「パリ、テキサス」
十年ぶりの再見でしたが、やはり名作ですね。赤、黄、青の配色を徹底した画面が実に美しいし、配役もナスターシャ・キンスキー以外考えられない。それくらい何もかもが唯一無二の奇跡のような映画だった。監督はヴィム・ヴェンダース。
真っ赤な帽子を被った一人の男トラビスが荒野を彷徨っていて、とあるカフェに立ち寄り、氷を口にした途端倒れてしまう。ロス郊外に住むウォルトの家に病院から電話が入る。4年間行方不明だった兄トラビスがいると言う。ウォルトは兄トラビスを迎えにいく。兄は油断すると、ふらっと逃げてしまい、口も効かない。飛行機で戻ろうとするが嫌がるので、車で戻ることになる。
途上で、次第にトラビスの心は開かれてきて、テキサス州のパリに買った土地の写真などを見せる。ウォルトの家には、トラビスと同じく行方がわからないトラビスの妻ジェーンとの間の息子ハンターが暮らしていた。7歳のハンターは四年前のある日、ジェーンに連れられてウォルトの家にきたのだと言う。ウォルトと妻のアンはハンターを自身の子供のように可愛がっていた。アンはトラビスが戻ったことでハンターを失うのではと悲しんだりする。
ハンターが学校から帰るのをトラビスは迎えにいくが、最初はハンターもトラビスに心を開かない。しかし、服装を変えたり、ウォルトの車を借りたりしてつくすうちに次第に心を開くようになる。ある夜、アンはトラビスに、ジェーンから毎月5日ヒューストンの銀行からハンター宛にお金が振り込まれるのだと話す。トラビスはジェーンを探しにいくことにし、ハンターの学校帰りにその旨を話すと、ハンターも一緒に行くと言う。そこで二人は車でヒューストンのジェーンが振込をする銀行で待ち伏せることにする。
ハンターとトラビスが待ち構えていたが、ついうたた寝をして目覚めたハンターが真っ赤な車に乗ったジェーンを見つける。トラビスの車に乗ってその赤い車を追い、路地裏に入っていくのを突き止める。トラビスは、ハンターを車に残しジェーンが入ったらしい建物に入っていくと、そこはマジックミラーで仕切られた先で女性と話をするピーピングルームのような風俗店だった。トラビスは2階で見かけジェーンの顔立ちの女性を呼び出し、しばらく話をしてその場を去る。
車に戻ったトラビスは途中でビールを飲み、近くのモーテルで過ごした後、ヒューストンへ戻り、浴室で、ハンター宛の別れの言葉を録音して、ハンターをホテルに残してもう一度ジェーンの店に行く。そこで、自分の過去の過ちを語った後、トラビスだとジェーンが気づいたのを確かめて、ジェーンの部屋の明かりを消させて、自分の姿を見せ、ホテルにハンターがいるから迎えに行ってほしいと告げる。
ホテルの部屋にハンターを迎えに行ったジェーンにハンターは黙ってしがみつく。窓の外では、ハンターの部屋を見つめるトラビスの姿があった。そしてトラビスは車に乗り、何処かへ走り去って映画は終わる。
夜景を含め、空や荒野の景色、赤い服を着たトラビスとハンター、そしてジェーンの出立ちなど、そこかしこにこだわった配色演出も素晴らしいし、愛するが故に最愛の女性を失ってしまった男の悲しさ、そして、子供のために身を引く切なさ、三人で暮らす夢の為の土地がいまだに更地である虚しさなど、見事に仕上げた映像作品に圧倒されてしまいます。やはり名作は何度見ても名作、と言う感じの映画だった。
「あんま太平記」
支離滅裂などたばた喜劇という感じの映画で、なんでも作れば売れた時代から映画が斜陽化していく中で、がむしゃらにネタ満載で作った感満載の楽しい映画だった。監督は佐伯幸三。
京都にある全国のあんまの宗家我善坊流宗家の屋敷から映画は幕を開ける。そこへ、熱海にある我善坊を名乗るあんまの人気店があると聞いた宗主の伴三郎は、師範代の大和を熱海に派遣する。その頃、熱海の我善坊では、京都山野宗家以外に坂井宗家が存在することを探偵を使って突き止めていた。熱海我善坊の浅井は、その末裔である坂井喜市のところへ師範代沼田と共に訪れ、三種の神器を手にして、正当な我善坊となるべく画策し始める。
一方、熱海へ来た大和を言いくるめるべく、沼田は色仕掛けで迫るもなかなか動かなかった。坂井喜市はサラリーマンをしていたが、自身がそんな立場だと知るに及んで、あんまを世界に広めるべく、あんまセンター計画に乗り出す。坂井は会社の診療所の真砂江に恋焦がれていたが、なかなかうまく行っていなかった。
浅井のあんまの店にお仙という一匹狼のあんまがやってくるが、いかがわしいことをしていたということで追い出される。坂井は茶々井という大金持ちに見込まれてマンションの一室にあんまセンターを開局するべく、日本中のあんまに入所試験をするが優勝したのはトルコチームで。それを知った茶々井は、トルコセンターにすると言い出し坂井らを追い出す。一文無しになった坂井たちの所に、真砂江がやってきて、坂井のラブレターを見つけてすっかり坂井に惚れ込んでしまう。そこへ世界中を回って金を作ったお仙が現れ、みんなで世界へ飛び出そうと飛行機に乗って映画は終わる。
とにかく。誰が主役かどうかあちこちに飛び回る上に、やたらお色気シーンをふんだんに盛り込み、娯楽のてんこ盛りで収拾がつかなくなっているのがいかにも時代を感じさせて楽しい。こういう映画もあったもんだと感心する一本でした。