くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「アニエスV.によるジェーンB.」(デジタルレストア版)「カンフーマスター!」(デジタルレストア版)「美食家ダリのレストラン」

「アニエスV.によるジェーンB.」

美しい映像と幻想的な演出、時に空想を交え、さまざまな姿のジェーン・バーキンを見せていく。ドキュメンタリーでも私生活映画でもなく、映像の散歩のような展開に終始魅了されてしまう詩的な映画だった。監督はアニエス・ヴァルダ

 

絵画のようなカット、中央にジェーン・バーキンがいて左右に次女らしい人物が配置される。四十歳の誕生日を迎えたジェーン・バーキンアニエス・ヴァルダがさりげないインタビューを交えて映画は幕を開ける。特に物語はなく、アニエス・ヴァルダジェーン・バーキンに寄せるつきることのないイメージを、時にアメリカン喜劇の役者として、時に西部劇のヒロインとして、時にジャンヌ・ダルクとして、そのほか様々な役を演じるジェーン・バーキンを描き続けることで、アニエス・ヴァルダジェーン・バーキンへのイメージを具体化し、見ている私たちを魅了していく。

 

鏡やガラスを多用した美しい映像や、カモメを手にしてみたり、ロバが現れたりと、頭の中の想像の世界が映像に昇華していく。そして、冒頭の場面となり、ジェーン・バーキンのバースデーを祝う人たちがプレゼントと祝福を届けに来て映画は終わっていく。

 

映像センスの素晴らしさもさることながら、次第にジェーン・バーキンの見えざる魅力が何気なく伝わってくるから凄い。とっても見応えのある作品でした。

 

「カンフーマスター!」

面白い映画ですが、それほど出来のいい作品ではなかった。ビデオゲームエイズを揶揄しながら展開する禁断の愛を、ややコミカルにさりげない空気感で描いていく軽いタッチなのですが、映像的にも普通だし、際立つ演出も見られない。でも、どこかオリジナリティの見える映画ではありました。監督はアニエス・ヴァルダ

 

空手着を着た少年がゲームのキャラクター風に街を歩いている場面から映画は幕を開ける。そしてタイトルの後、マリー・ジェーンの家でのホームパーティ、主催は娘のルシーで、学校の友達やらが集まって騒いでいる。ルシーの妹ルーは熱を出して寝ているので母のマリー・ジェーンはルシーたちを叱咤する。そのパーティで泥酔いしてしまったルシーの友達のジュリアンを介抱したマリー・ジェーンは、ジュリアンに恋愛感情を抱いてしまう。ジュリアンはビデオゲームのカンフーマスターが大好きだった。

 

ジュリアンも、大人ぶって背伸びをして、年上の女性と恋をするという事に酔ってしまったかのように、マリー・ジェーンに男としての態度で接してくる。叔父が経営する北ホテルにマリー・ジェーンを誘ったりするが、マリー・ジェーンは、部屋に行く勇気はなく、逆にジュリアンを叱咤してしまう。

 

マリー・ジェーンとルシー、ルーはジュリアンと一緒に実家のイギリスに遊びに行くが、そこで、マリー・ジェーンとジュリアンがキスしているのをルシーが目撃してしまう。マリー・ジェーンの母は、娘のためにルシーを預かり、離れ島に渡るように勧める。マリー・ジェーンは幼いルーだけを連れてジュリアンと島に渡りしばらく過ごす。

 

戻ったマリー・ジェーンだが、ルシーは別居している父のもとに転居し、ジュリアンも転校してしまう。ルーも家を離れ、マリー・ジェーンはひとりぼっちになる。やがて秋が来る。この日、ルシーがマリー・ジェーンのところにやって来た。一方ジュリアンは、かねてからはまっているカンフーマスターのゲームをし、ついに恋人救出というラストまで行き着く。それを、電話でマリー・ジェーンに知らせるべく伝言をゲームセンターの男に頼むが、男が電話をするとルーが出たので切ってしまう。ジュリアンは友達に、年上の女性と恋をしたと大人ぶって話し、一方的に恋心を抱かれたと自慢するアップで映画は終わる。

 

冒頭のショットこそ面白いが、ゲームのシーンを繰り返しながら、背伸びしようとするジュリアンの姿と、20歳近く歳の離れた子供みたいな男性に恋心を持ってしまうマリー・ジェーンの姿がどうもしっくりと絡んでいかないので、どこかギクシャクしたリズムに作品が仕上がっている気がしました、アニエス・ヴァルダの作品の中ではそれほど出来のいい映画に見えませんでした。

 

「美食家のレストラン」

物語の構成が良くなくて、方向性がまとまっていないために、ヒューマンドラマなのか、時代性を糾弾する話なのかがどっちつかずにしか見えない映画だった。瞬間瞬間はいい出来栄えなのに、どれもこれもに力が入りすぎてまとまらなかったのはちょっと残念。まあ悪い映画ではないけれど、普通の作品だった。監督はダビッド・プジョル

 

1974年フランコ独裁政権末期のスペイン、アイワイプで場面が出ると、若者らが火炎瓶を投げて何やら抵抗している。そこへ警官が駆けつけ取り押さえる場面から映画は幕を開ける。バルセロナの名門料理店の厨房、この日も要人たちを客に迎えて活気付いていた。しかし、客の中に料理を灰皿がわりにした政府高官がいたらしく料理長が激怒し、騒ぎを起こしてしまう。そのとばっちりで厨房長のフェルナンドと弟アルベルトはレストランを追われてしまう。

 

アルベルトは友人フランソワの伝手で海辺の街カダケスにやってくる。サルバドール・ダリが住む街で、この日も、ダリを崇拝するレストラン「シュルレアル」を営むジュールズはダリのパフォーマンスをカメラに収めていた。ジュールズに紹介されたフェルナンドとアルベルトだが、フェルナンドらが一流店のシェフだと知らないジュールズは彼らをとりあえず皿洗いに雇う。このレストランにはジャンというシェフがいたが腕は下の下だった。ジュールズの娘ロラは海洋学者で、次第にフェルナンドらに気持ちが動いていく。

 

ダリを迎えるのを目標に日々レストランを営んでいたジュールズだが、なかなかうまくいかず、ダリの奥さんのガラ夫人に近づいたりするうちに運転手のアルフォンスと親しくなる。やがてジャンがレストランをやめてしまうが、フェルナンドの腕を知るフランソワがジュールズを説き伏せ、アルベルトともども「シュルレアル」を任されるようになる。

 

フェルナンドはロラと親しくなるが、不器用なフェルナンドは気持ちを伝えられなかった。アルベルトも地元の女性と恋に落ちる。地元警察の中尉は、執拗に地元の人々に強行的な態度をとる。フェルナンドもアルベルトもバルセロナで役場放火の事件を起こしていたこともあり気が気でなかった。

 

「シュルレアル」の料理の評判は日に日に上がり、ガラ夫人から、ダリが今夜レストランに行くと言われるが、結局ダリは来ず、ジュールズはヤケ酒を飲む。しかし、ダリの邸宅のそばで飲んだくれて眠ってしまったジュールズらだが目が覚めるとダリに口髭を描かれていた。

 

そんな時、アルベルトが地元警察に捕まってしまう。ジュールズはアルフォンスの力を借りてダリの車を巧みに使って、ダリの希望であるかに見せかけてアルベルトらを解放させる。しかし、その帰り道、ロラになかなか気持ちを伝えられないフェルナンドにフランソワはロラと結婚する事にしたと告げ、パーティの料理を依頼する。

 

結婚式のパーティで、ロラは耐えられず、厨房のフェルナンドに駆け寄り体を任せる。それをフランソワの友人が見てフランソワに告げ、フランソワら地元民が大暴れして、パーティは台無しになる。ジュールズは、レストランはもうやめると言い出すが、そこにアルフォンスから、ダリが食事に来ると連絡が入る。ジュールズは壊れたままのレストランでダリを迎え、フェルナンドらは極上の料理を振る舞って、ダリの後ろ姿で映画は終わる。

 

あれもこれもと詰め込んだエピソードが、物語を散漫なものにしてしまった感じで、どれかに的を絞って描けばいい映画になった気もする作品でした。