「劇場版 モノノ怪 唐傘」
テレビアニメの劇場版ということなのでかなり迷ったが、見に行って正解だった。圧倒されるCGアニメを鑑賞したという感覚に浸ってしまう圧巻のアニメ映画だった。全てが芸術、アートの世界である。ストーリー展開がやや甘く、細かいカット割と目まぐるしく変化する映像が、物語を引き立てていないのは実に残念ですが、豪華絢爛たる絵を楽しめただけで十分元がとれる逸品でした。監督は中村健治。
大奥の入り口、女中としてやってきたアサとカメが恐る恐るその門を潜るところから映画は幕を開ける。傍に謎の薬売りが立っている。大奥に入ったアサとカメは、早速、大奥取締御年寄歌山の会う。歌山は二ヶ月前に中止になった餅轢きの儀式の準備に追われていた。本来、若君誕生の前に行う儀式だが、二ヶ月前に任されていた女中が突然いとまを出されたため誕生後に行われることになった。
アサは淡島らに気に入られ、わずか三日で餅轢きの儀式を任されるまでになる。一方カメは失敗ばかりで女中頭麦谷に預けられて仕込まれることになるが、麦谷はイジメに近い仕草でカメを追い詰める。カメはアサが唯一の頼りと慕い始める。薬売りは大奥に潜むモノノ怪を退治するべく通行手形を歌山からもらい大奥内部へ潜入する。アサは、北川というかつての奥女中と出会う。北川こそ二ヶ月前に行方をくらました女中だった。
薬売りは、大奥の中で、この世に現れんとするモノノ怪唐傘に対峙するが、唐傘は麦谷を亡き者にし、さらに淡島さえミイラのようにしてしまう。薬売りは女中たちがここに入る際に最初に捨てる大事なものに謎があると判断し、二ヶ月前失踪した北川の存在を知り、ついに唐傘との最終決戦に臨む。戦いの中、自ら命を断とうとするアサをカメが助け、薬売りは北川失踪の捜査をするために乗り込んだ三郎丸らと見事唐傘を撃退する。そして餅轢きの儀式は滞りなく終わり、カメは大奥を去る決意をし薬売りについて行き、アサはさらなる出世を目指す姿で映画は第二章に引き継がれ終わる。
和紙の紋様を背景にしたシンプルな絵作りと、色彩兼美な色鮮やかな背景、細かいカット編集と大胆なカメラワークに圧倒される作品ですが、ストーリーテリングがややおざなりになっているために全体の緩急のバランスが悪い。ゆえに、終盤につれてやや飽きが見えてくるのがとっても残念。それでも豪華なCG絵巻を楽しんだ満足感は半端なものではなく、一見の値打ち十分な一本だった。
「アツカマ氏とオヤカマ氏」
本当に軽いタッチのホームコメディで、芸達者な役者たちが、物語を噛み砕いてテンポよく演じていく様が心地よい一本でした。監督は千葉泰樹。
スクーター販売の会社に、野球選手として採用された後営業職を希望してやってきた渥美鎌太郎の場面から映画は幕を開ける。厚かましく好き放題に会社にやってきて課長の大宅鎌太郎を煙にまくかのようにあしらった後、持ち前の前向きさと陽気な性格で成績をどんどん上げていく。大宅の妻や娘とも親しくなり、さらに、成績の伸びない浦賀とペアを組んでも浦賀は翻弄されるばかり。
渥美はアツカマ氏というあだ名をつけられ、一方大宅氏はオヤカマ氏とあだ名をつけられている。それぞれ、会社や成績に悩みながらも、日々淡々と過ごす姿の中に、恋があり、夫婦喧嘩があり、会社勤めの悲哀が盛り込まれていく。そして、渥美は大宅の娘といい仲になり、浦賀は会社を辞めて行きつけの食堂に転職、社員たちは大宅のために大奮闘して会社の成績を伸ばして支店長をギャフンと言わせてしまい大宅の立場を応援するクライマックスから、何もかもハッピーエンドで締めくくって映画は終わる。
千葉泰樹ならではの軽快なテンポが、職人技のような役者たちの演技で、肩の凝らない心地よい娯楽映画に仕上がった感じの一本。面白かった。
「女体桟橋」
キレの良い演出でハイテンポに展開する娯楽アクション映画。たわいない映画なれど、これがエンタメ映画の基本かもしれない。なんの中身もないものの、単純にぼんやり見ていても楽しめる一本だった。監督は石井輝男。
夜の銀座の街の解説から、ピンクのカードが高級車に差し込まれ、それを手にする吉岡の姿から映画は幕を開ける。そのカードのクラブに行った吉岡は、コールガールを世話され、指定のホテルの部屋に行くと、紹介されたサリーという女は浴室で殺されていた。吉岡は空港へ向かうがそこで、コールガール組織の女に声をかけられる。
警察ではサリーの殺人事件の捜査会議が行われ、そこで吉岡が紹介される。吉岡は国際的なコールガール組織撲滅のために潜入捜査をしている警察官だった。そして彼は次に日本の組織に新しく来るボスルミの写真を見せられる。それは吉岡のかつての恋人だった。吉岡はルミと再会し、組織のアジトとして使われているクラブアリゾナの支配人黒川を紹介される。
そんな吉岡に、ジャーナリストの晴子が近づいてくる。ルミは同居人の照夫と親しくしていたが、ルミを恩人と思う照夫はルミが惚れている吉岡が晴子というジャーナリストと親しく話している姿から警官ではないかと忠告する。吉岡はルミと共謀して、コールガール組織の元締めトムソンを捕まえるために次の取引現場の時間と場所を黒川から巧みに聞き出す。
桟橋にやってきた吉岡とルミだが黒川は二人の正体を知っていた。一方ルミに頼まれて、照夫は晴子を通じて警察に取引場所を連絡させる。吉岡と黒川らは銃撃戦となるがその中でルミは死んでしまう。警察が駆けつけ、トムソンらは逮捕される。吉岡は大阪へ戻っていくが彼に晴子がついていって映画は終わる。
単純そのものの話だし、速水刑事が捜査する中で、恋人がコールガールだったことを知るエピソードは完全に蛇足感があるのは、脚本の雑さなのだけれど、大量生産時代の作品らしい荒削りもまた面白い一本でした。
「セクシー地帯」
普通におしゃれで面白かった。主人公二人のボケとツッコミ、オープニングのインパクトのいい入り具合、背後に流れる音楽の使い方や、クライマックスの空間シーンの面白さ、さりげなく出てくる池内淳子や、脇役の活かし方、などなど、大傑作ではないまでも、小品ながら佳作という感じのアクション映画だった。監督は石井輝男。
一人の女性が駆け抜けてきて男性とぶつかった後走り去る場面から映画は幕を開ける。ぶつかった女は真弓という女スリで、男は吉岡と言うサラリーマンだったが、追ってきた刑事が吉岡をスリの仲間と勘違いして逮捕してしまう。しかも、吉岡は森川美長に預かっていた書類を真弓にすられていた。
吉岡はあっさり釈放されるが、部長の書類を無くしたことで大阪転勤を言い渡される。吉岡には玲子という恋人がいたが、玲子は結婚資金を貯めるため、大手企業などにコールガールを派遣するクロッキークラブという組織に所属し、森川部長も客の一人だった。玲子は吉岡が大阪転勤を言われたことを知り、吉岡に、森川部長に直談判するように勧め、森川に裏から手を回し、手切金などを要求する。そしてクロッキークラブに行き、組織を辞めたいとボスの瀬川にいうが逆に殺されてしまう。
吉岡は森川部長に会えないまま玲子のアパートに行き、直後に玲子が殺され、吉岡が容疑者となってしまう。そんな頃、真弓はかつて自分を逮捕した須藤という刑事に付き纏われながらも次のターゲットを物色していた。ところが街を彷徨っていた吉岡は真弓と再会、すった書類を返すように要求する。バーバッカスで、真弓が吉岡からすった財布を返すと、そこにクロッキークラブの会員証があった。
真弓と吉岡はクロッキークラブを調べるべくクロッキークラブのプレートの貼ってある店を調べ始める。吉岡が森川から預かった会員証で女性を紹介してもらい、待ち合わせ場所で真弓とその女性に詰め寄りクロッキークラブの内容を聞き出す。その女性の代わりに男との待ち合わせ場所に行った真弓だが何も聞き出せないまま、東京へ戻りたまたまスリを働いた男に捕まってしまう。その男は瀬川だった。そしてクロッキークラブに拉致されて、クロッキークラブで働くことになる。
一方吉岡はバッカスへ行き、クラブの女秋子を誘い出す。そして玲子がクロッキークラブの会員だったことを知る。吉岡は客のふりをしてクロッキークラブに行き会員証を見せるが、それが森川部長のものだと瀬川たちは知っていて、吉岡は捕まり、真弓も、身代わりで客と会った男の金を盗んだことから、仲間だと見破られて拉致される。
真弓の機転で、殺されるのを深夜1時半にしてもらい、吉岡と二人きりで地下室に拉致された際、真弓が瀬川からすっていた爪切りナイフで脱出、地下室を抜けるが瀬川たちが追ってくる。真弓はクロッキークラブに拉致された際、窓から助けのメモを紙飛行機で飛ばしていて、それが子供の手に渡り、そこへ須藤が関わって明らかになり警察が駆けつけ、吉岡たちは助かる。二人は大阪へ向かう列車に乗るべく走り去って映画は終わる。
映画が陰湿にならずに、洒落たテンポで淡々と進んでいくキレのいい展開がとっても心地よく、低予算で雑な作りなのですが、単純に面白い。こういう映画、しっかり作り込めば傑作になる類の一本というレベルの佳作でした。