くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「日本敗れず」「海女の化物屋敷」「黒線地帯」

「日本敗れず」

芸達者を一堂に集めてリアリティと重厚な演出を徹底したいわゆる「日本のいちばん長い日」を描いた作品で、非の打ち所がない緊迫感と圧倒的な迫力に魅入ってしまう見事な作品だった。監督は阿部豊

 

終戦後約十年の歳月が流れた東京の街のカットから、時は敗戦が現実のものになりつつある昭和二十年五月、東京は大空襲に見舞われ、政府では共同宣言受諾に向けての閣議が連日行われているところから映画は始まる。あくまで徹底抗戦を主張する陸軍大臣に対し、外務大臣海軍大臣は共同宣言受諾やむなしの意見を出し真っ向から対立する形となる。

 

陸軍の若き将校たちは再三にわたって陸軍大臣に詰め寄り、抗戦する旨を政府に打診してもらうべく迫るが、やがて原子爆弾が投下され、ソ連が参戦するに及んで、御前会議では共同宣言受諾が決定される。そして天皇自らの玉音放送が十五日正午に放送されることが決まる。

 

若き将校たちは、強引に近衛連隊に突入して師団長を銃殺し、偽の命令で各師団を宮中前に集結、玉音盤奪取に動くが、放送関係者も決して保管場所を明らかにせず、やがて陸軍大臣は自決するに及び、軍総指令が事態収集の為に宮中に駆けつけ、若き将校らを説得して辞退を収拾、十五日玉音放送が流れ日本は敗戦となる。そして十年、立ち直った日本の姿を描いて映画は終わる。

 

終戦時の宮城事件を扱った作品ですが、映画としても非常に優れた完成度を持っていて、なかなか見応えのある一本でした。

 

「海女の化物屋敷」

こういう映画だろうなと思った通りのとんでもないエロとヤケクソ映画だった。物語の展開が実に荒っぽいし、前半と後半はほとんど脈絡はないし、無理やりラストを迎える流れは笑うしかない。でも、こういう映画もあったもんだと映画全盛期の空気を感じさせる作品でした。監督は曲谷守平

 

やたら海女たちが人形のように存在するタイトルバックから、いかにもな海女たちの姿で映画は幕を開ける。そして、仁木恭子は、友人で海女部落の元締めの名家青山家の親友由美を尋ねるところから物語は始まる。由美の兄は漁に出て亡くなり、その恨みを義姉が由美に向けたうえ、狂ったまま自殺して井戸落ちる。以来由美は義姉の幽霊に悩まされていると恭子を呼んだのだ。恭子は由美の周辺の人たちを調べ始める。

 

この部落に海藻の研究に水木教授と助手の加代がやってくる。加代は由美の身内でもあった。幽霊騒ぎが収まらない中、恭子は恋人の野々宮刑事を呼ぶ。最近発見された溺死体に黒真珠のネックレスがあったことと由美の義姉も黒真珠を首につけていた事から事件の関連を調べ始める。調べるうちに、溺死体を殺した男が水木らしいと判明、さらに水木と加代は青山家が海の洞窟に隠した財宝を目当てに来たことがわかる。

 

なかなか由美が財宝の場所を言わないので、水木は加代とともに由美と恭子を拉致してボートで洞窟へ向かう。一方、青山家の下男が野々宮に恭子の窮地を知らせる。水木は洞窟内で財宝を発見するが独り占めしようと加代を水中銃で狙う。待っているボートでは水木の手下が恭子を手に入れようとしている。そこへ野々宮が駆けつけ恭子を救う。洞窟内では、水木は足元が滑って落とした水中銃で自身が射抜かれて死んでしまう。全てが終わり、由美は野々宮と恭子の結婚を祝福してプレゼントを渡して映画は終わる。

 

何とも言えない仕上がりの映画で、海女である理由はエロだけだし、前半の幽霊騒ぎは話題性だけで、結局終盤の悪者たちの利害関係の諍いで締めくくるという怪作という映画だった。

 

「黒線地帯」

B級サスペンスで展開する娯楽アクションという感じの映画で、出来栄えはそれほどではないものの、あれよあれよと物語が展開する様はちょっとした作品だった。監督は石井輝男

 

一人の女性が夜の街を駆け抜けていく。場面が変わると別の男町田が駆けてきて映画は幕を開ける。赤線が廃止になり、売春は地下に潜り、そこに麻薬の密売が絡んできて黒線と呼ばれるようになったことを調べるフリーのジャーナリスト町田が主人公となる。女を見失った町田は一人の占いの女に声をかけられる。ズバズバと当てるので、女の言葉に乗り、サブというポン引きの手配で町田はあるホテルへ行く。しかし。いつまで経っても目当ての女が来ず、町田は出された水に仕込まれた麻薬のせいで眠ってしまう。

 

町田が目を覚ますと傍に絞殺された女がいた。町田ははめられたことを知り、ホテルを後にして、昨日出会った占いの女とポン引きの男を探し始める。街でホテルの女給を見つけたが、女は車に撥ねられてしまう。ポン引きの名前を聞いた町田は早速捜索するが、彼のライバルの鳥井は町田を犯人として動き始める。

 

町田が調べる中で、人形を作って配達している高校生美沙子と出会う。実は人形の中に麻薬が仕込まれ、それがダンサー達の衣装屋を通して密貿易されていたのだ。美沙子はそんなことは知らずに配達していた。一方町田はポン引きのサブを追ってマネキン屋に入りそこで麻耶という女性と知り合う。鳥井は町田を犯人と決めつけ、女給のひき逃げ事件で警察に電話した町田の声も判別、自主するようににせまるが、町田は二日の猶予をもらう。

 

町田は麻耶から、麻薬団のボスがブルームーンというクラブにいることを話す。そこには美沙子が人質になっていた。町田は麻耶に警察に連絡するように言って、単身クラブへ美沙子救出に向かう。そこで町田はボスに会うが、ボスの雇った殺し屋ジョーが現れ、利権を独り占めする為にボスを撃ち殺す。町田はジョーと格闘し、そこへ警察が駆けつける。町田は麻耶と一緒になる約束をし、疑いのはれたライバルを祝福する鳥井の姿で映画は終わる。

 

とにかく、次々と登場人物が出てくるので目まぐるしくて混乱するが、お話は至ってシンプルで、エンタメだけを追い求めた作りなので面白い。決して一級品ではないものの楽しい一本だった。