くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「プライベート・ライアン」(4Kリマスター版)

プライベート・ライアン

ほぼ二十数年ぶりの再見。今にもこちらに銃弾が飛んでくるのではないかと思えるほどの圧倒的なリアリティと、決して反戦映画ではない人間ドラマとしての描き方、そして音と映像を駆使した映像感性の素晴らしさはさすがという他ない名作だった。監督はスティーブン・スピルバーグ

 

一人の老人が家族を連れて戦没者の墓地にやってくる所から映画は幕を開ける。そして時は1944年6月6日、ノルマンディ上陸の日となる。海岸に向かう軍用船の中でミラー大尉らは緊張感に包まれている。そして海岸に乗り上げたものの敵の銃弾が所狭しと襲いかかり、みるみる兵士たちは命を失っていく。それでも決死の覚悟でミラー大尉らは海岸を進み、なんとか突破口を切り開く。

 

その頃、一台の車がライアン家に向かっていた。迎えた女性は戦地に四人の息子を繰り出しているライアン夫人だった。彼女に届けられたのは兄三人の戦死の知らせ。一方、マーシャル将軍の元に、部下たちから、ライアンの家族についての戦死の情報と残ったのが末っ子ジェームズ・ライアンだけだという進言が届く。マーシャル将軍は、生死も不明ながらジェームズ・ライアン救出に命令を下す。

 

作戦が終了し、司令部に戻ってきたミラー大尉だが、部下七人を連れて新たな任務が指示される。それは落下傘部隊で敵地に入ったジェームズ・ライアン二等兵を救出して戻るという事だった。一人のために八人が危険に晒されることに疑問を持ちながらもミラー大尉らは戦場へ向かう。

 

途中、遭遇する部隊と情報を交わしながら進むが、その途上で敵のレーダー基地に遭遇、ミラー大尉の判断で八人でレーダー基地を破壊することにする。そして一人のドイツ兵を捕虜にするが、ミラー大尉は、捕虜を連れ歩くことは難しいと、釈放する。間も無く、ドイツ侵攻の中で重要な位置を占める橋を守る部隊と出会う。なんとそこにライアン二等兵がいた。ミラー大尉は、自分たちと一緒に戻ろうと告げるがライアン二等兵は、任務を遂行したいと拒否する。そこでミラー大尉らも迫ってくるドイツ戦車を迎え撃つべく作戦に加わることにする。

 

ミラー大尉は限られた弾薬で戦車攻略の計画を立て、待ち構える。そこへドイツ戦車と歩兵隊が襲いかかる。善戦をするものの次々と部下が殺され、最後の最後に橋の上で戦車を待ち構えるミラー大尉も撃たれてしまう。あわやという時、友軍の爆撃機が来襲しドイツ軍を打ち破る。しかし、ミラー大尉の傷は重く、ライアン二等兵に、しっかり生きろと最後の言葉を残して息を引き取る。冒頭の場面、ミラー大尉の墓の前に佇む今や年老いたライアンの姿で映画は終わる。

 

進軍する大尉らに雨が降ってきて、その雨音が銃弾の音に被っていく演出、目の前を鋭い音を立てて行き交う銃弾、撃たれて死んでいく兵士、襲いくる戦車の重厚さ、など、徹底的に音にこだわった描写が恐ろしく凄い。その中で描かれるそれぞれの兵士たちのドラマが非常に丁寧に描かれているので、映画が深みのあるものに仕上がり、決してただの戦争映画に収まらない完成度になっている。一旦釈放したドイツ兵士が、最後にミラー大尉を襲う流れになり、唯一ドイツ語を話せる若い兵士が、最初は規則違反だと銃殺に反対して逃したものの、最後に撃ち殺す細かいエピソードの組み立ても実に上手い。これが戦場の現実なのである。そのあたりの徹底的な描き込みが素晴らしい一本だった。