くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「HOW TO BLOW UP」「オールド・フォックス 11歳の選択」

「HOW TO BLOW UP」

偏った環境破壊反対のメッセージはあるものの、サスペンス映画として一級品の面白さを備えた娯楽映画の秀作だった。すべてが刻々と展開していくリズム感と、危険を隣り合わせにしたような流れ、そして、クライマックスのハラハラ感から、ラストの爽快な締めくくりに拍手してしまった。単純にめちゃくちゃ面白かった。監督はダニエル・ゴールドハーバー。

 

一人の女性ソチトルが、車のタイヤをパンクさせ、フロントガラスに、法に代わって制裁した旨のビラを張るところから映画は幕を開ける。テキサス州にある石油のパイプラインを爆破すると言う計画を立てるソチトルとショーン。ソチトルは両親を亡くし、その原因は石油パイプラインの公害によるものだと考え、パイプライン爆破の計画を立てて仲間を探し始める。

 

趣味で爆弾を作っていたマイケル、パイプラインのそばで生活していたために骨髄性白血病になったテオとその恋人のアリーシャ、小さなテロを起こしたローワンは警察に捕まり、釈放の条件として他のテロリストを密告することになり恋人のローガンとソチトルの仲間になる。パイプライン建設にかかって家を追われたドウェインもソチトルの誘いで参加する。

 

映画は、刻々と進む爆破計画までの爆弾作り、計画進捗を語る一方でそれぞれのメンバーの参加する経緯を交錯させていく。そして、二つの爆弾が、一つは一番頂上に埋められたパイプラインに、もう一つは、地上に露出しているパイプラインに仕掛けられる。送油システムを爆破直前に止めることで石油が拡散するのを防ぐと言う計画で、ローガンとローワンがシステムを止めに行く。ところが、点検に来た石油会社の作業員と出会し、ローガンが囮になってローワンがシステムを止める。そして合図と共にショーンとマイケルが起爆装置を作動、爆破が成功する。

 

爆薬設置時の事故でアリーシャは骨折してしまうが、車でマイケルとショーンを拾い、ドウェインはアリバイのために爆破時間にバーに行き、最後に爆弾を作ったアジトの小屋にはソチトルとテオが行って証拠を掃除した上で小屋を爆破する。ローワンはFBIに連絡をして、テロリストはソチトルとテオだと伝えたので、ソチトルらが爆破した小屋にFBIが行ってソチトルらを逮捕する。しかし、テオが石油会社の公害により白血病になったことが明るみになることを当初から計画に入っていた。全て終わり、この日、一人のテロリストが、停泊しているボートに爆弾を仕掛け、冒頭の貼り紙をして映画は幕を下ろす。

 

石油会社にかなり偏った反感メッセージが織り込まれているとはいえ、サスペンスとしての仕上がりが一級品で、とにかく面白い。娯楽映画の醍醐味とさりげないメッセージ性がうまくまとまったなかなかの映画だった。

 

「オールド・フォックス 11歳の選択」

これは本当にいい映画でした。バブル期を背景に様々な人間模様が織りなすドラマを、さりげない映像と淡々と進むストーリーの中に巧に、しかも深みのある物語として描いていく映像がとにかく切々と胸に伝わってきます。一人の少年の成長のドラマであり、巷の人たちの生き様の物語であり、そこに様々な人生模様を描いていく手腕が素晴らしい。とってもいい映画だった。監督はシャオ・ヤーチュアン。

 

1990年、バブルにわきかえる台湾のまちはわずかの時間で元の姿に戻るというテロップの後、時は1989年に移る。台北郊外のアパート、一人の美しい女性がアパートの家賃を集めに回っている。彼女の名はリンと言って、アパートを所有するシャという人物に娘のように可愛がられている。アパートの住民ともいい関係で、食堂を営むリイ、自転車屋を営む店、そしてここに、レストランに勤めるタイライの家にやって来る。

 

タイライはガス代や水道代を節約しながら将来理髪店をするのが夢だった。息子のリャオジエもそんな父の夢を楽しみにしていた。タイライの弟が結婚し、バブル景気で儲けた弟はタイライに理髪店を買う金の頭金を貸してやると言う。タイライはたまたま店を畳んで出ていく予定のリイの店を買う段取りをする。いきなり夢が近づいて大喜びするタイライとリャオジエだったが、バブル景気で不動産も上がり、シャはリイの店の値段を上げることになりタイライの夢が遠のいてしまう。リャオジエは落胆するが、リンに頼んでなんとかシャに取り持って欲しいと言うものの難しかった。

 

そんなある日、雨で雨宿りをしていたリャオジエは、通りかかったシャの車に呼び止められ、車に乗せてもらう。以来、シャは何かにつけリャオジエに近づくようになり、シャはリャオジエに、負け組と親しくしていても弱くなるだけだから強いものに近付いて勝ち組になるのが生きる上で大切だと教える。そんなシャは周りからオールドフォックスだと呼ばれていた。リャオジエは次第にシャの考え方に傾倒していき、生真面目に日々を送る父タイライに反抗するようになる。

 

タイライは、勤め先にいつも食事に来るヤンという婦人に会うようになる。実はヤンは若き日タイライが思いを寄せた女性だった。タイライやリャオジエが風邪で寝込んだ時もリンが親切に介抱したり食事をさせたりする。リャオジエの誕生日、ヤンやリンから誕生日プレゼントをもらい、タイライは自転車をプレゼントする。まもなくしてバブルが崩壊し、大金をあづけていたリイは、一文無しになり自殺してしまう。

 

そんなある日、タイライの勤め先の食堂の一室で宿題をしていたリャオジエは、たまたま隣室でリンがある男に、シャの所有するゴミ処理場と燃料スタンドの取引の話をしているのを聞いてしまう。シャの生き様にすっかりのめり込んでいたリャオジエは、シャの車に乗せてもらった際、リンがシャを裏切っているかの話をしてしまう。しかし、実はリンは、シャの大切にしているゴミ処理場を守ろうとしていただけだった。

 

そんなこととは知らず、シャはリンに暴力を振るい、一方リンが話をした相手の男はヤンの夫で、ヤンを罵倒した挙句殴ってしまう。タイライの食堂にやってきたヤンは、タイライに送ってもらい思わず口付けをしする。リャオジエはシャの車と出会わなくなり、リンが言っていたシャのゴミ処理場へ行きそこでシャに出会う。シャの家に招かれ、実はシャはタイライの事を以前から知っていたことを告白する。

 

かつて、シャの母親が亡くなった病院で、リャオジエが生まれたばかりのタイライ夫婦にエレベーターの中で出会った。喜びを隠せないリャオジエの母にタイライは、シャの表情から何か不幸があったことを悟り妻を戒めたのだ。シャは、タイライは人の心を気にする人間だとその時に知ったという。そしてその種の人間は負け組だと断言する。シャの母はゴミ処理場で怪我をしてそれが元で亡くなったのだという。そんなシャにリャオジエは、自分は自分だとはっきり答える。リャオジエはシャに家を売って欲しいと頼んでいた。リイが自殺して事故物件になった場所をシャはリャオジエに売ると約束する。

 

家に戻ったリャオジエは、父タイライを気遣い、やめていたガスや水道の節約も再開し、仕事で疲れたタイライを起こさないように一人学校へ行く。シャはリイの家を訪ねるが、リイの息子が、相場通りの金で自分に売って欲しいというが、シャはすでにリャオジエと約束したからダメだと断る。そしてタイライを訪ねたシャは、家のことを話すが、タイライは、家はリイに譲ってあげて欲しいとシャに言う。

 

時が経ち、建築家になったリャオジエは、この日新しい家の設計の相談をしていた。そして仕事仲間から、オールドフォックスだと揶揄され映画は終わっていく。

 

とにかく、リャオジエをいじめる子供たちや、その母親についての監視カメラのことをシャに聞いたリャオジエが警告したり、微に入り細に入った人間ドラマが非常に奥が深く細かい上に、胸に染み渡るほどに訴えかけてきます。どの人物もそれなりに一生懸命生きてきて、それなりに自分の考え方を持っている。そこになんの悪もなく、真面目に真っ直ぐ生きている姿がとっても好感。見事な人間ドラマ作品でした。