くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「アクション・ミュタンテ」「リリー・マルレーン」(4Kリマスター版)

「アクション・ミュタンテ」

エログロコメディと例えられるような作品で、決して凡人の作った映画ではないように見えるし、しっかりとした個性はのちの作品を彷彿とさせるが、いかんせんめちゃくちゃな展開と映像である。終始、鮮血が舞っているし、どぎつい色彩演出がさらにそれに拍車をかける。とは言ってもスプラッターホラーとは全く違う芸術性を感じさせるからそれが怖い。なんとも言えない映画だった。監督はアレックス・デ・ラ・イグレシア。デビュー作である。

 

男の叫ぶ顔のアップから映画は幕を開ける。どうやらアクション・ミュタンテというテロ集団がこの男を誘拐したらしいが押さえつけている間に死んでしまい、誘拐は失敗。世の中の美を称賛する人々を憎むアクション・ミュタンテの集団の構成員は、シャム双生児であり、怪力男であり、メカニック人間であり、半身のみの人間でありとフリークスばかり。そんな彼らの集団に、リーダーのラモンが刑務所を出て復帰する。彼はこの集団の頭脳だった。

 

ラモンは次のターゲットに世界的な食品メーカーオルホ社の社長令嬢パトリシア誘拐を計画する。そしてパトリシアの結婚式の会場へケーキ職人に扮して潜入し、大銃撃の末パトリシアを誘拐し、自身の宇宙船に拉致する。銃撃戦で、アクション・ミュタンテの仲間は何人か死んでしまい、残ったのはラモン、シャム双生児のアレックス、半身の人間らだった。しかしラモンは身代金を独り占めするために仲間を次々と殺していく。その様子を、猿ぐつわされたパトリシアは見ていたが、言い出せなかった。

 

ところが最後の仲間を殺したラモンだが、宇宙船が惑星衝突の危険を察知して自爆してしまう。惑星に不時着したラモンとパトリシアはオルホとの取引場所のバーへ向かう。アレックスの片割れは死んだが半身は生きていた。謎の男に助けられたアレックスは、ラモンに復讐するべく取引場所を目指す。一方ラモンも奇妙な家族に食事を与えられたりしながらバーを目指す。そして取引場所のバーで、やってきたオルホと取引を始めるが、持ってきたのは金ではなくて雑誌だけだった。怒ったラモンらはオルホらと銃撃戦を始めるがそこへアレックスらも参戦する。さらに外にはアクション・ミュタンテを逮捕しようと警察もやってくる。実はオルホは、強力爆弾を持ってきていて、この場所で大爆発させるつもりだった。

 

オルホも死に、パトリシアが爆弾を手にするが起動スイッチが入ってしまう。外は警官が包囲していた。ラモンは自ら爆弾を持って警官の中に飛び込んで大爆死してしまう。アレックスはパトリシアを連れてバーを脱出し、何処かへ消えて映画は終わる。

 

とにかく圧巻の鮮血と色彩の反乱映画で、目を背ける映像ではないものの、一枚の地獄絵のような映像が次々と展開する。これが個性だと言われればそれまでですが、相当に個性の強い作品だった。

 

リリー・マルレーン

四十数年ぶりの再見でしたが、やっぱりいい映画だった。戦争に翻弄されてしまう恋人同士の別れを巧みな構成で描いた手腕は見事。ステージで歌うヴィリーの姿や花束と戦場での激しい爆発を交錯させながら、時代の流れの残酷さを映像に昇華させていく。耳を澄ます兵士達が空を仰ぐ姿、恋人のために身を挺してレジスタンスに協力する直向きさ、それぞれの思いがすれ違う中、やがて迎える切ないラスト。反戦映画でもあり、歴史の一ページに砕かれた悲劇でもある物語を、クロスレンズを多用した淡いカメラで描いた様は、さすがに全盛期という作品でした。監督はライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

 

歌手のヴィリーとロベルトがベッドで戯れている場面から映画は幕を開ける。生粋のドイツ人のヴィリー、一方ロベルトはユダヤ人である。時は第二次大戦の二年前、ナチスの勢力が拡大してきた時代である。アーロンという男がロベルトを訪ねてきてロベルトは部屋を後にする。ロベルトは、富豪の父ダヴィッドとドイツのユダヤ人をスイスに逃す仕事をしていた。ダヴィッドはロベルトとヴィリーとの結婚には反対していて、ヴィリーに借金があるようにしてドイツに強制送還させてしまいロベルトは別れさせられる。

 

ヴィリーはロベルトの迎えを待ったが、手続きそのほかで前に進まず、そんな頃ヴィリーは知り合いでドイツ政府高官のヘンケルの口添えで酒場で歌うことになる。ヴィリーは「リリー・マルレーン」を歌うが、酔った客にメチャクチャにされ屈辱を味わってしまう。そんなヴィリーにヘンケルは、レコードを出すことを提案する。レコードを吹き込む日、ロベルトをヴィリーは見かけるが、彼はすぐにチューリッヒに帰ってしまう。

 

戦争が始まり、たまたまラジオ局でかけるレコードを探していて、一枚のレコードをかける。時間は夜10時3分前、かけたレコードこそ「リリー・マルレーン」だった。ところが、歌声が戦地に流れ、兵士からのリクエストが殺到しヴィリーは一躍人気スターとなる。チューリッヒではロベルトは父の紹介で幼馴染のミリアムと再会、婚約することになる。ロベルトは偽造パスポートでヴィリーに会いにきたが、ヴィリーを監視していたゲシュタポからの報告でヘンケルはロベルトを逮捕する。

 

組織のリーダーヴァイセンボーンは、ヴィリーにアウシュビッツなどの収容所の写真フィルムを持ち出すことを依頼、ヴィリーは危険を承知でその仕事を受ける。そしてヴィリーは前線慰問といい名目で、フィルムを手に入れては組織に渡し始める。ダヴィッドはそのフィルムと引き換えにユダヤ人を救出し始め、ようやくロベルトも釈放されてチューリッヒに戻す。まもなくしてロベルトはミリアムと結婚する。一方、ヴィリーも伴奏者のクシュナと婚約する。クシュナに嫉妬するヘンケルはクシュナを戦地へ赴任させてしまう。

 

ところが、ヴィリーと組織のつながりが発覚し、ヴィリーは強制収容所に送られてしまう。ヴィリーを助けるためヴァイセンボーンは、ヴィリーが強制収容所で殺されたという嘘の情報をラジオで流させる。動揺したナチス上層部はヘンケルに命じて、ヴィリーにステージに立たせるように指示する。ヴィリーは自殺未遂を起こしベッドに横たわっていたが、ヘンケルの申し出を受ける。

 

今にも倒れそうになりながらステージを終えたヴィリーだが、そこへドイツが降伏した連絡が入る。ヴィリーは、しばらく隠れたのち、チューリッヒの親しいミュージックホールにやってきた。この日ロベルト・メンデルスゾーンは、指揮者として成功してオーケストラを指揮していた。ロベルトは父から、ドイツからの救出に際し、フィルムを持ち出していたのはヴィリーだと告げる。

 

舞台の袖からヴィリーは見ていたが。ステージをはけたロベルトがヴィリーに気がつく。ところがすかさずミリアムがカーテンコールだからとロベルトを舞台へ戻す。ミリアムはヴィリーに、自分が妻だとはっきり告げる。カーテンコールを終えたロベルトが再び舞台袖に戻ってくるがヴィリーはいなかった。ヴィリーは一人ホールを後にして去っていって映画は終わる。

 

戦争に翻弄され、運命で引き裂かれた恋人たちの悲恋物語リリー・マルレーンの曲にまつわる逸話を重ねた作劇の面白さ、カメラ映像にこだわった演出、それぞれが非常によく完成されている秀作。見直してよかった。