「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」
大作の貫禄十分な見事な映画だった。スペクタクルも十分あるが、人間ドラマの面白さ、終盤の娯楽映画としてのたたみかける展開のうまさは絶品で、エンタメ大作にしてして何層にも仕組まれた物語構成は圧巻。とにかくお手本のような配役が良い。さすがリドリー・スコット監督という一本だった。
アウレリウス帝が亡くなって十六年ののち、双子皇帝ゲタとカラカラによる圧政に市民は苦しんでいた。アフリカの辺境、ヌメディア国でのんびり暮らすアノン=ルシアスと妻アトリッド、程なくアカシウス将軍率いるローマ軍の大船団が攻め込んでくる。アノンたちは善戦するが多勢に無勢で大敗、妻のアトリッドも死んでしまう。アノンはローマの奴隷として捉えられたが、グラディエーターを集めているマクリヌスにその才能を認められて買われることになる。
マクリヌスはルシアスをローマに連れて行く。アカシウス将軍の戦勝祝いで開かれた剣闘大会でルシアスは見事な闘いぶりを見せ、皇帝にも目をつけられる。アカシウス将軍の妻ルッシラは、マキシマスの元恋人で、マキシマスの死後、息子ルシアスの命を守るため辺境へ逃していたが、その消息はわからないままだった。
ルシウスは妻を殺した仇としてアカシウスを殺すべくローマに戻ってきたのだが、アカシウス将軍は密かにローマ帝国を倒すべく副将ダリウスに、ローマから離れた地に軍を控えさせ、剣闘大会の最終日にローマに攻め入る計画があった。しかし、その計画が漏洩し、アカシウス将軍とルッシラは捉えられてしまう。一方マクリヌスは、双子皇帝を亡き者にして、自らローマの頂点に立つべく暗躍していた。マクリヌスは、アカシウスをコロッセウムでルシウスと戦わせることで見せしめにたら良いと皇帝に提案、コロッセウムでアカシウスとルシウスは戦うが、最後にアカシウスは剣を捨て、ルシアス・アウレリウスで、皇帝の直系の後継者だと告げて近衛兵の矢に殺されて行く。
ローマ市民が皇帝のこの仕打ちに反感を持ち、今にも氾濫が起ころうという状況になった。マクリヌスは、カラカラ帝を唆し、ゲタ帝を殺させ、自身は執政官として元老院の頂点に立つ。ルッシラはマキシマスがアウレリウス帝から譲られた指輪をルシアスに引き継ぐ。ルシアスは、元奴隷で今はグラディエーターの医師をしているラウィにその指輪をダリウスに届けるように言う。
マクリヌスはルッシラも公開処刑するべきだとカラカラ帝を唆してコロッセウムにルッシラを引き出し、近衛兵からルッシラを守らせるためにルシアスらをその場に引き出す。ルシアスはグラディエーターらと共に近衛兵と戦うが、マクリヌスは、合間を見てカラカラ帝を殺害、さらにマクリヌスの放った矢がルッシラを射抜いてルッシラは死んでしまう。
マクリヌスはダリウスの軍をローマへの凱旋門の前で待ち、追ってきたルシアスと最後の戦いをする。そしてルシアスはマクリヌスを倒し、アウレリウス帝が行わんとしたローマを再建するのに剣はいらないとローマ軍の兵を説き、皆が一丸となって鬨の声をあげて映画は終わる。
デンゼル・ワシントン扮するマクリヌスが、終盤まで謎の男で通し、クライマックスでみるみる本性を表して、権力欲を得るためだけの悪に変わってのラストへに畳み掛けが見事で、オープニングの海戦シーンのスペクタクルや、コロッセウムの中を海のように水を引いての海戦場面の再現や、贅を尽くした映像作りも楽しめる。復讐だけを考えていたルシアスが、自らリーダーとして目覚めて行くくだりもしっかり描けていて、見応えは十分な仕上がりの映画だった。これこそ大作という一本でした。
「レッド・ワン」
全く期待していなかったが、思いの外面白かった。ファンタジックな特撮シーンが夢いっぱいで楽しくてそれだけでも見た甲斐がありました。監督はジェイク・カスダン。
クリスマスイブの夜、少年時代のジャックが従兄弟たちを両親らがクリスマスプレゼントを隠してある部屋に案内して、サンタなどはいないのだという場面から映画は幕を開ける。そして三十年の時が経つ。ハッカーをやっているジャックはこの日地震予知研究所に忍び込んであるデータを盗み出す。それは北極のとある地点を特定するものだった。
クリスマスイブの夜、ショッピングセンターでサンタのイベントをしているニックと彼を護衛しているカラムの姿があった。イベントが終わったニックらは空軍基地へ向かう。そこには巨大なトナカイと最新式のソリが準備されていた。ニックはサンタクロースだった。ニックらはソリに乗り、空軍の飛行機に護衛されて飛び立ち北極の基地にやってくる。カラムは、今年で仕事を辞めるとニックに告白する。世の中の子供の中に良いものが見つけ出せず、悪い子リストが増えるばかりなのに絶望してきたからだという。
ところがこの北極の基地のバリヤーを何者かが破り侵入する。侵入してきたのはニックの弟クランプスの元妻で悪の魔女グリラの一味だった。彼女はニックを誘拐し、悪い子リストの子供達を悪魔の檻に閉じ込めるスノーボールを大量に作って、クリスマスの日に配る計画をしていた。ニックをまんまと奪われたカラムは、ハッカーのジャックを探し出し、その依頼人からグリラの存在を知る。
ニックの弟クランプスにも協力を求めるも叶わず、北極の基地がグリラに占拠されたことを知ったカラムらは、基地へ乗り込む。ところがグリラはジャックの息子とジャックを悪魔の檻に閉じ込めてしまう。カラムは基地に乗り込み、基地の職員を救出してグリラに戦いを挑む。ジャックらも、改心したために檻から脱出できたのでグリラに挑むも、グリラはニックのソリを奪って、スノーボールを大量に積んで飛び立とうとしていた。しかし、すんでのところでクランプスが駆けつけ、ニックも意識を取り戻してトナカイを使って反撃し、最後はグリラを悪魔の檻に閉じ込めてしまう。
クリスマスの夜、ニックやカラム、ジャックと息子はソリに乗って世界中にプレゼントを配って回る。カラムは、ジャック親子に子供心の良い面を再び見ることができ、辞職することを辞めて映画は終わる。
最後の最後まで手を抜かず、プレゼントを配る場面まで創意工夫した映像もとっても面白いし、それほどドロドロした物語ではなく、あくまでファンタジックなお伽話のように描いて行く物語と、引き込まれてしまうほどに夢溢れるCG映像がとっても楽しい。ちょっとしたエンタメの佳作という一本でした。