くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」

室井慎次 敗れざる者」

最初から後編にかけたような間延びした脚本と脇役の雑な演技、キレのない演出で、後編を見なさいと言わんばかりの観客を馬鹿にしたような映画だった。テレビシリーズを紹介するには構わないが、映画として、しかも前後編の大作として作る気迫が全く見えない映画、君塚良一も監督の本広克行も腕が落ちたような気がします。まあ後編に期待するしかないという感じでした。

 

秋田の山深い沼の辺りで、定年退職を二年後に控えて警察を辞めた室井慎次の姿から映画は幕を開ける。里親として、犯罪被害者の子供二人と暮らしているが、村人は部外者に冷たく、露骨に追い出そうとしてくる。そんな室井の家の近くで。埋められた死体が発見される。そんな時、一人の少女日向杏が現れ、一緒に住むことになる。彼女はかつて逮捕した猟奇殺人犯日向真奈美の娘だった。

 

青島との約束で警察組織改革のために仕事をしたものの約束が果たせず、そのまま今も悔やんでいた。杏は今も室井を恨んでいて、室井が一緒に住んでおる凛久、貴仁に室井の有る事無い事を告げ口したりして貶めようとする。高校生の貴仁は杏に恐怖を感じるが、凛久は素直に信じてしまう。しかし、室井に諭されて気持ちを新たにする。そんな時、貴仁の母を殺したヤクザの弁護士がやって来て、貴仁に、犯人が反省しているから証言台に立って欲しいとやってくる。貴仁は室井の危惧をよそに、毅然と犯人に会い、犯人の気持ちを動かし、とうとう犯行を認める。

 

秋田県警本部長として赴任して来た新城は、室井に捜査に参加して欲しいと言ってくる。今回発見された死体は、かつてレインボーブリッジ事件に関わった犯人の一人で、今は新しい犯罪に関わっているのだという。そんな時、室井が思い出の品をおいている小屋が火事で全焼してしまう。かつて愛用したコートなども燃える様子をじっと見つめる室井の場面で映画は終わる。

 

なんともありきたりで平凡なキャラクター設定と展開に、映画館を出て行きたくなるほどに呆れてしまった。いかにも都会人を排除しようとする古臭い村人や、室井に憧れる若い警官や刑事の安っぽい演出、あざとい杏の登場と、彼女に洗脳された凛久があっさり元に戻りどうでもいいエピソードなど、情けないほどにクオリティが低い。後編を意識してわざと雑に作ったのかもしれないが、それなら二本に分けるようないかにも商売主義的な作りはすべきではないと思う。非常に気分の悪い前編だった。

 

室井慎次 生き続ける者」

前編がひどかったので後編に期待したが、言いたいことはわかるのですが人間ドラマが全く描けていなくて、通り一遍のストーリー展開は流石にいただけない。何度も出てくる室井慎次の「約束を果たせなかった」からという展開も重みがなく、小さなエピソードを並べて、ラストはありきたりになんの工夫もない流れからのエンディング。凡作の極みだった。監督は本広克行

 

小屋が火事になりその取調べをしている現場から映画は幕を開ける。結局室井は被害届を出さなかったが、犯人は杏だろうと考えているようだった。杏は母真奈美から、真奈美が使った凶器のメスやらをもらっていて、室井を憎むようにと洗脳されていたが、室井がなんのリアクションもなく自分を信じている風なので次第に心が和らいでくる。一方、凛久は、スーパーで万引きをしてしまうが、それもあえて室井は誠実に接することで凛久の心を動かしてしまう。貴仁は、自分の親が犯罪者だったことがガールフレンドにバレて結局失恋してしまう。

 

そんな中、前編で起こった殺人事件の犯人が逮捕される。しかしなかなか白状しないため、室井が取調室に入れてもらい、犯人が真奈美の信者であること、それぞれに家族がいることを切々と説き伏せ、犯人はとうとう自白する。ここも実に弱い。ある日、凛久の父親が刑務所から出てくる。凛久を引き取りたいと児童相談所に求め、児童相談所も父の言葉を受けることになる。室井は凛久の父に、絶対に暴力を振るわないようにと約束させて凛久を返す。

 

ところが後日、凛久は一人室井の家に帰ってくる。身体中あざだらけで、とりあえず保護するが、翌日父親がまた迎えにくる。しかし室井は拒否し、キレた父親が斧を持って襲いかかる。そこへ駐在が駆けつけ逮捕。しかし室井の家の飼い犬を凛久の父親が解き放したので、室井が雪の中探しに出る。しかし室井には狭心症の持病が見つかっていた。案の定、室井は行方不明になり、警察らが探すが、結局、亡くなっていた。

 

室井は貴仁らにお金を蓄えていて、村の老人に万が一の時は渡して欲しいと頼んでいた。また、その老人の孫が東京に行ったまま帰らないので室井は密かに探してもらい戻ってくる。貴仁らは、室井が生前言っていた、この家を大きくしてたくさんの子供を迎えたいという夢を叶えることにする。室井に憧れる村の駐在は刑事になるために勉強を始める。貴仁も警察官になることを決める。村人たちも室井に関わった人らも室井を認め、花をたむけて映画は終わっていく。エンドクレジットの後、青島が訪ねてくるが、緊急で呼び出され引き返して暗転。

 

なんとも芸のない映画で、主人公や脇役に生身の存在感が全くなく、物語も通り一遍で、とにかく、前後編で見せるほど力が入っていると思えない作品だった。