くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スカーフェイス」(4Kリマスター版)

スカーフェイス

初公開以来なので、ほぼ四十年ぶり。監督はブライアン・デ・パルマだが、彼の作品としては決して上位のものではないなと当時も思ったが、今見直しても、それほど出来がいいと思えない。冒頭に彼独特の長回しや回天するカメラワークなどは見られるが、中盤はひたすら主人公がのしあがる姿を淡々と、そして機関銃のようなスラングの連続で描いていくのが次第にしつこくなってくる。そこが狙いだったかもしれないが、徐々に孤独に陥っていく主人公の切なさが描けていたら傑作だったかもしれない。ジョルジオ・モロダーの物悲しい戦慄が映画のテーマを映し出しているものの、クライマックスの壮絶なラストは、それまでがほぼ同じテンポなので引き立っていないのはちょっと残念。とは言っても、3時間近くあるのに退屈を感じない作劇のうまさは評価できる一本だった。

 

1980年、キューバは反カストロ主義者をアメリカに追放したというニュース映像から映画は幕を開ける。その中には政治犯以外に前科者の犯罪者も大勢混じっていた。そんな前科者の一人がトニー・モンタナ、マニー・リベラだった。三ヶ月間、高架下にキャンプ場で生活していたが、麻薬の密売を行うフランクの手下オマーが政治犯レベンガ殺しの仕事を持ち込んできて、トニーはそれを請け負うことになる。

 

さらに金になる仕事があるというオマーの申し出を受けたトニーは、指定された麻薬の取引場所に向かう。しかし相手は金を横取りするだけを考えていた罠だった。トニーの仲間が殺される中、飛び込んできたマニーたちと窮地を脱し、麻薬と金をそのまま手にしたトニーはフランクの邸宅に招かれる。そこでトニーはフランクの情婦エルヴィラと出会い一目惚れしてしまう。フランクにすっかり気に入られたトニーはオマーの右腕として取引に参加するようになる。トニーは金を稼ぐようになり、母と妹ジーナの住む家を訪ねるが、母はトニーを忌み嫌いおいだしてしまう。トニーは手持ちの大金をジーナにプレゼントして帰ってくる。

 

ボリビア麻薬王ソーサとの取引に行ったオマーとトニーだが、オマーを無視して交渉するトニーにオマーが苦言を呈し、ソーサは、オマーを騙してヘリの上で殺してしまう。トニーは、フランクの許可なく大きな取引を勝手に契約して戻って来たのでフランクは怒り、次第にトニーを遠ざけ始める。

 

そんなある日、悪徳警官バーンスタインがクラブで飲んでいるトニーに近づいて来て賄賂を要求、さらにそのクラブでトニーは銃撃される。なんとか脱出したトニーは、フランクの仕業だと判断し、確認の電話を仲間にさせてフランクの邸宅にやってくる。そしてフランクに白状させ、その場にいたバーンスタインも殺してしまう。

 

ついにトニーはマイアミのボスの座につき、エルヴィラとも結婚、巨大な資金を手に入れ豪邸に住むようになるが、自分以外を信用できなくなる。唯一マニーだけが仲間と認めるようになり、薬を常用するようになっていく。しかし、脱税が摘発され、ソーサも麻薬取り締まりが厳しくなってくる。

 

ソーサはトニーに、取り締まりの最高顧問の暗殺を依頼し、それを成し遂げたら、トニーの脱税問題もなんとかすると約束する。そして、ソーサは自身の殺し屋をトニーに預ける。ニューヨークへ行ったトニーたちは最高顧問の車に爆弾を仕掛け、路上でソーサが送り込んだ殺し屋がスイッチを入れる手筈だったが、車に顧問の妻と子供が乗ったためにトニーは中止を進言する。しかし殺し屋がやめないので、トニーは殺し屋を射殺してしまう。

 

マイアミに戻ったトニーだが、エルヴィラが行方不明だという。さらにジーナもマニーもいないと聞いて次第に逆上していく。ジーナの居場所を見つけたトニーがその家に行くとマニーが出て来た。トニーは思わずマニーを撃ち殺してしまうが、ジーナは、マニーと昨日結婚したと言って泣き崩れた。

 

トニーは、ジーナを連れて自宅に戻るが、折下ソーサの殺し屋たちが邸宅に潜入して来た。トニーの手下は次々殺され、そして大銃撃戦が展開、ジーナも半狂乱になってトニーに銃を浴びせるも、ジーナも殺し屋たちの銃弾に倒れる。最後、トニーはソーサの送った殺し屋たちに蜂の巣にされてプールに落ちて死んでしまう。こうして映画は終わる。

 

派手な銃撃戦も、どこかスタイリッシュなのはブライアン・デ・パルマらしいところだが、オリバー・ストーンの脚本が少々荒っぽくて、トニーがのし上がっていく下りがうまく表に見えてこないのが勿体無い。凡作ではないものの、個人的には拍手するほどの一本ではないのは当時も今も変わりない感想の映画だった。