くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジュリア(s)」「三匹の侍」

「ジュリア(s)」

少々、頭で作った感がしないわけではないですが、人生の岐路をさまざまに織り交ぜて、それぞれが辿る様々な未来を巧みに描き分けて行く脚本は見事。しかも、決して混乱しないようにさりげないアイテムを散りばめている演出も秀逸。完成度の高い映画にもう一歩という物足りなさがありそうに見えたのは、これまでありそうでなかったタイプの作り方ゆえかもしれません。ラストシーンがいかにもない締めくくりなので、最後までもう一工夫欲しかったですが、全体に良かった。監督はオリビエ・トレイナー。

 

1989年、ベルリンの壁崩壊の夜、学生時代のジュリアやエミリーらはニュースを聞きながら盛り上がっている。そして、勢いで今からベルリンに行こうと言い出し、思いつきでそれぞれ盛り上がって待ち合わせの上、親には嘘の無断外泊の連絡をして飛び出す。ところが、ジュリアはパスポートを忘れて飛び出し、エレベーターで気がついて一人で取りに戻るが、再度出かけようとして寮長に見つかってしまう。一方、すんなりパスポートを持ち出したジュリアは友達とバスに乗り、ベルリンで大騒ぎした上、ピアニストを目指すジュリアは現地でピアノを弾き、それが新聞に載って、両親に嘘がばれてしまう。

 

ピアノコンクールを控えたある日、ジュリアは本屋でポールという青年と出会う。また別のジュリアは店員とぶつかって出会わない。雨が降ってきて、ジュリアは雨の中飛び出して行くがもう一人のジュリアはポールと雨宿りにカフェに行く。やがてジュリアとポールは付き合うようになる。一方、ベルリンへ行ったジュリアは現地で二十歳の誕生パーティをしている。自宅では別のジュリアが両親に誕生日を祝ってもらっている。

 

ピアノコンクール、ポールに選んでもらったドレスで参加したジュリアは見事優勝、一方、自前の地味なドレスで参加したジュリアは落選して、マリアというピアニストのアシスタントになるが、マリアのエージェントヴィクトリアの目に止まり、次第に頭角を表し始める。優勝した方のジュリエットは両親の家でポールを交えて食事をした帰り、あやうく交通事故に遭いかける。そこで車に追突される人生になったジュリエットは手に怪我をしてピアニストの夢が敗れ、高校でピアノを教えるようになる。子供が欲しくて不妊治療をするがうまくいかない。

 

ピアニストとして大成していくマリアは、夫ポールとの行き違いが増え、ある時、ポールがエミリーと不倫していることを知ってしまう。ピアニストになったものの子供のことでノイローゼになったジュリアは酒に溺れ、ある時倒れているのを娘に見つかって、親権を夫に取られてしまう。

 

高校教師になったジュリエットは学生時代に憧れたマルクス再会する。そんな頃、ジュリアの母に肺がんが見つかり。その病室で主治医のガブリエルと知り合ったジュリアは高校教師をしているジュリアだった。学校で一人の青年ユタの才能を見抜き、音楽の道へ導く。

 

様々な人生の岐路で変化していくジュリエットの姿を描きながら、ベルリンの壁崩壊後30年目のこの日、今や老人になったジュリエットは娘に誘われコンサートの会場へ来ていた。そのコンサートで指揮をするのは、かつて高校生の頃才能を見抜いたユタだった。ユタと再会するジュリア、彼女の周りにはジュリアに導かれた大勢の生徒たちがいた。こうして映画は終わっていきます。

 

映像で表現するというより、淡々とさまざまな人生のあり方を描いていくタッチの作品で、どれがどういう結果になるというシンプルな作りを排除して、二つに分かれた先にさらに二つに、三つにと別れる人生を語る手法はなかなか面白い。ちょっと、技巧的に走った感じがしないでもないですが、なかなか楽しめる映画でした。

 

三匹の侍

痛快娯楽時代劇という一本で、テレビドラマが映画版になった程度の仕上がりながら、チャンバラシーンの連続に飽きさせない面白さがあります。とはいえ、物語は実に陳腐で工夫もなにもないし、演出もずば抜けた面白さが窺えるわけでもない。クライマックスの大胆な構図を駆使した画面は見応えあるとはいえ、驚くほどの効果は出ていない。時代色満載の時代劇という感じの映画でした。監督は五社英雄

 

一人の浪人柴左近が歩いている。とある小屋に入ってみると、三人の百姓が一人の女亜矢を拉致している現場に出くわす。拉致している女は代官の娘で、百姓の訴えを聞いてもらうために誘拐したとわかる。左近は関わらないつもりで小屋に寝泊まりを始めるが、代官の雇った浪人が迫ってくる。柴はつい助け立ちをして百姓を助ける。

 

代官が雇っている浪人の中に桔梗というクールな男が一人いて、寝泊まりを約束されている代わりに、何かの役に立とうとでも考えている。代官は百姓らを襲うのに浪人を雇い始め、たまたま牢屋にいた桜京一郎も仲間に入れる。桜はもともと百姓で、代官の言いつけで百姓らのところに向かう途中、百姓の仲間を誤って斬り殺してしまう。

 

こんなお膳立てが揃ったところで、柴を中心にした百姓らと代官が雇った浪人らとのチャンバラやら、代官の娘亜矢や百姓の娘、桔梗の愛人らとの絡みが描かれて、特にまとまりもない中、ダラダラと物語は進む。

 

藩主がこの地を通る際に訴状を届けようと柴らは百姓に加担するが、いざ藩主らが通る段になると誰一人訴状を訴えて出るものはなく、結局、徒労に終わった三人の侍は何処かへ去っていって映画は終わる。

 

とまあ、たわいない娯楽時代劇という一本。