかったら、なんの取り柄もない一本という映画でした。

 

コレラの城」

これまた支離滅裂な一本で、コレラにする必要さえ感じられないなんともいえない娯楽時代劇。悪漢商人の話から、公儀隠密まで現れ、末は隠れキリシタンから、新天地を目指しての逃避行、ヒロインの姫も結局死んでしまって、主人公は悲恋のラストを迎える。ひたすらのチャンバラ劇の繰り返しは例の如くで、面白いというよりツッコミどころ満載の映画でした。監督は丹波哲郎、菊池靖。

 

ルソンから砂金を密輸入した悪徳商人が、砂金を掘る手伝いをした男達を皆殺しにしたものの、一人の男の逃亡を許した場面から映画は幕を開ける。ここにコレラの流行で城下が滅んだ竜ノ口城では、砂金の抜け荷事件が発覚しお家取りつぶしとなった。一人の浪人秋月左近はとある宿場町にやってくる。そこで、竜ノ口城内にある砂金のありかを探る悪徳商人らの争いに巻き込まれ、やがて、砂金の隠し場所を知る佐代姫と出会うことになる。

 

秋月と佐代姫はいつの間にか心惹かれるが、城内に入ったものの、実は佐代姫らは隠れキリシタンで、砂金を元手に新天地に脱出する計画だった。そこへ、悪徳商人や公儀隠密らが立ちはだかりの大立ち回り。佐代姫は命を失い、手下は砂金を持って旅立つのを見送る秋月らの姿で映画は幕を閉じる。

 

なんともいえない映画で、とにかく、それほど長い作品ではないのにやたらダラダラ長く感じてしまう。まさになんでも作ればヒットした時代の一本です。