くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ルート29」「ゴジラ(1954年)」(4K)「イマジナリー」

「ルート29」

シュールでファンタジックな映像で描くちょっと不可思議な一人の女性の成長ストーリー。登場人物にリアル感はなく、監督の感性だけで描いていく絵作りがとにかく楽しい作品だった。監督は森井勇祐。

 

鳥取、修学旅行に来た学生たちの姿をカメラが移動しながら捉える。一人の女子高生がクラスメートと路地に走り込んでタバコを吸おうとする。風除けにと近づいたところに一人の女のり子がいた。のり子は走り出し商店街の中でローラースケートをする少女ハルと出会う。ハルはスケートを無くして、それに滑ってひっくり返るのり子はハルを追っていくと森の中、手作りの秘密基地のようなところで見つける。のり子がタバコを吸おうと物音を立て、ハルが気が付いて近づくとのり子は、あなたを迎えに来たというメモを渡す。

 

四ヶ月前に遡る。病院の清掃業をしているのり子は、患者と話してはいけないと言われながら一人の女性理映子に声をかけられる。理映子は、余命いくばくもなく、娘のハルに会いたいから連れ来て欲しいという。ハルは姫路にいるのだという。のり子は、清掃会社の車を盗んで姫路に向かう。そしてハルを見つけたのだ。

 

のり子は車で鳥取を目指すが。途中立ち寄ったレストランで、三つ子の犬の一匹が行方不明で探しているという赤い服と帽子の女と出会う。彼女を車に乗せて、犬を探しにいくのり子たちだが、のり子とハルが森に探しに行った時、赤い服の女は車を盗んで消えてしまう。歩いて鳥取を目指すのり子たちは、横転している車を見つける。

 

中にお祖父さんが乗っていて、お祖父さんを助け出すが、死んでいた。お祖父さんはのり子たちの後をつけてくるが、途中で世間から逃げ出している父と息子に出会う。息子は石を集めていた。のり子たちは国道に戻る道を教えてもらい別れる。お祖父さんがカヌーに乗りたいというのでカヌーに乗る。するとたくさんの赤いカヌーに乗った人たちがお祖父さんを呼んでお祖父さんは行ってしまう。

 

のり子は教師をしている姉を訪ねる。姉の家で一夜を明かすが、翌朝、ニュースで、姫路でハルという少女が行方不明になっていると流れていた。のり子とハルは姉の家を後にし、朝食を食べに喫茶店に入るが、ハルはトイレから脱走してしまう。のり子はハルを探す。折しも、レッドムーンの夜、街の人々は月を見つめていて、事故を起こす人も出る。ハルは時計屋に立ち寄り、自分の石と引き換えに恐竜の骨でできたという時計を買う。

 

のり子はようやくハルと再会するが、ハルは母に会うのが怖いのだという。のり子は一緒に行くからと約束し、二人は理映子のホスピスにやってくる。面会室に来た理映子は、自分はもう死んでいるのだという。ハルはここまでの道のりを話す。のり子はハルを警察署に連れていく。ハルは婦警に乗せてもらいパトカーで姫路を目指す。途中、車が異音がするので婦警が車を降りる。そこへ向こうから大きな魚が泳いでくる。ハル達の前を通り過ぎ、何事もなかったようにハルは婦警の車に乗る。事情聴取を受けるのり子が警察署の廊下を歩いていると、風が吹き、水の音がする。のり子が立ち止まり、顔のアップで映画は終わる。

 

何事も人と関わることのできなかったのり子が、ハルとの旅の中で何か変化を感じていく様子を描いた作品ですが、メッセージよりもファンタジックな映像演出が目立ってしまった感じです。長回しのカメラワークと、ファンタジックな映像の数々、シュールなシーンの繰り返しなどなど映像作品としては面白い映画でした。

 

ゴジラ

何度劇場で見直したかわからない傑作、いや名作、今回TOHO梅田の大スクリーンで見直した。何層にも組み立てられたストーリーと展開、そして時代背景を叙述に描いた以上に、未来への恐怖さえ予感した脚本の素晴らしさに改めて感動して涙してしまった。これが名作ですね。監督は本多猪四郎

 

漁船ののどかなカットから映画が幕を開ける、そして謎の事故で沈没。海難事故が相次ぐ中、大戸島の漁船も襲われるに及んで危惧した政府はその調査を拡大していく。動物学者の山根博士は大戸島に伝わる謎の怪物ゴジラの存在を懸念する。大戸島に調査に行った山根博士らは大量の放射能と巨大生物の足跡、さらにジュラ期の姿の怪獣ゴジラに遭遇する。

 

ゴジラ命名された大戸島の怪獣はやがて東京湾に迫る。様々な防御処置で迎え撃つ人類だが、水爆にさえ耐え忍び生き延びた怪獣を止めることはできず東京は焼け野原になってしまう。山根博士の娘恵美子は海洋調査会社の尾形と恋人関係だった。しかし父の山根博士は芹沢教授を娘婿にと考えていた。恵美子は芹沢教授に自分の気持ちを伝えようと研究所を訪れるがそこで、芹沢教授が偶然発見した水中酸素破壊兵器オキシジェンデストロイヤーの存在を知る。

 

一方、東京はゴジラによって破壊され、その惨状に涙した恵美子は、芹沢教授に口止めされていたオキシジェンデストロイヤーの存在を恋人の尾形に打ち明ける。尾形と恵美子は、芹沢に懇願し、芹沢の心を動かし、設計図を全て破棄した上で、最初で最後のオキシジェンデストロイヤーを海底にいるゴジラに使うことにする。尾形と芹沢が潜水服を着てオキシジェンデストロイヤーゴジラの元へ届けるが、芹沢は尾形を先に浮上させ、自らの命と共にゴジラを葬る。船上では山根博士が「あれが最後のゴジラだと考えられない」と呟いて映画は終わる。

 

芹沢の娘への思いと、恋に敗れた傷心を描きながら、水爆の恐怖、そしてオキシジェンデストロイヤーを使うことで東京湾の魚が死滅するという未来の公害さえも予見した脚本の鋭さに頭が下がります。ゴジラが暴れるシーンのカメラの構図も見事だし、やはり名作というのに相応しい作品だった。

 

「イマジナリー」

思いの外普通に良くできたホラー作品だった。今時なので、やたら残酷シーンを見せ場にした単調なものかと思ったら、子供の頃の想像の友達イマジナリーフレンドを巧みにホラーに置き換えた作劇はなかなか面白い。化け物の造形が、着ぐるみみたいな一方ではっきり全景が見えない演出も上手い。一級品のホラーではないものの、なかなか楽しめる一本でした。監督はジェフ・ワドロウ。

 

黒人の女性ジェシカが廊下の奥のダストボックスの入り口から出てくる。何者かが彼女を追ってきていて、彼女の手は血に汚れている。部屋に隠れたジェシカに、大柄な男、のちにわかるが父親 が入ってきて直後蜘蛛の化け物に変わって叫んだところで夢から目覚める。前妻がDVらしく離婚したマックスと結婚したジェシカはベッドで目を覚ます。童話作家ジェシカは悪夢を見ることが多かった。

 

マックスの連れ子テイラーとアリスにジェシカは心を通わせようとするが思春期のテイラーはそっけない態度だった。そんなジェシカたちは、ジェシカのもと住んでいた家に引っ越すことにする。ジェシカは仕事の合間にアリスと遊びながら親しくなろうとする。ある日、ジェシカとアリスはかくれんぼをしていたが、ジェシカが仕事の電話を受けて外に出た際、アリスは地下室に入り、壁の奥に部屋を見つけてテディベアのぬいぐるみを発見する。以来、アリスはそのぬいぐるみをイマジナリーフレンドとして可愛がるようになる。

 

マックスはツアーで留守にすることになり、ジェシカ、テイラー、アリスの三人で家に残るが、どこか不気味な空気が漂い始める。アリスはテディベアをチョンシーと名付けて可愛がるが、まるで二役するような会話を聞くようになる。アリスは、何かを集めるリストを持っていて、ある日、自分の手を釘に打ち込もうとしたのをジェシカが止める。リストには、痛いものというのがあった。こういうリストを幼い頃に作っていた記憶があったジェシカは、セラピストを呼びアリスと会話させる。

 

ところが、アリスが可愛がっているチョンシーは存在しないことがわかる。テディベアの姿はアリスとジェシカにしか見えていなかった。まもなくしてアリスの姿が消えてしまう。近所に住んでいて、かつて幼いジェシカの世話をしていたグロリアが、ジェシカの幼い頃にも同じことがあったと話す。ジェシカも幼い頃姿を消してしまい、父親が身を持って助け出し、その後遺症で今の状態になったようだった。ジェシカが消えた場所は地下室の奥の壁の向こう、イマジナリーフレンドの世界だった。

 

ジェシカは、アリスもそこにいると判断して、アリスが作っていたリスト通りに品物を集め、入り口の壁で待つ。そしてその扉が開き、ジェシカ、テイラー、グロリアがイマジナリーフレンドの世界に足を踏み込む。自分の世界に引き込まんとするイマジナリーフレンドにジェシカらは敢然と立ち向かい、かつて住んでいたアパートの部屋番号と同じ部屋を発見、突入すると、アリスがいたが、アリスの母もいた。しかし、全てはイマジナリーフレンドが作り出した幻影だった。

 

ジェシカは、壁に出口を書き込んでいき、すんでのところでイマジナリーフレンドの世界から脱出する。ジェシカたちは、ジェシカの父が入院する療養所に来ていた。ジェシカは、自身の絵本を読み聞かせるが、ふとアリスの腕を見ると母に受けた怪我の痕がない。まだイマジナリーフレンドの世界から脱出できていなかった。ジェシカは、恐ろしい姿に変わったテディベアにあわや取り込まれそうになるが、駆けつけたテイラーに助けられ、出口へ向かう。しかし追ってきた化け物にジェシカが捕まえられる。アリスが、最後に火をつけ、三人は無事ピンチを切り抜け脱出、家は炎に燃え落ちてしまう。三人は、ひとまずホテルに行くが、ロビーでテディベアを可愛がる少年を見つけ、別のホテルに向かって映画は終わる。

 

イマジナリーフレンドの架空の世界が、たくさんの扉や迷路のような廊下の造形になっていてなかなかオリジナリティがあって面白いし、ジェシカの幼い頃のイマジナリーフレンドのエピソードがアリスに絡んでくる二重構造も面白い。難をいうと、テイラーと親しくなる近所に青年リアムが、途中で存在感をなくしてしまったのはちょっと勿体無い気がします。でも、創造力逞しいホラー映画だった。