くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「思春期」「リュミエール」「2度目のはなればなれ」

「思春期」

恋多きフランス、淡々と静かに流れる一夏の物語なのに、とっても心地よい良質の一本でした。第二次大戦の危機感がさりげなく漂う絵作りもうまく、何気ないエピソードが何気なく過ぎていく短い時間の一ページがとてもいい雰囲気の映画だった。監督はジャンヌ・モロー

 

第二次大戦の不安が漂う1939年7月のパリ、マリーは父ジャン、母エヴァと、祖母の田舎にバカンスに向かおうとしていた。ジャンとエヴァは仲が良くどちらかというとジャンは嫉妬深いほどにエヴァを愛している。やがてフランス中部にあるのどかな村にやって来たマリーは、同じ歳の友達と戯れ、ほのかに感じる恋の予感にふざけ合う時を過ごす。この村には父に結婚を反対されるも愛し合って子供ができたフレッドとルイーズ、魔女と信じるオーガスタなどが住んでいる。

 

マリーはミルクをもらいに行った帰り、この村に赴任して来た医師アレクサンドルの車とぶつかってしまう。若いアレクサンドルにマリーは一目惚れしてしまう。まもなくしてマリーに生理がくる。大人になった実感でマリーはアレクサンドルに愛を告白するが、アレクサンドルは子供扱いして相手にしてくれない。そんな時、ジャンは、従姉妹の農園の収穫の手伝いに行くことになりエヴァと離れる。ところが、エヴァに気があったアレクサンドルはエヴァを誘い、二人は愛し合うようになる。そんな姿を複雑に思うマリー。

 

やがてジャンが戻って来る知らせが入り、エヴァはアレクサンドルに別れを告げる。マリーは両親が仲良くなるように、オーガスタに惚れ薬をもらいに行き、それを二人に飲ませる。戻って来たジャンは以前と同じくエヴァを愛するが、その様子をアレクサンドルは妬ましく見つめていた。

 

村祭りの夜、踊り明かす村人たちの中にジャンとエヴァもいた。それを観ていたアレクサンドルはエヴァにダンスを申し込み踊り始めるが、エヴァは途中で泣き始める。ことの次第を察知したジャンはアレクサンドルに殴りかかる。やがて夏休みも終わり、ジャンとエヴァ、マリーはパリへ戻っていく。アレクサンドルも赴任を終えて車でパリへ向かう。第二次大戦勃発の知らせを祖母が呟いて映画は終わる。

 

平和なひとときをさりげなく思春期の少女の目を通して描く作劇の瑞々しさと、戦争という歴史の一ページを映し出す演出が実に上手い一本。いい映画だった。

 

リュミエール

四人の女性の恋と男性関係の物語をそれぞれに交錯させながら描いていくのですが、どうしてもサラが中心の話になり、他の三人のウェイトが少なるなる分、逆にストーリーが混乱してしまった感じです。決して駄作ではないものの、もうちょっと核になる話と脇の話を綺麗に演出分けしてほしかった。監督はジャンヌ・モロー。監督デビュー作です

 

プールで四人の女友達サラ、ラウラ、ジュリエンヌ、キャロリーヌが戯れている場面から映画は幕を開ける。そして四人がこれまでの男性遍歴や恋の話に花を咲かせて物語は一年前に戻る。

 

サラは監督トマとの恋が終わりを告げようとしている。そして、ドイツ人作家ハインリッヒとの恋に情熱を傾けていく。ラウラは妊娠したが夫は浮気をしているらしい。ジュリエンヌはアメリカ人俳優に追いかけられ執拗に迫られている。キャロリーヌも夫とのトラブルを抱えていた。それぞれのドラマをサラとラウラのドラマを中心に描いていく形になる。それぞれがそれぞれの人生に向き合う中、サラは映画のテスト撮影の場で、友人で医師のグレゴワールの死に涙して映画は終わっていく。

 

四人のドラマが交錯して展開するスタイルで、誰が誰の関係か時折混乱するものの、ラストに至って整理して締め括ったのは良かったと思う。ジャンヌ・モローの監督デビュー作だが、才能の一端を感じさせる良質の作品でした。

 

「2度目のはなればなれ」

実話を元にしているとはいえ、なんとも薄っぺらい物語の作品だった。映像センスがないのかストーリーテリングの才能がないのか、見せようによってはもっと奥の深いヒューマンドラマになったろうに上滑りの作品に仕上がった感じの一本でした。監督はオリバー・パーカー。レネを演じたグレンダ・ジャクソンの遺作。

 

今は高齢の妻と一緒に老人ホームで暮らしているバーニーが海岸で佇む姿から映画は幕を開ける。まもなくしてノルマンディ上陸七十周年の記念式典がフランスで行われようとしていた。その式典に参列する申し込みを忘れていたバーニーだったが、妻レネに黙ってフランスを目指すことにする。

 

フランスに渡ったバーニーは、現地で同じくノルマンディ経験者のアーサーと出会い、一緒に式典に参加するかに思われたが、実はバーニーの目的は、ノルマンディ上陸の際に一緒に上陸船に乗っていたダグラスの墓参りだった。映画は、ノルマンディ上陸の場面、レネと出会った場面を所々に挿入しながら、フランスで出会う様々な軍人の姿を重ねて展開していく。レネはバーニーを探そうともしなかったが、バーニーの逃亡劇は、ネット情報に流れて話題になっていく。しかし、この展開をほとんど触れない作りが実に中途半端。

 

墓参りを済ませたバーニーはイギリスに戻って来てレネの元に帰って来る。そして、若き日に見たのと同様に二人で朝陽を見つめる姿に、バーニーがこの半年後に亡くなり、レネもその七日後に亡くなったテロップが出て映画は終わる。

 

バーニーが現地で出会う様々な軍人のドラマも中心の話に厚みをもたらすわけでもなく、レネが余命いくばくもないのを看護師に語るエピソードもなぜその場面があるのかという程度。とにかく、あまりに安っぽい脚本が実に残念な映画だった。