「花嫁はあまりにも美しい」
ほんのり楽しいラブコメディというおしゃれな映画だった。テンポがいいし、決して良くできていないのですが、どんどん引き込まれるのは脇役がいいのでしょうか。クライマックスが少々くどいので、ここを鮮やかに締めくくれば傑作になった気がします。でも面白かった。監督はピエール・ガスパール=ユイ。
結婚式の場面、カトリーヌとミシェルが教会を出てきたところへ車でジュディットが駆けつけ、夫と離婚できたとミシェルに抱きつき、それを見たカトリーヌが気を失って、物語は二年前に遡る。恋人とのデートに向かうカトリーヌが自転車で走っている。カフェで、雑誌編集者のジュディットにみそめられ、ジュディットの恋人で雑誌編集を一緒にしているミシェルにも見込まれてモデルをしないかと誘われる。
カトリーヌは、デデという恋人とのデートを反故にしてジュディットとモデルになるべく走り去る。そして、レッスンを繰り返した末、人気雑誌の表紙になるカトリーヌ。名前はシュシュと変えて、みるみる人気になる。ジュディットは次の企画に、シュシュが結婚することにしてその場面を写真に収めていくことを考える。相手は俳優のパトリスだった。最初は乗り気でなかったパトリスだが、シュシュの魅力に惹かれて仕事を承諾、二人はカップルとして雑誌を飾りさらに擬似結婚の計画が進む。
シュシュは割り切っていたが、シュシュにすっかり惚れてしまったパトリスは、結婚式の前夜に愛を告白、返事を躊躇したシュシュにショックを受けて失踪してしまう。実はカトリーヌはミシェルに一目惚れし、ずっと恋焦がれていた。結婚式当日パトリスは行方不明になり、ミシェルが代役でシュシュの相手の新郎になって写真撮影が始まる。
その頃、ジュディットは、前夫ジャスパーと離婚の手続きが済んで、それを恋人のミシェルに告げるべく車を飛ばしていた。ところが踏切でバイクに乗ったパトリスと遭遇し、ことの次第を知って結婚式場へ引き返す。そして冒頭の場面、シュシュが目覚めるが、そこにいたパトリスに昨夜の返事を快諾するが、パトリスは、シュシュが愛しているにはミシェルだからと、正直に愛を告白するようにに勧める。
シュシュはミシェルの部屋に行き、愛を告白するが、ミシェルは煮え切らない。シュシュを愛しているのに、気持ちを出せないまま、シュシュは困ってしまう。そしてシュシュは他の男性に愛を求めようとするがうまくいかない。この部分がちょっとくどい。その頃ミシェルはジュディットの部屋に行き、はっきり、愛していないと告白する。シュシュは一人外に出て森を彷徨うが追いかけてきたミシェルに抱き止められようやくお互いの気持ちが一つになる。そして結婚式。ジュディットが用意した新婚旅行追跡企画を無視して、ミッシェルとシュシュが自身の車で新婚旅行に出かけて映画は終わる。
軽快なテンポでコミカルに進む、しかもブリジット・バルドーの魅力満載で、とってもコケティッシュに可愛いからそれだけで楽しめてしまう一本だった。
「気分を出してもう一度」
四十数年ぶりくらいの再見。オシャレミステリーという雰囲気の軽快なサスペンス。素人探偵の主人公が夫の無実を晴らすべく大奮闘する様が、時にチグハグに、時に的を射た展開を繰り返しながらクライマックスへ流れる様は楽しいの一言に尽きる作品だった。監督はミッシェル・ポワロン。
主人公ヴィルジニーは、父が突然歯痛に苦しんだことから、たまたま見つけた歯医者に電話をかけている場面から映画は幕を開ける。電話を受けた歯医者エルヴェは友達とカードの真っ最中だが、ヴィルジニーと父は強引に診療所へやってくる。エルヴェは治療にかかるが、それよりもヴィルジニーの美貌に心奪われ、恋に落ちてしまう。そして、あれよあれよと二人は結婚するが父は反対する。
ある日、エルヴェとヴィルジニーは大喧嘩をし、ヴィルジニーは出て行ってしまう。むしゃくしゃするエルヴェは一人ナイトクラブへ行き、そこでダンス教師のアニタと出会う。アニタに誘われるままに彼女の家に行き、抱き合おうとしたが、エルヴェは我に帰りその場を後にする。ところが、アニタは、仲間のレオンに写真を撮らせていた。深夜ヴィルジニーは戻ってきてエルヴェと仲直りする。
後日、エルヴェの診療所にアニタがやってきて、先日の写真で脅してくる。エルヴェはアニタのスクールに行き散々悪態をついて帰ってくるが、後に再度ダンススクールへ赴く。夫の行動が怪しいと思ったヴィルジニーが後をつけてダンススクールに行くが、エルヴェがアニタの部屋に行くと、そこにはアニタが銃で撃たれて殺されていた。それをヴィルジニーも目撃し、エルヴェを連れてその場を逃げる。ダンススクールの一階のバーテンがその様子を目撃、警察に連絡して刑事がやってくる。
エルヴェが容疑者として疑われているのを知ったヴィルジニーは、夫の無実を晴らすために捜査を始める。まずダンススクールの臨時講師に入ったヴィルジニーは、アニタが天井の通風口から撃たれたのではないかと疑い調べるが、刑事の説明で、至近距離から撃たれたと言われ、推理を改める。ダンススクールの一階に捜査本部が置かれ、刑事は関係者を調べていく。そんな中、刑事の部屋に忍び込んだヴィルジニーは、密告の手紙を発見、その名前に連絡をして待ち合わせるも現れず、単身、その人物の住まいへ行くが年老いた女中が出迎え、その男の父はすでに亡くなり、息子が大金を相続したのだという。
ヴィルジニーは、ダニエルがその人物ではないかと彼が出ているゲイバーに行くが、ダニエルは自分ではないという。ところが、再度、女中のところへ行くと、そこに、密告された男の息子という人物がいた。彼は父から大金を相続したのだという。父の愛人がアニタだったというのだ。そこにダニエルから電話が入る。実はダニエルは密告された男と共謀してアニタを殺した犯人で、それを突き止めた警察はダニエルを捕まえ、真犯人に連絡をさせたのだ。
真犯人の部屋でダニエルとの受け答えを不審に思ったヴィルジニーは、その男を殴って気絶させる。そこへ警察が踏み込んできて、一件落着、夫の無実も証明された。やがて、ヴィルジニーとエルヴェ、ヴィルジニーの父らは普通の生活に戻り映画は幕を閉じる。
あれよあれよと展開するミステリーで、その流れはかなり雑なのですが、ブリジット・バルドーの魅力が作品を牽引していきます。殺人事件のお話なのに、堅苦しさがほとんどなく、洒落た軽いタッチのラブコメのような物語は、ある意味この時代の映画という色合いもあるものの、とにかく楽しめるエンターテイメント作品でした。
「孤独な楽園」
映像リズムのセンスのいい映画というのは見ていて心地よい。この作品もそんな一本でした。海の上、川の上から陸を捉えるカメラワークが実に流麗。束縛される日常の息苦しさから、徐々に解放されてきて、ラストは何某かの希望へ向かって旅立つ爽快感が映画を包み込んでいく。こういう作りの映画は見終わって、心が洗われる感じがします。いい映画だった。監督は片嶋一貴。
海のそばを走る列車の中、一人のソバージュの女性が乗っている。場面が変わり、紡績工場で働く須佐あやめの姿、カットが変わり作家で、スランプで苦しむ津島耀の姿。この二人をまず細かいカットで交互に描いていく。あやめは叔母と一緒に暮らしている。母はあやめが幼い頃家を出たらしく、それが不倫の結果かどうかはわからない。この地はキリスト教徒の島らしく、あやめの父はあやめを教会へ連れていくのが日課だった。すでに父も亡く、どこか異常に束縛する叔母と一緒にあやめは暮らしていた。一方津島は、スランプ克服のためにこの島に移ってきたが、船に乗ると体が震え、東京へ戻ることができなくなっていた。
ある日、あやめの同僚から、ラブレターを書いて欲しいと頼まれる。あやめは渋々ラブレターを書いて手渡す。その頃、津島は一通のメールの書き出しに目が止まっていた。そしてそのメールを開き、文章を読んで、自身の連載のヒントを得る。しかし、そのメールは明らかに悪質サイトへ誘導する迷惑メールだった。あやめは、会社にやってくる移動図書館で本を借りていたが、その担当の男性から一冊の文芸誌をもらう。あやめはさりげなくその雑誌を読み、そこに自分の書いたラブレターの一節を発見する。最初は偶然かと思われたが、ニ通目のラブレターを渡した直後の文芸誌にまた文章が引用されているのを発見し確信する。
あやめは同僚に詰め寄り、自分の書いたラブレターがどこに渡されるのかを知る。いかがわしいバーにいる男があやめのラブレターを使って違法メールを配信していた。あやめはその後ラブレターを渡すのをやめるが、途端に津島の連載も止まってしまう。続きが読みたいあやめは、一人そのバーに行き、新しい手紙を託す。すると津島の連載が再スタートした。
あやめが書いていたのは、幼い頃、母が浜辺で見つけた瓶に入っていた手紙を読んでから人柄が変わり、船に乗ってどこかへいくようになった。それは楽園を求めていたのかもしれない。さらに、自分が高校生の時に、父の同僚と体を合わせたことなど、自身のこれまでの人生だった。あやめは、自分のことが津島によって物語として昇華していく先が読みたかったが、かつての辛い想い出まで思い出すことになり、精神的に不安定になり入院してしまう。
その頃、津島はファンレターを整理していて、あやめがかつて送ってきた手紙を発見する。それはあやめが二通目のラブレターを書いた後送ったものだった。津島は、その手紙の発信元から、すぐ隣の島だと考え、船で渡りあやめの叔母の家に来るが叔母は入院したあやめの居場所を教えなかった。津島は元の島に戻れず、その島でホテルをとって、続きの執筆をする。津島には、この主人公となった女性のこれからを描く義務があると感じ始めていた。
あやめの父は、あやめが父の同僚と体を合わせたことを知った後自殺していた。あやめは意を決して叔母に母の居場所を聞き出す。かなり以前に届いた連絡先は神戸だった。あやめはその住所へ行くがすでにコンビニになっていて、母がこの地で楽園を見つけたかどうかわからないままだった。しかし、あやめは何か吹っ切れた気持ちになる。叔母の家に戻ったあやめは、この日も出勤で自転車で会社へ向かっていた。途中、橋の上で一人の男性とすれ違う。実はこの男は津島だったが、お互い知らないまま、通り過ぎていく姿をカメラが捉えて映画は幕を閉じる。
一種のファンタジーのような雰囲気で物語は始まるが、あやめに近づいてくる狂信的な幼馴染や、神経質すぎるくらいの叔母の姿、あやめを恋愛対象に見るラブレターを頼んだ女性、津島を実は慕っている編集者の女性、それぞれからの束縛から解放されていく二人の主人公の姿が、巧みなカメラワークと、聞き慣れた音楽のBGMで描いていく展開が心地よくて、最後まで見入ってしまった。良い映画だった。