くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「汚れた肉体聖女」「亡霊怪猫屋敷」「人喰海女」

「汚れた肉体聖女」

同性愛を真正面からしかもエンタメとして描いた作品が日本にもあったというのにまず驚く。ヒッチコックタッチのような作りでサスペンスを盛り上げていく手法が面白い映画だった。監督は土居道芳。

 

宗教(キリスト教が前提だが具体的に指定していない)の名家である平家の娘恵利とその兄、そして友人の津山が談笑している場面から映画は幕を開ける。恵利が一人で買い物に行くというので津山がついていくが帰りにチンピラに襲われる。津山が応戦し警官も駆けつけ難を逃れたが、津山はつい恵利を強姦してしまう。恵利は妊娠し、両親の勧めで中絶、宗教系の女学校へ入学する。そして三年が経つ。

 

恵利は最上級生となり、院長の信頼も厚く風紀委員なども務めている。この日新入生がやってきて、その中の一人靖子=アンナと同室になる。可愛らしいアンナにいつの間にか惹かれていく恵利はやがて同性愛関係になる。そんな二人を恵利にのライバル柏木が目撃してしまう。そして柏木は曽根とアンナの部屋を交換する。曽根もまた恵利に惚れていた。柏木はアンナを奪いたかったのだが、アンナと恵利の関係は崩れず、ある夜、塔で待ち合わせたアンナと恵利のところへ柏木が現れ揉み合いの末階段から柏木が落ちて死んでしまう。それを曽根が見ていた。

 

曽根は恵利がアンナに宛てた待ち合わせのメモで二人を脅し、それを奪ったアンナと揉み合いの中曽根は底なし沼に落ちて死んでしまう。責任を感じた恵利はアンナと別れて修道院を出、そこでアンナの兄と遭遇、ホテルで体を合わせてしまう。アンナの兄は役所の金を横領し、自殺してしまう。修道院に戻った恵利はアンナに二人で逃げようと詰め寄るがアンナが拒否、揉み合ううち塔の上から二人は落下して死んでしまう。院長らが二人の死体を見下ろし映画は終わる。

 

塔と階段の空間のサスペンスや、鐘を鳴らす音と映像のモンタージュなど、ヒッチコックタッチを思わせる演出、そして、エロスを兼ね備えた同性愛をテーマにした危ういストーリー展開がなかなかよくまとまった作品。1958年の製作年度を見ても斬新な一本だった。

 

「亡霊怪猫屋敷」

シンプルな怪談ホラーという一本で、ストーリーの組み立ても大したことはないのだけれど定番の展開を監督中川信夫らしいカット割りで描いていく映像を楽しめる一本でした。

 

大病院の医師久住鉄一郎が夜の病院で足音を聞きながら不気味なセリフを語るモノクロ映像から映画は幕を開ける。妻の頼子の転地療養のため、頼子の兄の故郷へ行くことになる。そこで、化物屋敷と言われている古い邸宅を改装して医院を開業するが、夜な夜な不気味な老婆が現れるようになる。そしてとうとう頼子は老婆の夢に苦しみ寝込んでしまう。そこで鉄一郎は、頼子の兄健一に地元の寺の和尚の元へ連れて行かれ、この邸宅が化物屋敷と呼ばれる謂れを聞く。

 

映像はカラーに変わり、屋敷にかつて住んでいた家老将監の話が始まる。将監は気が短く、この日、約束していた囲碁の師匠小金吾を待っていた。小金吾には目の不自由な母宮路がいて、その世話をするうち時間に遅れたのだ。小金吾と将監が囲碁を打ち始めるが将監の手に小金吾は豪を煮やして席を立ってしまう。そこで将監は小金吾を斬り殺し、若党佐平治と一緒に壁に死体を塗り込めてしまう。

 

小金吾が勝負の後修行に旅立ったという将監の言葉に疑念を持った宮路が将監の屋敷を訪れるが、逆に将監に手籠にされてしまう。宮路は飼い猫玉に恨みを移して自殺してしまう。将監の息子新之氶は八重という腰元と恋仲だったが、将監は新之氶の思いに反対した。実は将監は八重にも手を出そうとしていた。そんなところへ、老婆の姿の化け猫が現れ、将監の母に取り憑いて、将監を呪い始める。狂った将監は八重を斬り殺し、ついに新之氶と相打ちになって死んでしまう。

 

現代に戻り、頼子の家系が佐平治の子孫だと明かされる。鉄一郎は和尚からお札をもらい、頼子の病室に貼るが嵐が吹いてお札が飛び、老婆が現れ頼子を締め殺す、駆けつけた鉄一郎は壁に塗り込められたミイラを発見する。夜に大病院で、鉄一郎は足音を聞く。やってきたのは元気になった頼子だった。そして二人は九州での出来事を思い出す。ミイラを葬ったら呪いが解けたらしい。

 

かなり無理やり感のあるストーリー展開ながら逆回しや二重写を多用したホラーシーンがとにかく楽しい一本だった。

 

「人喰海女」

荒っぽいストーリー展開だが、娯楽性だけを追いかけていった脚本はあれはあれで飽きさせない面白さを楽しめる映画でした。監督は平田昭彦の弟小野田嘉幹

 

海女たちが例によって喧嘩をしている。信州から戻って海女になっているサダは、芸者の子だと揶揄われ喧嘩をしていた。サダには

地元の漁場を持つ名家の息子五郎という恋人がいた。しかしこの漁場を地元のヤクザ宮田が狙っていた。海岸に男の死体が流れ着くが警察は自殺と断定する。しかし所轄の丸山刑事は疑念を持ち捜査を始める。

 

実はサダは信州へ行ったのではなく、東京で売春していた。サダをつけ回す男が邪魔でチンピラの吉崎に金をやって殺したのだった。吉崎はサダに付き纏うようになる。そんな時、サダの妹の和枝は新聞記者の君塚と知り合い恋仲になる。サダは吉崎に付き纏われ始め、宮田に頼んで殺してもらうが、吉崎が生きていたので再度殺して崖から突き落とす。

 

サダは宮田に恩を売られ、五郎の漁場を譲るように五郎と結婚するように勧められるが、五郎はそんなサダの思惑を知って、サダから離れていく。落ち込んだサダに和枝は君塚と結婚することにしたという。その頃丸山は殺害の犯人の耳の後ろにあざがあることを知る。サダには耳の後ろにあざがあった。丸山は君塚と協力して海女コンテストを行い、あざのある海女を探そうとするが、ステージでは明らかにならない。しかし、丸山は犯人がサダだと突き止める。

 

その頃、身に危険を感じた宮田はサダを誘って逃亡しようとする。そして五郎も亡き者にしようと画策する。離れ島にサダを連れ出した宮田はサダを追ってきた五郎と格闘になる。サダは宮田が捨てた短刀で宮田と差し違えて死んでしまう。丸山たちが駆けつけた時は全てが終わっていた。こうして映画は終わる。

 

シンプルなサスペンスドラマという展開で。海女である必要があるのかと思うが、犯人を追い詰める丸山のドラマは一級品の推理ドラマになっているのが面白い。たわいない映画ですが、娯楽映画とはこういうものと言わんばかりの作品でした。