くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「ソウル・オブ・ア・ビースト」「わたしは目撃者」

「ソウル・オブ・ア・ビースト」

美しいカメラと目まぐるしいカット割りで映像詩のように描いていくストーリーがなかなか秀逸で、映像で心の姿全てを表現するので、時に壁が崩れるなどのシュールな場面も散見されるが、語りが見事なので、違和感を感じなくなっていく。日本語のナレーションは子連れ狼を意識しているらしく、日本刀を振り回したりする場面もあり日本的な思想を背景にしているのはわかるが、それは流石に伝わってこなかった。とはいっても、映画としてはちょっとした個性的な佳作だったと思います。監督はロレンツ・メルツ。

 

日本語のナレーションから場面が変わると、バイクの荷台にスケボーに乗った青年が捕まっていて、赤信号の交差点に飛び込む。どうやら運試しをしている風である。言葉を話さない息子のジェイミーの世話をするガブリエルは、近所の黒人婦人アフアに子供を預けて時々遊びに出掛けている。妻のゾエは、育児放棄なのか何かの依存症なのか施設に入っている。ガブリエルは孤独を癒すためにネットでジョエルという青年と知り合い、彼の家に遊びにいく。そこでジョエルの恋人コーリーと知り合い一目で惹かれてしまう。

 

コーリーもまたガブリエルが気になり、ジョエルと三人で遊ぶようになり、夜の動物園に忍び込んだりする。ガブリエルは当初は子供がいることは話さなかった。翌朝、動物園からキリンやピューマが脱走したニュースが流れ、夜間の外出が禁止される。コーリーの気持ちがガブリエルに傾いているのを知ったジョエルは、次第にガブリエルに嫉妬を覚えていく。ガブリエルは、ゾエの暮らす施設にジェイミーを連れていくが、ゾエは全く相手にならず、ゾエの母も子供に構おうとせず勝手にダンスをしたりしている。

 

ガブリエルとコーリーはますます惹かれあい、ジェイミーを交えて会うことも頻繁になる。動物が捕獲され射殺されるニュースの中、動物愛護団体の抗議デモも頻繁になる。ゾエが勝手にガブリエルの家に押しかけてきたりするがガブリエルはゾエを追い出し、ゾエは夜間外出禁止のパトロールの警官に逮捕されていく。

 

夜のデモに出かけたガブリエルはローリーと出会い、警官の催涙ガスの中公園に逃げた二人は体を合わせる。ところがガブリエルが帰ってみると、ジェイミーはゾエとその母に連れ去られたとアフアが訴える。施設に行ったガブリエルはジェイミーを連れ出すが、そこに、ローリーから連絡が入る。ローリーはジョエルのバイクに乗せられ空港へ向かっているという。不吉な予感がしたガブリエルが追っていくと、ジョエルはいつものように赤信号で交差点に飛び込み車に轢かれ二人とも死んでしまう。

 

ガブリエルはジェイミーをこれからも一緒に育てる決心をし、猛スピードで車を走らせ、広い畑に走り込んでいく。警官が追ってくるが捕まらず、テレビアンテナが刺さって死んでいるキリンがいる現場にたどり着く。ガブリエルは日本刀でキリンの首を切ってやる。こうして映画は終わりエンドクレジットの後、冒頭の扇風機と雑魚寝で寝ている男女のシーンでエンディング。

 

夜、キリンが闊歩したり、ガブリエルを襲ってきたり、日本刀がなぜかあったり、ガブリエルのアパートの壁が崩れたり、シュールな映像も多々あるものの、全体が一つのリズムを持った作りになっているのは見事だと思う。光を有効に使ったカメラも美しいし、なかなかの作品でした。

 

「わたしは目撃者」

少々作り込みすぎたきらいはあるものの、とにかく面白い。冒頭に出てくる様々な人物が次々と犯人から外れていく一方で、何のために出てきたのかわからないくらいに次々と怪しい人物が出てくるので、物語を追いかけていくだけであれよあれよとサスペンスの世界に放り込まれてしまう。主人公は盲目のアルノではなくて、いつのまにか記者のジョルダーニになっていったり、可愛いロー二という女の子の意味もよくわからないけれど、目玉のアップによるいかにもサスペンスという演出や、チラチラと挿入される細かい殺戮場面などもあざといながらも楽しめました。監督はダリオ・アルジェント

 

目の見えないアルノが姪のローニと夜の街を歩いている。傍にいかにも怪しい車が止まっていて、そこを通り過ぎたところでアルノがローニに、車の中に見える人物を聞いたりする。家に帰ったらアルノは、窓から下を見下ろすカットの後、何やら守衛らしき男が襲われ、守衛室に引き摺り込まれる。ある遺伝子研究所の中で研究員の二人が仕事を終えて出てくる。一人の男が出口で駐車場の門が開かないので守衛室に行って守衛が倒れているのを発見する。やがて警察がやってくる。

 

翌日、遺伝子研究所の前をアルノが通りかかり、記者のジョルダーニとぶつかる。ジョルダーニから、研究所内で泥棒が入ったらしい事件が起こったが何も盗まれていないという情報を得る。後日、研究所の研究員カラブレシは、17時に駅のホームで待ち合わせるという電話をするカットの後、ホームで突き落とされて死んでしまう事件が起こる。そのニュースを新聞でローニから聞いたアルノは、その記事がジョルダーニが書いたと知って新聞社を訪れ、写真がトリミングされていることを話す。アルノは以前新聞記者だった。ジョルダーニが、現像室に連絡をして調べてみると、拡大写真に何ものかの手が写っているのを発見、殺人と断定される。しかしジョルダーニがアルノと共に現像所に駆けつけると、所員は何ものかに殺されていた。一体犯人は何で知ったのか?

 

カラブレシの恋人ビアンカは、カラブレシが隠していた何かが気になり、カラブレシの研究室に行き、自家用車の中でメモを発見する。そのメモを首にかけたロケットに隠す。一方、アルノはローニと共にビアンカに会いにいく。何もわからなかったが、ローニはビアンカの首にあったロケットを覚える。ところがしばらくしてビアンカも殺されてしまう。その頃ジョルダーニは、研究所のテツォ所長の娘アンナに接近していた。さらに、研究員のカソニから、新薬の研究が行われていたことと、遺伝子の染色体から、犯罪者になる可能性のある遺伝子の形を知る方法がわかる研究が行われているのを知る。

 

ビアンカが殺されたことから、アルノは、ビアンカがカラブレシから何か証拠を見つけたと判断し、その証拠のメモがビアンカのロケットに隠されていると判断、ジョルダーニと一緒に墓地に行き、ビアンカの遺体からロケットに隠されたメモを発見する。しかし、ジョルダーニが棺を閉じているときに外で待っていたアルノが襲われ、メモが奪われた上、ローニが誘拐されてしまう。しかし、争った際、アルノは犯人に怪我を負わせる。

 

アルノはジョルダーニを伴って警察に行き、ローニの居場所を探る。そしてテツォ所長の家に行きアンナに迫る。実は、ジョルダーニは、事前に所長の部屋に忍び込み、アンナが所長の実の娘ではないことを突き止めていた。というか、このエピソードが何の意味があるのか最後まで不明だった。ジョルダーニ、アルノ、警察官らが研究所内をくまなく探すもローニは見つからず。諦めて引き上げようとした際、ジョルダーニは、天井から滴り落ちてくる血に気がつき、犯人が屋上の物置にいると気がつく。外の梯子から物置へ行ったジョルダーニは犯人と対峙する。犯人はカソニ博士だった。彼は、自身の遺伝子に犯罪者の染色体と同じものが見つかったことを知り、そのデータを入れ替えるために研究所に忍び込んだのだった。それをカラブレシに気づかれ彼を殺したのだ。ジョルダーニがカソニと揉み合いジョルダーニは倒れるがそこへアルノが現れ、ローニの居場所を問い詰めるが、カソニは、ローニはすでに殺したと叫び、アルノと揉み合いうちにエレベーターホールから落下して死んでしまう。しかし、ローニがアルノを呼ぶ「ビスケット」の絶叫が響いて映画は終わる。

 

何とも言えないてんこ盛りのエピソードの連続の作品で、全体はいかにもサスペンス色満載なのだが、これは必要なのかという設定や展開が次々と起こっていく。アルノが盲目でクロスワードパズル作家である必要とか、可愛いローニの存在とかの設定は何のためなのかも結局不明だし、本編のほとんどがジョルダーニの活躍で、アンナとの濡れ場さえもあり、とにかく、謎めいた舞台設定を羅列していく流れは何とも言えない。でも、その羅列が最後までサスペンスを引っ張っていくから面白い。B級レベルと言えばそれまでだが、クセになる映画だった。