「影法師捕物帖」
90分足らずなのにやたら長く感じてしまう映画で、チャンバラシーンが次々と出てくるのだが物語が全然前に進まない。嵐寛寿郎三百本目記念作品ゆえに延々と見せ場を作ったのだろうが、さすがにしんどい。とは言え、影を多用した個性的な映像がちらほら観れるのでそれはそれで楽しかった。監督は中川信夫。
田沼意次の悪政と大飢饉が相まって江戸の街は貧困に喘いでいた。ここに朱桜玲三郎は影法師となって、奢る田沼意次や豪商から金を奪い取り貧しい人々に分け与えていた。田沼意次は、天草四郎が隠したと言われる埋蔵金一千万両の在処を記した金獅子、銀獅子の鍔を手に入れようと画策していた。
将軍家治もまた民を救う為その鍔を手に入れたいと願っていた。田沼意次に意見する松平定信は世の平和のためその鍔を探していた。街では米騒動が起こり下手人が逮捕される。金獅子、銀獅子の鍔を保管していた商家の主人は田沼意次の差金に殺され、その仇を追うべくその娘達は、下手人と思う影法師を追っていたが。実はその影法師こそ、田沼意次と結託した室津屋の仲間の清見潟という浪人だった。
こうして、二枚の鍔をめぐっての攻防戦が繰り返され、そこに影法師が絡んで市中の人々との物語がゴチャゴチャに展開していく。そして二枚の鍔はついに影法師が手に入れ、それを松平定信に献上、おりしも田沼意次の差金が影法師に迫る。そして大チャンバラの末、影法師の大音声で映画は終わる。
何ともだらだらした物語展開にぐったりしてしまう作品だったが、チャンバラシーンは嫌というほど堪能しました。
「恋愛ズバリ講座」
大蔵貢が退陣してから、当時の新東宝の役者が一週間で作った三話オムニバス。それぞれに個性的な演出を施した洒落た作品のオンパレードでした。監督は三輪彰、石川義寛、石井輝男。
第一話吝嗇(けちんぼ)
全編、ロボットのような台詞回しと無表情な演技を淡々とこなしていくある意味実験的な作品で、とにかくけちんぼな社長がこれまたけちんぼな女社長と出会って繰り広げるドタバタコメディ。この男社長は無類のドンファンだが、秘書に騙されて、呆気にとられた上、結局女社長と夫婦会社を作ろうと映画は終わる。
第二話弱気
日本最初の原子力発電所誘致に沸く田舎の村に、建設省の役人小池がやってくる。村長らは利権をめぐって接待をするが実は人違いでこの男は村長と結婚する為に恋人の父に挨拶に来ただけだった。なかなか言い出せないまま、とうとう娘にハッパをかけられて、村長に告白、娘を連れてバスに乗るが、結局、一人残った父が心配で途中下車して映画は終わる。
第三話好色
結婚詐欺師の男がターゲットの女性との結婚式をしている場面から映画は幕を開ける。ところが新婚旅行で新婦と崖に落ちて自分が助かる。次のターゲットはいかにも田舎娘の幼稚園の先生で、お互い懇ろになり、いよいよ女性を殺害しようとするが、心変わりし、詐欺師の相棒で本当の女房を殺し、詐欺師が家に戻ると、女は実は弟だと言っていた男とベッドでいちゃついていて、騙されたのは詐欺師の方で、その弟という男に殺されて映画は終わる。
それぞれ監督の色が出たちょっと風変わりなオムニバス作品でした。
「九十九本目の生娘」
いたって普通の映画でしたが、幻のカルト映画という紹介文の意味はおそらく部落差別が絡んでいるからでしょう。ストーリー展開のリズムも絵作りもこれという秀逸さもない娯楽サスペンスでした。監督は曲谷守平。
二人の男は何やら追い詰めている場面から映画は幕を開ける。そして捕まえたのはお歯黒をした老婆で、引き連れて麓の交番へ引き渡そうとしたが途中で逃げられてしまう。警察署で二人の男は先日山にハイキングに来て二人の女性と知り合ったと語り始める。ところが、女性が行方不明となり、探し回っていて老婆を見つけたのだという。この村のそばの山深い中にある舞草族の部落では十年に一度の火づくり祭りが予定されていて、その祭りの時は人々は戸口を閉め、山の寺の宮司も山を降りてこないといけないのだが、宮司の弓削部は古臭い風習をやめて部落の人たちも村人達と一緒に祭りをするべきだとお下りようとしない。
弓削部に好意を持っている部落の娘あざみは、部落では五郎丸という許嫁があったが、弓削部と親しくし、それをよしとしない五郎丸はあざみの母である老婆に詰め寄っていた。やがて、舞草村では祭事が始まり、行方不明だった二人の女性が殺されるのを炭焼きの男が目撃する。実は舞草村では十年に一度、生娘の血を使って刀を打つ神事が行われ、今年の九十九本目を打てば村は繁栄すると言われていた。
事件が見えてきた麓の警察署では催事が行われた神社の境内を探し、隠し地下室を見つけて、そこに九十八本の刀を発見し、持ち帰る。舞草村では、九十九本目の刀に捧げた娘の血が汚れていた為に失敗、新たにあざみを生贄にするように村長が老婆に告げる。老婆はあざみを救うべく、新たな生娘を求めて麓に降り、警察署長の娘加奈子に目をつける。しかし、老婆は逮捕されてしまう。しかし舞草村の村民が老婆を助け、加奈子を拉致して舞草村へ向かう。
警察では加奈子を救うべく舞草村の場所を捜索して特定、警官達が向かうが舞草村の村民の反撃に会う。あざみは生贄として拉致されていたが五郎丸が助け出し、二人で逃げるが五郎丸は殺されてしまう。加奈子は生贄にされるべく吊され、あわやというところで警察隊が駆けつけ助け出す。村長は死んでしまい、加奈子は警官でフィアンセの阿部と山を降りる。こうして映画は終わる。
先日見た「瀬ぶり物語」に共通するような作品で、いたって普通のドラマだった。