くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブルーピリオド」「赤羽骨子のボディガード」

「ブルーピリオド」

いい映画だった。シンプルな物語で、真っ直ぐに主人公の向かう姿を素直に捉えていく演出がいい。脇役を作り上げて主人公を浮き上がらせる映画的な演出を施さず、あくまで絵をモチーフに、それに向かう人物を描いたのが良かった。まるでキャンバスに描かれた絵画のような映画でした。監督は萩原健太郎

 

人付き合いも良く、成績も優秀な主人公矢口八虎の姿から映画は幕を開ける。しかし、矢口は何か虚しい不透明な感覚で日々を送っていた。そんな時、目の前を女装したユカちゃんこと鮎川が走り去る場面に遭遇する。彼=彼女は美術部の所属生だった。矢口は美術の授業で「私の好きな風景」という課題があり、たまたま美術室に忘れ物をとりに行って上級生の森まるの天使の絵を目にし、その美しさに魅了される。そして彼女の勧めもあり、美術の課題を描くことにし、夜遊びの後見ていた渋谷のブルーの景色を絵にして、何か自分の好きなものを見つけた気がする。

 

しかし、それほど裕福でもない矢口の家では進学するには国公立へ向かうしかない。そんな条件の美術系の大学となると東京芸大しかなかった。しかも東大以上に難関校で、今までろくに練習もしてこなかった自分にできるか不安だったが、美術の先生に「好きなことに時間を使うのが良い」と諭され、チャレンジすることを決意する。そして、母に内緒で、父に美大予備校に通わせてもらい、そこで出会う仲間達と芸大を目指す。

 

芸大を目指そうという人達の姿を見れば、自分より遥かにレベルの高い人らが普通に通っていた。それなら自分は努力しかないと、日々とにかく絵を描くことに全てをかけていく。かつての仲間にも応援され、一緒に芸大を目指す友達もでき、やがて受験の日が来る。もがきながら課題に取り組む矢口は、ついに二次試験も合格し、見事芸大に入学する。こうして映画は終わる。

 

トランスジェンダーのクラスメートの描き方も非常にさりげなく、妙に拘らない周辺の個性的な脇役の配置が心地よく、一方、主人公は真っ直ぐに絵を描き続けるという描写も素朴で良い。大傑作とは言わないけれど、とっても良い映画を見た気がしました。

 

「赤羽骨子のボディガード」

バカバカしい話なのですが、そこそこに脚本がいいのか、ストーリーのテンポがいいし、アクションシーンもそれなりにキレも良く、何も考えずに楽しめるエンタメとしては良くできた映画でした。とにかく出口夏希が可愛いし、土屋太鳳もラウールもいい味を出していて面白かった。監督は石川淳一

 

高校生の赤羽骨子が登校してくる場面から映画は始まる。そこへいかにもな黒ずくめの男がナイフで迫る。ところが途中で威吹荒邦に足を引っ掛けられてしまう。そして物語は三日前に遡る。威吹は尽宮正人という男に呼び出される。彼は国家安全保障局という国の闇組織のリーダーらしく、自分がそういう地位についたため娘の赤羽骨子が百億円の懸賞金をかけられて狙われているのだという。そして彼女のボディガードを依頼される。威吹の父と尽宮は同僚だったのだという。威吹の父は殉職していたが父を殺したのは谷田という男で今は殺し屋集団のリーダーらしかった。

 

ボディガードをするにあたり、赤羽骨子に気づかれてはいけないのだという。幼馴染でもある威吹荒邦はそれを引き受ける。ところが、威吹が赤羽骨子を守ろうとしているところへ冒頭の男が大勢の仲間を連れて現れ、いきなり威吹はピンチになる。しかし、そこへ威吹のクラスのメンバーが駆けつける。どうやら赤羽骨子のクラスメート全員が尽宮に雇われたプロのボディガードなのだという。

 

そして、命を狙われる赤羽骨子をボディガード達が守る日々が始まる。一方赤羽骨子は近くダンスコンクールへの出場が迫っていて練習の日々だった。尽宮正人と仲が悪い息子の、正親も赤羽殺戮に加わり大乱戦となる。ある時、水族館へ威吹と赤羽がデートに行くが、そこへ、谷田が率いた殺し屋軍団と正親が襲いかかってくる。そして、赤羽のボディガード達が締め出され、あわやピンチかと思えたが、威吹が、正親が口に含んでいる爆弾のスイッチをキスで奪い難を逃れる。実は正親は息子ではなく娘だったことから正親はすっかり威吹に心を奪われてしまう。

 

そんな頃、クラスのボディガードのメンバーに裏切り者がいることがわかる。正親は威吹の側につき、威吹の家で正親を匿っていたが、威吹の気持ちがどうしても自分に変わらないと知った正親は、裏切り者がわかる動画を威吹に見せてその場をさる。裏切り者はボディガードのメンバーの司令塔澄彦だった。正体がバレた澄彦は谷田の側についてしまう。澄彦が去り司令塔をなくしたボディガード達は、任務終了と判断して赤羽骨子の元から去って行く。

 

やがて、ダンスコンクールの日が近づく。威吹は赤羽のダンスのペアである棘屋を説得して赤羽を守るべく準備するが、他のボディガード達もクラスメートとして戻ってくる。そしてダンスコンクール当日、尽宮も現れ、ステージが始まる。襲ってくる谷田達を迎え撃つ威吹らだが、そこへ澄彦らも参戦してくる。全て敵を騙す作戦だった。そして正親も加わり、谷田らを威吹達が撃退する。赤羽骨子は見事ダンスコンクールに優勝し、尽宮正人も会場を去るが、追いかけてきた赤羽骨子に礼を言われる。父親と名乗れないまま尽宮正人は去っていき、赤羽骨子が再度威吹荒邦をデートに誘って映画は終わる。

 

単純そのもののストーリーゆえに、さりげないギャグや見せ場が楽しい。エンタメ映画の王道のような一本でした。