「チネチッタで会いましょう」
ダンスや歌が挿入され、一見シリアスな話がみるみる映像として踊り始めると言う作りはとっても面白い。時代遅れの映画監督がさまざまな今時の周囲の人々に翻弄されながら、次第に時の流れに乗って、最後はみんなハッピーエンド。緩やかなコメディセンス満載の映画だった。監督はナンニ・モレッティ。
イタリアの小さな街に電気が引かれ、この日点灯式となっている。街に灯りが灯ると共産党員の男が歓喜する。と、これは映画の撮影で、監督はこの道四十年のジョヴァンニ。彼はソ連のハンガリー侵攻を舞台にした政治映画を撮っていた。当時のイタリア共産党はソ連から脱却し、独立に歩むべきだというメッセージがあった。彼は妻でプロデューサーのパオラに支えられて五年に一度のペースで映画を作ってきた。しかし、出演女優はこの政治映画をラブストーリーだと勝手に解釈してアドリブ満載にするし、ジョヴァンニの娘は自分と歳が変わらない初老の男と恋に落ちる。そんな苦悩の中、朝目を覚ますとパオラから離婚を申し出られる。彼女はかなり前から精神分析医にかかっていてその結論だった。それもこれもジョヴァンニの言動に耐えきれなくなっていた。
ジョヴァンニは、パオラがプロデュースする新人監督の映画のラストカットに口を出して延々と自論を語る。自身の作品のサーカスシーンの象がトラブルで来ない。そんな時、出資者ピエールが実は金がなくて、警察に捕まってしまう。それでもパオラを頼るジョヴァンニだが、パオラはかなり以前から別居を考えていたと答える。娘の家に泊めてもらったりするジョヴァンニ。
そんなジョヴァンニに、ピエールは逮捕寸前Netflixと契約するように進める。しかし、Netflixとの交渉では、完全にお互いが食い違ってしまう。ところが韓国の映画制作チームが声をかけてくる。しかも、ジョヴァンニが考える脚本に込めたメッセージを理解してくれたことから映画撮影は再開、無事完成されて映画は終わる。これまでの登場人物が全員で歌いながらの大行進でエンディング。
ゆるいダンスや心地よい音楽がところどころに挿入され、映画のリズムがテンポ良くなっていくのはとっても楽しいのですが、結局どう言うことだったのかをわからないままエンディングだった。面白い映画ですが、果たして私は理解できたのかどうか自信がありません。
「墓場なき野郎ども」
シンプルなお話ですが、展開がハイスピードなので単純に見ていて面白い。ナレーションを多用したフィルムノワール色満載の典型的な一本。ラストは落とし所もなくいきなり終わるけれど、素直に楽しめる娯楽映画だった。監督はクロード・ソーテ。
ミラノの駅、アベルの相棒レイモンとピエロとダニエルの二人の子供が立っている。離れたところに子供達の父アベルがいる。アベルは子供達に、母親テレーズと先に行くように言って送り出す。アベルとレイモンは街に出て、集金人を襲って金を奪い逃走。たくみに車やバイクを乗り継いでテレーズや子供達と合流する。そしてボートを借りてフランスを目指す。途中ボートの運転手を海に突き落とし、フランス国境の海岸にたどり着くがそこで警官と遭遇、銃撃の末テレーズとレイモンは死んでしまう。
アベルはパリにいる仲間ファリジエに連絡を取る。アベルはファリジエ、ジャノー、リトンらと地獄のピエロという強盗団を組織していた。連絡をもらったファリジエたちは、関わりを恐れアベルを迎えに行くのを躊躇う。そこで、ボスのネバダに連絡し、組織と関係のない信頼のおけるエリックをアベルに遣わす。
救急車を偽装して、エリックは郵便局でアベルと落ち合い、子供たちを乗せてパリに向かう。途中、愛人と喧嘩している役者の女性を拾う。無事パリに戻ったアベルだが、ファリジエたちの態度は冷たかった。アベルは、ファリジエたちを頼らず、かつての父の戦友で警備員をしている男のところへ行き彼の妹に子供達を預ける。アベルはエリックのアパートの階上の女中部屋に泊めてもらう。アベルは盗品の買取業者の社長を襲い金を手に入れ、自分を除け者にしようとしたファリジエたちに復讐を開始する。しかし、警察もファリジエたちに近付いていた。そしてリトンからアベルの居場所を聞き出す。
アベルはファリジエを殺すが、そのショックで妻にソフィアが死ぬことになる。やがてエリックのアパートに警察が乗り込んできた。アベルはすんでのところで脱出、唯一信用できるジャノーのところへ行く。そして、復讐はやめると宣言する。街に出て何処かへ向かうアベル、この後アベルは逮捕され死刑となったとテロップが出て映画は終わる。
わかりやすい娯楽映画で、前半の逃亡劇は車やボートを利用した動きのあるシーン、後半は銃撃戦を多用したリズミカルな展開と、非常にテンポが良く、ラストまで一気に見終えることができる。典型的なフィルムノワールですが楽しかった。