「ノーヴィス」
主人公のがむしゃらな自己主張と生き方を、ややサイコパス的に全編緊張感満載で描いて行くので、正直かなりしんどい。映画のクオリティは非常に高いのですが、細かいカットと寄りのカメラ、暗い画面で、この上映時間が限界という一本だった。監督はローレン・ハダウェイ。
真上からシングルのレガッタを撮っているカットから映画は幕を開ける。大学の教室でテストをなん度もやり直して、周りに誰もいなくなっても時間ギリギリまで粘ったアレックスは、教室を飛び出して行った先はボート部の練習場、しかも地下深く、まるで秘密基地のような場所。一年生で入部したアレックスだが、ライバルに負けないように狂ったように練習をし、コーチに反抗し、顧問に執拗に質問をする。そんな彼女は友人ブリルも、ライバル視してしまう。
上級生のレギュラーメンバーの一人が負傷したことで、その席を狙ってアレックスらは早朝から深夜まで練習し、自らを傷つけても追い込んでいくが、結局友達ブリルに奪われてしまう。奨学金目的だというブリルは、アレックスがすでに、大統領奨学金で入学して来たことで責めるが、アレックスにとっては、トップであることが必要だった。大学の物理の教師とレズビアンの関係だが、それも彼女には大きなウェイトを占めていない。
やがてシングルレガッタのレースの大会が催される。先輩やブリル、顧問やコーチから気楽にやれと言われるが、一位になるべく狂ったようにボートを漕ぎ、稲妻が光ったら引き返すようにと言われているにも関わらず漕ぎ続ける。周りが引き返し、最後まで漕ぎ続けて、仲間の非難の視線の中部室に戻り、一人外に出て来て彼女のアップで映画は終わる。
始まったところから、何やら不思議な緊張感が走り、狂ったように自分を追い詰める主人公の姿をひたすら暗い画面とカメラで捉え続ける。現実の縮図という評価もあるのも納得できる一本ですが、正直しんどかった。
「コミック雑誌なんかいらない」
今となっては絶対に作れない作品で、こんなものを作ろうというプロデューサーも監督らも絶対にいない唯一無二の作品。実際の社会事件や芸能界のスキャンダルをほぼそのまま実名で捉えて行く展開は呆気にとられるし、そのギラギラ感こそがこの映画の値打ちだと思う。好きか嫌いかはともかく、熱き頃の日本映画の一種の傑作を見た感じだった。監督は滝田洋二郎。
空港で、桃井かほりを捉えて執拗にコメントを求める芸能レポーターキナメリの姿から映画は幕を開ける。結局、桃井かほりは一言も喋らず、その結果をワイドショーで語るキナメリ。突撃取材が得意でファンも多いキナメリは、相手の心情など完全に無視し、法的にどうかという行動も辞さずに次々と取材を続けて行く。
殺人疑惑の人物やヤクザ抗争の現場、有名芸能人の結婚式の場や、旅客機の墜落現場、さらに殺された被害者の葬儀の場にさえ赴くが、結局、やりすぎと責められて、メイン番組を下され、風俗店の突撃取材に回される。しかし、金投資の詐欺事件が表になり、これの取材はキナメリしかいないと考えた編集長は彼を現場に送り込む。そして、首謀者がヤクザに殺される現場に飛び込んだキナメリも刺されてしまう。部屋から出て来たキナメリを取材陣がコメントを求めて迫ってくる。そして、何度も挿入される球場でキナメリがボールを投げる場面をマイクに変えて投げつけて映画は終わる。
主演の内田裕也の素人くさい演技の前で、松田聖子、三浦和義、安岡力也、豊田商事事件、など世間を騒がせたさまざまが、ある時は実名で本人が出て、ある時は全く同じシチュエーションで描かれる。この無鉄砲さに拍手したくなるような作品だった。。