くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サユリ」「エア・ロック 海底緊急避難所」

「サユリ」

カルト映画的な怪作だった。前半のいかにも残忍なホラーテイストが、後半、爆笑コメディに変わっていく爽快感がたまらなく楽しい。物語は悲惨な展開なのに、見終わって悲壮感が全くないという奇妙ながらも心地よい映画だった。監督は白石晃士

 

一人の母親が二階へ食事を運んでいく。ドアの向こうにいるサユリという娘に声をかけるが、なかでは引きこもって醜く太った女性がゆっくり立ち上がりバールを持ってドアを開けて殴りかかって来て映画は幕を開ける。そして十年、いかにも幸福そうな家族と祖父母が一軒の家に引っ越して来る。念願のマイホームを手に入れた神木家の主人照雄は、三人の子供たちそれぞれに部屋を与え、痴呆気味の母春枝と高齢な父章造も同居できる事で、幸せを満喫していた。

 

しかし、不気味な影が家の中に見え隠れする。長女径子の部屋でテレビが突然つき、夜中にトイレに行った次男俊の前に径子が現れて、いきなり俊の頭を柱に打ち付け自分も柱に頭を打ちつける。長男の則雄は学校で一人の女性住田に声をかけられる。彼女は、則雄のそばに邪悪な霊が見えるから気をつけるようにと忠告する。

 

ある夜、径子の異変に部屋に入った照雄が心臓麻痺で死んでしまう。さらに章造も庭に穴を掘り始めた直後死んでしまう。不気味な出来事はその後も続き、春枝は何か見えるかのように一点を見つめることがしばしばあった。ある夜、牛乳を飲みに階下に降りた俊は、径子の影を見たと思って階段を登り、突然突き飛ばされる。物音に気がついた則雄が部屋を出て来ると、俊の声がし、階下に降りた途端三階から駿が落ちて来る。さらにバールを持って径子が則雄に襲いかかって来る。そして、包丁を自らの首に刺して死んでしまう。さらに、狂ったように母正子も自室でコードを首に巻いて自殺してしまう。

 

ここに及んで、認知症だと思われていた春枝が正気を取り戻し、則雄に発破をかけて、亡霊に立ち向かうように鼓舞する。春枝は元太極拳の師範だった。則雄は春枝に促されるままに前向きに心を持ち、体を鍛え、太極拳も習うにつれて亡霊の姿も少なくなっていく。ある日、夢で庭を掘るように言われたと春枝は庭を掘り返すと、白骨と名札が出て来た。そこには九条サユリと名が書いてあり、どうやらこの家の前の家族が娘サユリを殺して庭に埋め、それが悪霊となったことがわかる。

 

春枝は極秘に調査して、ある夜則雄を残して何処かへ出かける。深夜、一人過ごす則雄の前にサユリが襲いかかってくる。つい弱気が出てしまい、付け入ってくるサユリ、そこへ住田が駆け込んでくる。則雄はなんとかサユリをやり過ごしたかに見えたが、恐怖に怯える住田がサユリに連れ去られてしまう。そこへ春枝が帰ってくる。春枝はこの家の前の住人九条家の転居先へ行き、九条家の両親と娘を拉致して戻って来たのだ。

 

家に九条家の家族を連れ込んだ春枝は、彼らに復讐するようにとサユリを呼び出す。そこへ可憐な美少女が現れる。サユリの幼い頃の姿だった。子供の頃から美少女だったサユリは父に可愛がられ、性的虐待を繰り返されるようになっていた。母も妹も助けてくれず、サユリは自己防衛のためにお菓子を食べ引きこもって醜い姿になることで父を遠ざけようとした。そして冒頭のシーンとなり、バールを持って暴れるサユリを両親や妹が押さえ込んで殺し、庭に埋めたのだった。

 

春枝に促されるままにサユリは再び醜い悪霊と化し、九条家の父と妹を殺し、母の目をつぶす。毎日食事を運んでくれる母は殺せなかった。春枝は住田を返すようにサユリに訴えるが、化け物になったサユリはイソギンチャクの化け物のような触手を則雄たちに向けてくる。春枝も一時は劣勢となったが、則雄に、住田が好きならその思いでたち迎えと鼓舞し、則雄は満身の力でサユリに向かい住田を救い出す。全てが終わったサユリは、やがて神木家の霊と一緒に消えていく。

 

九条家の死体は、生き残った母の証言で、ただの心臓麻痺とされ、春枝は元のボケ老人に戻り則雄と住田に付き添われていた。そして、突然立ち上がった春枝は、これからも困ったら自分を呼ぶようにと宣言してまた車椅子に戻って映画は終わる。

 

春枝を演じた根岸季衣の怪演に圧倒される作品で、度肝を抜くストーリー展開も面白いが、必要以上に陰湿にならないのが良かった。面白いカルトムービーでした。

 

「エア・ロック 海底緊急避難所」

典型的な低予算B級パニック映画で、少人数の登場人物とたわいない設定、あっさりしたラスト、お気楽に作った感満載の映画だった。監督はクラウディア・ファエ。

 

いかにもな水中シーンが繰り返され、突然女性が迫って来て目を覚ます男のカットから映画は幕を開ける。メキシコのリゾート地サボへ向かう州知事の娘エヴァと彼氏のジェド、親友のカイルらが空港で待ち合わせている。祖父母と三人でサボへ出かける10歳の少女ローザらも飛行機に乗り込み、やがて離陸。ところが程なくしてエンジンが鳥を吸い込み、直後炎上して、その破片が機体に穴をあけ、乗客が外に吸い出される。ローザの祖父もその時機外へ飛び出す。やがて飛行機は水上に墜落、そのまま海中に沈んでしまう。

 

機体が斜めに没したため、わずかに残ったエアロックにエヴァ、ジェド、カイル、そしてローザとその祖母、客室乗務員のダニーロエヴァボディガードブランドンらだけが生き残る。しかし、ブランドンは水没した客席から補助酸素をとりに行った際サメに襲われ死んでしまう。エヴァら生き残った数名だけで救助を待つことにするが、水中にはサメがいて迂闊に動けず、足を滑らせたジェドもサメに足を食いちぎられまもなくして亡くなる。救助に来たダイバーも外でサメにやられる。

 

機体が次第に深みに沈む中、エヴァらは決死の脱出を計画、死んだダイバーの酸素ボンベを頼りに、泡に弱いサメの弱点を利用して水上へ出ることにする。ローザの祖母は足手纏いだからと残り、後のメンバーが決死の脱出劇、そしてエヴァ、ローザ、ダニーロだけが水上に出て、救助のヘリに救出されて映画は終わる。

 

かなり好都合に展開するストーリーはまさにB級映画という仕上がり。なんの面白さもない一本だった。