2016年制作のリュミエール兄弟の作品群を構成したドキュメンタリーの第二弾。50秒の作品を110本集めて描くのだが、驚くような構図、カメラワークに今回も驚かされてしまった。現在の一級品の映画に通ずる原点を、軽妙なナレーションで描いていくのはとにかく面白かった。監督はティエリー・フレモー。
有名なリヨン工場を出てくる人々、その三パターンを紹介し、その後は世界中にリュミエールが放ったカメラマンが収めた様々な映像が次々と紹介されていく。時に後のジョン・フォードにつながる映像であったり、ベルイマン、小津に通ずる映像であったりが語られていく。
最初は記録であった映像が、演出が加わってドラマになり、芸術になって行く様は本当に映画って面白いものだと思ってしまいます。そしてラスト、エンドクレジットの後にフランシス・コッポラが再現したリヨン工場の映像が映されて映画は終わります。
決してドラマがあるわけではないけれど、この作品を見れば映画を作りたくなってしまいます。そんな一本だった。
「赤い蕾と白い花」
吉永小百合映画祭の一本。見ていて気恥ずかしくなるような展開が続く大量生産時代の青春映画という感じの一本。突然流れが飛んでしまうような雑な展開もあるけれど、当時の男女にたわいない世相が感じられるし、結局浜田光夫と吉永小百合を見るために劇場に行ったのだろうという雰囲気満載のスター映画はやはり楽しかった。監督は西河克己
町医者の父と二人暮らしの重夫が、飼い犬に子供ができたので友達のとみ子にプレゼントしようと犬を抱き寄せているところから映画は幕を開ける。とみ子は服飾学校の校長である母と二人暮らしで、朝食を食べていたが、そこへ重夫が犬を持ってやってくる。それぞれ恋人同士というより幼馴染のような友達同士。言いたい放題に言い合いながら重夫はとみ子の家で朝食を食べる。
とみ子は重夫と学校へ行く途中、母真知子と重男の父貞一をくっつけようという話になる。事あるごとに二人を引き合わせようとするとみ子と重夫だが、二人の危惧をよそに真知子も貞一もお互いまんざらでもなく親しく付き合い始める。そんなある日、真知子の義母かねが家を訪ねてきて、空港で飛行機に乗って遊覧することに。かねを送って行った真知子は、そこで偶然貞一と会う。ところが階段で足を捻挫した真知子は貞一に抱えられ、それを真知子の教え子に写真を取られる。
後日、自宅にその写真が届けられたが、それを見たとみ子は、何故か急に泣き出し、家出をすると言い出す。その場に重夫もいたがどうしようもなく二人で家出をする。雨が降ってきて行き場をなくした二人は、重夫の医院にきていた患者の女将の旅館柳家に泊まることにする。偽名を使ったが女将は重夫を思い出し、自宅に電話し、真知子と貞一が迎えにくる。そして四人でその旅館に泊まり朝食を食べた後、重夫ととみ子は学校へ行き、それを見送る貞一と真知子の姿で映画は幕を下ろす。
冒頭の犬は途中からおざなりになるし、かねの存在も適当感満載、しかも主人公二人は裕福な家庭という雲の上のような物語。でも、制作された1962年当時の若い男女の姿、劇場へ来る観客の顔が見えてくるような一本だった。