くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「TAR ター」「ソフト/クワイエット」

「TAR ター」

二回目の鑑賞。かなり整理ができたが、二度見ても全く退屈せずに引き込まれてしまった。全く恐ろしい映画である。今回気がついたのは、基本となる物語は、冒頭でスマホで、居眠りしているターを中傷している書き込みをして動画撮影している、おそらくオルガが、リディア・ターを貶めてのしあがろうとする野心の物語であることである。冒頭のプライベートジェットの中のシーンはターがオルガを連れて出版披露イベントに連れていった時だろう。実際、後半でジェットのCAにもう一人来ると告げるカットもある。

 

ジュリアーノ音楽院でのフェイク動画もおそらくオルガが学生の中にいて撮影してアップしたのではないだろうか。しかし、彼女は天才であり、実力も兼ね備え、トップの座にいるリディア・ターより上の力を自負しているのだと思う。そこで、クリスタのことをまことしやかに増幅させ、ターを追い詰めていく一方、本の出版披露会でも中傷する動画を撮影し、ホテルでターに誘われても、もはや勝ったと確信したオルガはさっさと身を引いたのだ。

 

しかも、山のようにトリビアになる作曲家や指揮者の名前、さらには、ラストシーンの向かい合わせの鏡によるターの姿を分身で見せたり、たくさんの入り口を通ってステージに向かったり、さらに見事なカット割りと切り返しで描くリズム作りの秀逸さは、言葉で感想できないほどの至上のクオリティを生み出していることです。故に、アカデミー賞作品賞では、さすがにこの映画を読み取れる人は一部であったために、わかりやすい奇抜な作品に票が流れたのだろう。

 

ラストシーンのモンハン演奏については、ターの希望的な心象風景という捉え方もあるかもしれないが(少なくとも客席のショットについては)、リアルなターの姿の未来への旅立ちとして拍手したい気もします。それほどすごい映画だった。もう一回みてもいいかもしれない。監督はトッド・フィールド。物語は一回目の投稿を修正しておきます。

 

「ソフト/クワイエット」

小賢しいバカ女どものクソ映画だった。みて損をしたというより見てマイナスだった映画。ワンシーンワンカットで90分あまりをカットなしで描くというだけの売りで、なんの芸もないストーリー展開と、キャラクターの味付けも面白みもなく、当初の設定はなんだったかというほど脚本も雑、最低作品だった。監督はベス・デ・アラウージョ

 

幼稚園の先生をしているエミリーが、トイレで妊娠検査をし、結局妊娠してなくてがっかりする場面から映画は幕を開ける。園内で黒人の掃除婦とすれ違い不快感を見せる。外に出ると園児が一人いて、その子に、さっきの掃除婦に、みんな帰るまで掃除するなというように指図する。自分で言えよというオープニング。エミリーはこれから、自分が設立したアーリア人団結を目指す女たちの初会合に教会の一室へ向かっている。途中、誘われたメンバーの一人レスリーと出会う。彼女は勤め先のキムに誘われてやってきた。

 

エミリーはナチスの鉤十字を形どったパイを持参してきたりしていた。そして、それぞれのメンバーは言いたい放題に白人優位の話をするがどちらかというと不平不満を言うだけだった。しばらくすると神父が、こういう会合は困ると言っても程よく追い出す。エミリーはキム、レスリーマージョリーらを誘って自宅でワインを飲もうと提案、他のメンバーは所用があるからと帰ってしまう。

 

キムのスーパーに寄ったエミリーらは、出迎えたエミリーの夫クレイグと落ち合う。そこへ、中国人でエミリーの同級生だったアンと妹のリリーがやって来るが、キムは勢いで彼女らを拒否する。それに乗ったエミリーらもアンらを執拗に攻め、アンらは這々の体で帰ってしまう。しかし、納得いかないエミリーらはアンの家に行っていたずらしようと提案する。クレイグは反対するが、結局短時間で出てくるということにしてアンの家に行く。

 

アンの家に忍び込み、好き放題始めたエミリーだが、そこへアンが帰ってくる。エミリーらは舞い上がって、アンを拘束してしまう。クレイグは付き合い切れないと先に帰る。そこへリリーも帰ってくる。エミリーらは調子に乗って二人を拘束し、やりたい放題にいじめ始める。エスカレートする中、リリーに食べ物を押し込んだ際、ピーナツアレルギーのリリーは死んでしまう。エミリーらは半狂乱になっていくが、刑務所帰りのレスリーは、アンも殺し、レイプ事件にしたら疑われないと提案、エミリーらは、言われるままにレスリーに従い始める。

 

死体を包み、キムのボートに運んで湖に沈めようと、車に乗せて湖岸へ運ぶ。すでにエミリーよりレスリーが指揮をとっている状態になる。そしてレスリーとエミリーはボートで沖に出て死体を投げ捨てる。二人は安心して岸へ向かうが、しばらくして息を吹き返したアンが水上に出てきて映画は終わる。

 

ラストも大体想像がつくし、ワンシーンワンカットの面白みもそれほどないし、クレイグの存在も意味がない上に、先に帰ったメンバーも物語になんの効果も生んでいない。本当にくだらない女たちの自業自得の破滅映画だった。ざまあみろである。