くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「ホワイトバード はじまりのワンダー」

「ホワイトバード はじまりのワンダー」

「ワンダー君は太陽」のアナザーストーリーという作品で、主人公オギーをいじめて退学になったジュリアンとその祖母の物語なので、全く関係のない作品。今更ながらのナチス映画ではあるが、とにかく映像センスが抜群なので画面がとにかく美しい。そして白い鳥をモチーフにしたファンタジックな絵作りと、納屋の車の中でジュリアンとサラがパリ旅行する幻想的なシーンも目を見張るほどに素敵で、その一方で描かれるナチス侵略による悲劇と対峙されて映画がサスペンスフルに盛り上がるのは秀逸。物語としても面白いし、絵画的な構成も目を見張るし、なかなかの秀作でした。本当にいい映画だった。監督はマーク・フォースター

 

前の学校を退学になり転校してきたジュリアンが、新しい高校にやってくるところから映画は幕を開ける。入り口に白い鳥が停まっている。食堂で食事をしていたジュリアンの前に少女が席を取ろうとする。さりげなくジュリアンは返事をするが、そこへクラスメートの男子生徒がジュリアンをグループに誘い、向かいに座った少女を蔑むような態度をする。どうやらその少女は嫌われているらしい。

 

家に帰ってきたジュリアンは、パリからやってきた祖母サラと出会う。サラはジュリアンの学校初日の話を聞き、これからは何事にも関わらず普通に暮らす事にしたと言うので、サラは、なぜジュリアンは転校せざるを得なかったかを語ると同時に、サラが体験した戦時中の出来事を語り始める。

 

1942年、ナチス占領下のフランス、学校へ通っていたサラは、クラスメートと楽しい日々を送り、絵が好きなサラは授業中もスケッチブックに落書きをしていた。サラの描いた絵を担任の先生は、才能を活かして続けるようにと励ます。同じクラスメートのジュリアンは、ポリオのせいで足が不自由で松葉杖を使っていたが、クラスメートは彼を揶揄う。サラはクラスメートのヴィンセントに憧れて、スケッチブックに似顔絵を描いたりしていた。たまたまそのスケッチブックをヴィンセントに見られる。

 

やがてナチスの迫害は地方まで及び、サラは街でユダヤ人お断りの張り紙を目にするようになる。まもなくして学校に通うユダヤ人生徒を収監するべくナチスの兵士がやってくる。直前、その情報を聞いていた教師がユダヤ人の生徒を避難させ、その中にサラもいた。しかし、ヴィンセントがドイツ兵に、教師がユダヤ人を逃したと叫んだため、兵士は逃げた生徒を追いかける。サラは、なんとか校舎の裏手から塔の上に逃れて身を潜めていたが、そこにジュリアンが現れ、逃げ道を知っているからついてこいと下水道に誘う。

 

ジュリアンは自宅の隣の納屋にサラを匿い、ジュリアンの両親が世話をするようになるが、サラの両親の行方はわからないままだった。ジュリアンは授業をおしえたり、遊び相手になってサラと日々を過ごす。ジュリアンの家の二階には、ナチスに情報を密告しようととしている夫婦が住んでいるということだった。ジュリアンは映画館の映写室で仕事もしていて、そこの館主はレジスタンスらしく、サラの身分証明書を偽造してサラをスイスに逃す算段を進めていた。ところが、映画館がナチスに加担する青年隊によって襲われ、館主らも殺されて書類も散々になってしまう。

 

スイスへの逃亡が出来なくなったサラは納屋の二階でしばらく暮らすことになる。ジュリアンは、学校の後サラのところへ来るようになり、サラのアイデアで、納屋のトラックの中でサラとジュリアンはパリの街を観光する遊びをするようになる。トラックの周りにパリの街並みが広がる場面が幻想的である。

 

しかし戦禍はますます広がってきて、ジュリアンは、街中の道を使わずに学校へ通うようになる。ヴィンセントはナチスの青年隊に入り、過激な行動を繰り返し始める。ある日、成績優秀なジュリアンは飛び級進学になる事になったと校長に言われるが、その時校長室にサラのスケッチブックを見つける。ジュリアンは、校長室に忍び込んでスケッチブックを盗みサラの元へ届けようとするが、それをヴィンセントが見ていた。

 

ヴィンセントは仲間と納屋を襲い、ジュリアンを痛めつけるが、ジュリアンの機転で納屋のコウモリを飛び立たせたのでヴィンセント達は逃げてしまう。やがてサラの誕生日がやってきて、ジュリアンの両親も交えて納屋でささやかな誕生パーティーをしてもらう。ジュリアンはさらに木彫りの白い鳥をプレゼントし、夜中にサラを森に連れ出して、花が咲き乱れる中、戦争が終わったら一緒に暮らしたいとプロポーズし、サラも受け入れる。

 

翌日、つい気を許したのかジュリアンは、街中の道を通って学校へ向かうが、そこでヴィンセントに見つかり、ドイツ兵がジュリアンのところへやってくる。たまたま身分証明書を持参していなかったジュリアンはそのままトラックに乗せられてしまう。ジュリアンの残した鞄を見たヴィンセントは、かつてサラが自分を描いたスケッチブックを発見、納屋にサラがいると確信して、一人納屋に向かう。

 

サラはヴィンセントがバイクで来たことから、納屋を逃げ出すが、ヴィンセントは機関銃でサラを撃ちながら森へ追い詰めていく。ところがサラに追いついたヴィンセントに森の狼が襲い掛かり噛み殺してしまう。

 

窮地を脱したサラは、ジュリアンがナチスのトラックで攫われたことをジュリアンの両親に知らせるべくジュリアンの自宅に駆け込むが、ナチスに密告していると思っていた二階の夫婦は、実はユダヤ人を匿っているレジスタンスだと判明する。ジュリアンの両親は慌てて街に行くが、ヴィンセントの仲間で青年隊にいるクラスメートから、病人と一緒にトラックで連れ去られたことと、金を渡せば釈放されることを知る。

 

ジュリアンの両親は二階の夫婦に金を工面してもらい、トラックを追いかける。トラックは森の途中で乗せてきた病人達を下ろし、歩かせていた。ジュリアンを心配するサラはジュリアンの自宅の二階で歌を歌い無事を祈る。白い鳥が森へ飛び立ち、それに合わせて森を歩くジュリアンも歌を歌う。

 

ジュリアンの両親がドイツ兵の隊長に追いつき金を渡し、隊長らは病人達の後を追う。ところが病人達は途中で脱走を企て、それに巻き込まれたジュリアンは撃ち殺されてしまう。森の奥で銃声を聞いた隊長らはジュリアンの両親を連れ戻してしまう。ドイツ兵が去った後、森に行ったジュリアンの両親だが結局ジュリアンは見つからなかった。

 

やがて連合軍がパリを解放し、戦争は終結に向かう。サラの父が、サラに会いにきて無事な姿を見せる。しかしサラは、母が収容所で亡くなったことを知る。ジュリアンの両親はサラを子供のように育て、やがて結婚、家庭を持つに至る。話を聞いたサラの孫のジュリアンは学校で、ビラを巻くクラスメートらに賛同して活動を始める。サラは今や画家になって個展を開いていた。壇上に立つサラが過去の過ちを訴え、会場を後にする。白い鳥が街に舞い上がって映画は終わる。

 

映像の美しさは目を見張るものがあり、反戦を訴える映画ですが映像作品として非常にクオリティも高く、またサスペンスフルに展開するストーリー構成も見事で、白い鳥を幻想的に使ったファンタジックな色合いも素晴らしい。かなりの秀作という感じに映画でした。