「先生の白い嘘」
原作のテーマが難しすぎるのか、映像にしきれていない脚本が、結局だらだらとシーンを繰り返すだけになってしまって、焦点の見えない作品になってしまった感じだった。面白いわけでもなく、ミステリアスでもなく、中途半端なラブストーリーのようになっている映画だった。監督は三木康一郎。
居酒屋で高校教師をしている美鈴と親友の美奈子が飲んでいる。そこへ二人の友人でもある早藤という男性も加わる。酔って好き放題に喋る美奈子は、突然早藤と婚約したと美鈴に告白する。しかし、実は早藤は時々美鈴を呼び出しては屈辱的に美鈴と関係を持っていた。六年前からそんな立場になった美鈴も、拒否できないもどかしさに悩んでいて、食べ物の味がわからないと言う病気になっていた。
そんな時、学校で一人の男子生徒新妻が、クラスで揶揄われる事件が起こる。さらに彼がバイト先の年上の女性とホテルに行ったと言う噂が広まり、担任の美鈴が事情を聞くために新妻と面談することになる。その席で、美鈴はつい本音を暴露し、学校側が何もなかったと言う返事をもらうようにと言う依頼を無視した行動を取る。しかも、新妻も、実際にホテルに行ったこと、そこで、女性のあの部分が怖くてたまらないなどと告白するに及んで、それぞれの女性から男性への、男性から女性への考え方の恐怖、暴力を言い合ってしまう。
以来、新妻と美鈴は接近し、新妻が美鈴の家に行って親しくなっていく。新妻の祖父が植木屋だったこともあり、美鈴は新妻を気兼ねなく自宅に呼び、とうとう口付けをしてしまう。まもなくして、美奈子が妊娠、早藤と美奈子は正式に籍を入れる。しかし、早藤は女としての美奈子を支配できなくなる苛立ちを覚え、さらに美鈴に強行的になっていくが、美鈴も美奈子が母として逞しくなる姿を見て自分も意思を持って早藤に対峙していくようになる。
ところが、たまたま美鈴が早藤に学校の外で罵倒される姿を見た新妻は、早藤の会社の前で早藤に詰め寄ってしまう。早藤は美鈴に、自分たちの関係を新妻に話したと告げ、新妻の前で抱かれるか、自分の前で新妻と体を合わせるかすれば別れてやるとホテルに呼び出す。美鈴は入院している美奈子を訪れ、リップを借りた上で早藤の待つホテルに行く。そして、自ら下着を脱いで、女の体の怖さを知れと早藤に迫る。
早藤は自分が惨めになったことを知り、逆上して美鈴の顔をめちゃくちゃに殴り部屋を出ていく。美奈子のところに、酔った早藤が戻り、そのまま寝てしまう。美奈子が恐る恐る早藤の携帯を見て、美鈴のいるホテルの事を知り、そのホテルへ向かう。そして血だらけの美鈴を発見する。後日、美奈子が早藤の部屋を訪ねると、なんと早藤はクローゼットで首を吊っていた。慌ててロープを切ると息を吹き返したが、言葉も出なかった。そのショックか、美奈子は破水する。美奈子はタクシーを呼ぶように早藤に言うが、早藤は警察に電話をして、自分は女を襲ったことを自供する。
半年後、美鈴は顔の傷が完全に治らないまま学校へ行く。学校では新妻と美鈴が口付けしている写真が出回っていた。教頭たちの前で、美鈴は。学校を辞める旨を告げる。帰りのロッカーで、新妻が、美鈴を守れなかったけれど美鈴が好きだと告げるが、美鈴は、お互い男と女だからとあっさりと別れていく。この辺りがよくわからなかった。美奈子は留置所の早藤を訪ねる。こうして映画は終わる。
テーマが非常に微妙な難しさがあるために、映像になった時点で、ぼやけた展開になってしまったようです。なんとか表現しようと悪戦苦闘した結果、それぞれのエピソードがバラバラに中途半端な仕上がりになったようで、映画にするには無理がある原作なのではないかと感じてしまいました。
「潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断」
いい映画なのですが、焦点が中盤以降に具体的になってきて、前半の描写が今ひとつ意味をなしていずに、やたら作品の尺を伸ばすためだけに配置された脚本構成がちょっとあざとすぎてもったいなかった。救出劇から後をもっと丁寧に練り込んで膨らませればもっといい映画になったように思います。監督はエドアルド・デ・アンジェリス。
1940年、イタリア海軍の潜水艦コマンダンテ・カッペリーニ号は、イギリス軍の物資供給を断つために大西洋へ旅立とうとしていた。この艦の船長サルヴァトーレが妻リナと過ごしている場面から映画は幕を開ける。戦争で負傷し、コルセットをつけざるを得なくなった体で、サルヴァトーレは潜水艦に乗り込む。ここまでがカットを繰り返したり、意味ありげなシーンを交錯させたりとちょっと凝りすぎた感じです。
やがてジブラルダル海峡を超えて大西洋に入るなか、食料も厳しくなった頃、前方に大型の輸送船を発見する。コマンダンテ号に発砲してきたので、サルヴァトーレは船籍がわからないままに撃沈を指示する。その船は中立国ベルギーのカバロ号だった。船員たちは救急艇で脱出し、一隻は他の船に助けられたがもう一隻が行き場がなく、コマンダンテ号が最寄りの港まで牽引することになる。しかし途中で救急艇が破損し、乗組員をコマンダンテ号に移すことになるが、定員を超えるため、一部は船橋に残すしかなく、潜航できないまま、イギリス海軍の支配領域を進むことになる。
案の定、イギリス海軍の軍艦に出会い発砲を受けるが、潜航出来ず、無線で仔細を連絡、イギリス軍も発砲をやめてコマンダンテ号を通してやる。コマンダンテ号は無事ベルギー船の乗組員を港に届けるが、ベルギー船の船長は積荷はイギリス軍の兵器だと告白、サルヴァトーレもそれを知っていたと答えて別れる。そして船は沖に向かって出航して映画は終わる。
救助されたベルギー人の一部が破壊工作をしたり、コマンダンテ号のシェフがベルギーの料理を教えてもらう場面など、エピソードもふんだんに盛り込めるはずが、時間切れで適当に処理した感も見られ、ちょっと残念な展開だった。決して駄作ではないのだが、もっと肩の力を抜いて、素直に描きたいところに集中すればもっと良くなった気がします。