「マッドマックス2」
初公開以来約40年ぶりの再見。初めてみた時は、前作のイメージが払拭できず、それほど印象になかったが、今回見直して、相当な傑作だったと再認識した。脇に出てくる登場人物が一気に多彩になるし、ストーリー展開の組み立ても抜群に面白い。緩急の効いた映像作りがラストまで全く飽きさせずに引き込んでくれます。主人公の寡黙な存在感も引き立っているし、エンタメの白眉だった。監督はジョージ・ミラー。
近未来、大国の戦争で石油が枯渇し、人々が石油を求めて暴徒と化していく姿が前作の映像も交えてスタンダード画面で描かれて、本編のワイド画面に変わる。マックスはインターセプターをかってならず者のウェッジとチェイスを重ねている。そしてタンクローリーを発見し、ガソリンを手に入れる。そんなマックスを冷たく見つめるウェッジ。マックスはその場をさり、ジャイロコプターを発見し、ガソリンを抜こうとして、地面から現れた男に銃を突きつけられる。ところが結局マックスが反撃したが、男は命を助けてくれたら、ガソリンを精製して電気も起こしている場所があるから案内するという。
マックスとその男が丘の上に辿り着きそのアジトを見下ろすと、そこでは大勢の人々がガソリンを守って生活していた。しかし、ヒューマンガスらならず者がその砦を狙って集まってきていた。砦では石油タンクにガソリンを備蓄し、脱出のために砦の三人がタンクローリーを探しに出たが、ヒューマンガスに捕まっていた。それを見つけたマックスは、殺されかけた一人の男を土産にして砦に乗り込む。しかし、助けた男は間も無く死に、マックスは約束のガソリンを手に入れられないことになる。
マックスは代わりに、タンクローリーを持ち帰ってやるからという条件で砦のリーダーパッパガーロと契約する。マックスはブーメランを操る少年に助けられて、タンクローリーを手に入れるべく砦を出る。ジャイロコプターのところまで行き、ジャイロコプターでタンクローリーのところへ行ったマックスは、ヒューマンガスらが襲ってくるのをかいくぐり砦に戻る。
パッパガーロらは翌日タンクローリーでこの砦を脱出することにし、マックスは約束のガソリンをもらってインターセプターで出ていくが、途中、ウェッジらに襲われ、インターセプターは破壊されてしまう。瀕死のマックスはジャイロコプターの男に助けられ砦に戻る。マックスはタンクローリーを運転してやるという条件で砦の仲間と脱出することにする。
タンクローリーを運転するマックスにヒューマンガスらが襲いかかる。そしてハイスピードなカーチェイスの末、結局タンクローリーは大破、中から流れ出たのは砂だけだった。全てはパッパガーロの作戦だった。ヒューマンガスらは諦めてその場を離れ、砦の人々はガソリンんを積んだバスに乗って夢の大地を目指す。脱出の際のバトルの中で死んだパッパガーロに代わりジャイロコプターの男がリーダーとなり、はるか未来、ブーメランの少年が大人になって北の部族の長になったというテロップとマックスは1人荒野に去ったというナレーションで映画は終わる。
ジャイロコプターやブーメランを操る少年ら多彩なキャラクターと、無骨な車の造形が近未来の想像力を掻き立てるメカニックの数々、前半のバイオレンスシーンからクライマックスのハイスピードなカーチェイスの連続になる緩急の効いたストーリー構成も見事で、ジョージ・ミラーの才能を見せつけられる傑作だった。
「ラストマイル」
二転三転四転、といつまで続くのかというクライマックスは面白いのだけれど、映画ではない気がしました。テレビドラマ「アンナチュラル」や「MIU404」の登場人物を散りばめたせいか、まるで連続ドラマの毎週の様な脚本になり、目先の面白さを追ったようにしか見えない。それと、癖のある役者を大量に集めた割にはそれを活かしきれず、それぞれのエピソードの面白さを狙ったのか、真相のミスリードを狙ったかのかわからず、目先があちこちに入ってしまって、かえって作品が散漫になった。満島ひかりが一人で牽引していくにで、そこそこ楽しめるが、岡田将生はなんの役割も果たさないし、何か映画作りの根本を誤っているように見えた作品でした。監督は塚原あゆ子。
羊宅急便のトラックと、佐野親子の個人配送の運送トラックが走る場面から映画は幕を開ける。そして宅急便が一軒のアパートに荷物を届けた直後、そに部屋で爆発が起こる。世界規模のショッピングサイトの関東配送センターに新しくセンター長として舟渡エレナが福岡から赴任してくる。時はブラックフライデーの大忙しの日、派遣社員やアルバイトが集まってきている。そんな時に起こった爆発事件、日本のチーフ五十嵐が舟渡へ指示を下す。舟渡は、事態収拾のために手段を選ばず的確にしかも、企業利益優先であるかのように顧客優先という詭弁で業務を進め、警察の介入さえ見事に抵抗していく。そんな舟渡にチームマネージャーの梨本は疑問を感じる。
やがて、次の爆発事件が起こり、さらに偽のショッピングサイトが見つかり、そこで12個に爆弾が準備されていることが判明し、舟渡や警察はその品物を特定するべく、配送センターのすべての商品を確認チェックするという手段に出る。下請け配送業者羊宅急便の責任者八木、そして個人の配送業者佐野らにも指示が下り、配送はパニック状態となり、遅延、クレームに奔走されていく。そんな中、一人の元社員山﨑の姿が見え始める。彼は配送センターで自殺未遂を起こし、昏睡状態で四年間眠っていた。
一方、かつてホワイトハッカーの仕事もしていた梨本は舟渡が福岡から来た社員ではないこと、さらに経歴さえ削除されているのを発見してしまう。五十嵐もまた舟渡の素性に疑問を抱き始める。問い詰める梨本に船渡は、自分はアメリカ本社から派遣されたのだと告白する。山﨑の恋人が、山﨑が亡くなった時に自分のせいにされ、ショッピングサイトを訴えようとしたが埒があかず、本社のあるアメリカに来た際に舟渡が会ったのだという。そしてロッカーに残した山﨑の落書きに意味があると話す。それはベルトコンベヤーの毎秒のスピードがゼロに向かうという→のある落書きだった。
そんな頃、警察は爆弾を作った人物、そしてそれを依頼した女性を見極めていき、爆弾を作った男から、作ったのは12個だが1個は不具合があったと聞く。爆弾を品物に入れるには、配送センターの職員なら行いうることとその方法を見抜いた舟渡とらは、山﨑の恋人が勤務していたことを突き止め、警察は指名手配を開始する。同じ頃、爆弾事件で亡くなった人物の解剖が行われていたが、最初の爆弾で亡くなったのが中年男性と思われた遺体が実は若い女性だと判明、そして歯型などから山﨑の恋人だとわかる。彼女は自ら爆弾で爆死したのだ。警察は爆弾が仕掛けられたらしい品物11個を見つけ出す。そして全て見つけたと判断する。
ところが、不具合な爆弾の1個を山﨑の恋人が自死の為に使ったと思った舟渡は、さらに1個爆弾が残っていると判断、しかも、爆弾の仕組みから薬品が溶け出しているためにわずかなショックで爆発するようになっているということがわかる。舟渡たちは、配達前の品物は全て調べたから、配達してまだ開けていないものだと特定する。それは佐野の配送業者が小さな子供に渡した母への誕生日プレゼントだった。配送業者がその家に駆けつけ、間一髪で爆弾は洗濯機の中で爆発させる。
何もかも山﨑が、ブラックフライデーが怖くなるほどの激務の末に自殺したことが原因と考えた舟渡は、梨本に頼んで配送システムを止めてしまい、さらに羊宅急便でも配送ストをして、五十嵐含めショッピングサイト本部に圧力をかける。結局、配送料の上乗せを本部も了解、五十嵐は関東配送センターに戻って、梨本は新しいセンター長となり、舟渡は去って映画は幕を閉じる。
とにかく、二つのドラマを混ぜ合わせた上、てんこ盛りのエピソードを展開させ、さらにあちこちに主役級のクセのある役者をそのまま起用、しかもそれぞれをうまく使いこなせずに全体がはちゃめちゃになって二転三転を繰り返す仕上がりになっている。これは面白いのではなく、自己満足に作られた物語の映画化だと思う。もっとざっくり削って、二時間余りにまとめた構成を練ればもっと面白くなると思う映画だった。そもそも映画になっていない気がした。
「フォールガイ」
ドタバタのアクションコメディですが、どこかで見たような映画のスタントシーンを散りばめ、単純な話でクライマックスの見せ場に繋ぐ作りは、エンタメの肝を心得た演出で、軽快な曲のリズムも相まって楽しい映画だった。こういう肩の凝らない、それでいて派手な見せ場連続は気楽でいいですね。監督はデビッド・リーチ。
人気俳優トム・ライダー専属のスタントマンコルト・シーバスが華麗なスタントシーンを演じている場面から映画は幕を開ける。元カノのジョディはカメラオペレーターだが将来監督になりたいと目指している。この日も高所からの落下シーンのスタントを行うが、事故が起こってコルトは大怪我をしてしまう。そして18ヶ月が経つ。
腰を痛めて、バイトまがいの仕事をしていたコルトに、映画プロデューサーのゲイルから、ジョディの希望でスタントマンとしてきて欲しいという連絡をもらう。コルトが撮影現場に行き、スタントをこなすが、それを見たジョディは怪訝な顔をする。自分は呼んだ覚えがないという。ジョディは監督に昇進し、SF大作の撮影をしていた。その後もコルトはスタントシーンを続けるが、ある日、ゲイルから、トムが実は行方不明なのだと打ち明けられる。そしてトムと周知のコルトに探しに行って欲しいと頼む。
コルトは、ジョディとのカラオケの約束を反故にしてトムのマンションへ向かう。そしてベランダから中に入ったが、浴室に氷漬けの同業のスタントマンヘンリーの死体を見つける。コルトは警察に連絡して現場に戻るが、死体は無くなっていた。しかも、コルトがヘンリーと悪ふざけをして殺してしまった動画が拡散されてしまう。コルトはトムの携帯の中に本来の動画があると判断する。真相はトムがヘンリーを殺し、それをコルトのせいにしようとしていた。
コルトはアクション監督のダンやスタッフのアルマらと、トムのスマホを探し手に入れるが、ゲイルの仲間が襲いかかってくる。しかしコルトラは反撃するがかわしきれず捕まってしまう。ガソリンをかけられあわや焼き殺されんとするのをすんでのところで反撃しボートで脱出、川の上で大爆発して死んだように見せかける。
コルト死亡のニュースの直後、トムが復帰してくる。コルトはジョディの部屋にやってきて全てを話し、トムを罠にかけて白状させようと計画、撮影のスタントシーンにトムを無理やり加わらせて、やってきたコルトと一緒に派手なカースタントをし、真実をトムに自白させて録音する。
しかしその録音データをゲイルが取り上げてヘリコプターで逃げようとするが、コルトが飛び乗り、録音データを奪い返す。マイアミバイスの格好の警官たちが集まり、トムは逃げるが、仕掛けの爆薬で爆死する。別の役者で映画は完成し、ジョディとコルトは仲を取り戻しハッピーエンドで映画は終わる。
全編賑やかな見せ場の連続で、クライマックスの派手なシーンとそれまでの緩急もよく組み合わせられているので面白い。決して出来のいい映画ではないですが、エンターテイメントとしてそこそこの映画に仕上がっていたと思います。