くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シャイン」「天使の復讐」

「シャイン」

天才ピアニストデイビッド・ヘルフゴットの自伝映画。これは素直に名作でした。主人公の狂気の裏に隠れた天才的な才能が垣間見られる演技と演出も素晴らしいけれど、映像のさりげない美しさ、周りの人たちの目に見えない優しさが映画全体から滲み出てきます。それでいて物語は強烈で劇的で激しい。バイタリティあふれる作品なのに優しさと感動が胸に突き刺さってきます。素晴らしかった。監督はスコット・ヒックス

 

雨の中、一人の男デイビッドが何やら叫びながら駆けている。早口でひたすら発する言葉はどう聞いても異常である。そして一軒の閉店後のレストランに辿り着き、中にいる人に声をかけるが最初は相手にされない。それでもしつこくドアを叩き、中からレストランの店長なのかシルヴィアが優しく彼を迎え入れ、どうやら道に迷ったらしいデイビッドを下宿まで送り届ける。そして物語は彼の少年時代に遡る。

 

オーストラリアの片田舎の教会での演奏会、これからピアノ演奏をする少年デイビッド。なんの曲を弾くかもわからず、最後列にいた父ピーターが曲名を説明する。やがて演奏が始まるがピアノがボロすぎて動き始める。審査員はデイビッドの才能を認めるが、ピーターが審査結果の発表を聞かずに帰ってしまう。後を追いかけてきた審査員の一人が彼を教えたいと頼むが父のピーターはこれまで独学で自分が教えたからと断る。しかし、デイビッドはラフマニノフをやってみたいと言ったことから、ピーターは自分には教えられないと、家に来た審査員にデイビッドを預ける。

 

やがてデイビッドはあちこちのコンクールで頭角を表し評判になっていくが、一方で自分から離れていくことに危惧したピーターは執拗にデイビッドを自分の手元にとどめるようになり、それは暴力的にまで高まっていく。たまたま著名な作家キャサリンと親交を結んだデイビッドは次第に励まされるようになる。そんな時イギリスの王立音楽院から招待を受ける。しかしピーターは狂ったようにデイビッドを責めて、ロンドン行きを諦めさせようとするが、デイビッドはキャサリンの後押しもあって、ついにピーターの元を離れロンドンへ向かう。

 

デイビッドは音楽院で、有名なピアニストでもあったパーカー教授に教えられ、念願のラフマニノフを身につけるべく猛特訓をする。だが演奏会で完璧に演奏した直後、これまでのストレスから発狂して気を失ってしまう。そして十数年精神病院で過ごすが、そこで、たまたま彼のファンだったという女性に引き取られて自宅療養を開始する。元来風変わりな性格だったデイビッドは結局持て余され、その後転々として住まいを変わってしまう。そしてあの夜、雨の中外に飛び出したデイビッドは道に迷って、冒頭のレストランに辿り着いたのだった。

 

シルヴィアは、翌日レストランにまたやってきてピアノを弾き始めたデイビッドを見て、彼の才能を知り、専属のピアノストとして雇う。レストランは大繁盛、新聞にも取り上げられ、デイビッドの素性も明らかになる。ある夜、ピーターが訪ねてきたが、デイビッドは父を許すことはなく、ピーターは寂しくデイビッドの元を去っていく。

 

ある日、シルヴィアは占星術師で、最近裕福な投資コンサルタントと婚約したギリアンをデイビッドに紹介する。ギリアンが帰り際、デイビッドは彼女にプロポーズする。ギリアンは最初は冗談かと思ったものの、自分のことを純粋に愛してくれるデイビッドの気持ちに打たれ二人は結婚する。まもなくしてデイビッドはリサイタルをしてピアニストとして復帰、会場には彼に関わった様々な人たちが集っていたが、父ピーターの姿はなかった。ピーターはそれ以前に亡くなっていたのだ。デイビッドとギリアンがピーターの墓参りをして歩いてさって行って映画は終わる。

 

激しくもドラマチックそのものの激動の半生を描いた作品ですが、ストーリー展開の激しさ以上に、どこか人間味が滲み出てくる映像が素晴らしく、主演のジェフリー・ラッシュの演技がとにかく圧巻で、映画の迫力に圧倒される作品でした。いい映画だった。

 

「天使の復讐」

レイプされた女がひたすら男を撃ち殺していくというシンプルそのもののストーリー展開と、なんの中身もない展開が、エンタメとしての映画を楽しむことに特化した作品という感じで、気持ちのいい映画だった。主演のサナを演じたゾー・タマーリスのクリっとした目鼻立ちとクールな出立ちが素敵だった。監督はアベルフェラーラ

 

縫製店に勤めるサナの姿から映画は幕を開ける。口のきけないサナだが同僚たちから可愛がられ普通の日々を送っている。男の話に盛り上がる同僚の女たちに適当に話を合わせているかの風もないわけではない。ある日、仕事帰りに突然路地に連れ込まれたサナは覆面の男にレイプされてしまう。傷心の中家に戻ったが、サナの部屋に空き巣が入っていて鉢合わせてしまう。

 

空き巣は最初は金を要求するが何もないのを知るとサナをレイプする。サナは手元にあったガラス玉で男を殴り、アイロンで頭を砕いて殺してしまう。サナはその死体をバラバラにして冷蔵庫に隠し、小分けして処分しながら、普通に縫製店で働くが、仕事に身が入らなかった。サナは空き巣が持っていた銃を使って、彼女に近づいてくる男たちを撃ち殺すようになる。

 

サナのアパートの管理人の女はおせっかい焼きでフィルという犬を連れ回して何かにつけてサナに絡んでくる。サナはフィルを散歩に連れ出し、どこかに置き去りにしてしまう。サナは部屋の中の遺体をあちこちに置いて、勝手に部屋に入ってくる管理人に見せつけさせようとする。

 

縫製店で仮装パーティが行われることになり、店長のアルバートはサナを誘う。サナは修道女の格好に扮してアルバートとパーティに行く。アルバートがサナを部屋に誘い、体に触れてきたので、サナは持って行った銃でアルバートを撃ち殺し、パーティ会場へ戻って男たちを次々に撃つ。一人の女がサナに包丁を突き立てたが、サナは女だったので撃たなかった。その頃、サナのアパートで遺体を見つけた管理人は刑事と話をしていた。飼い犬のフィルも殺されたと訴えていたが、フィルが勝手に家に戻ってくる場面で映画は幕を閉じる。

 

なんのことはない、復讐劇を行う女のピカレスクロマンという感じの映画で、気持ちがいいほどにシンプルなのがとっても良い。映画の原点とはこういうものだなと思う一本だった。