くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「図々しい奴」(瀬川昌治監督版)「三等兵親分」

「図々しい奴」

男の純情ドラマは最近少なくなったので、めちゃくちゃに感動してしまいました。谷啓の一生懸命な演技もさることながら全盛期の佐久間良子が雲の上の人くらいに美しい。ハイテンポで描かれる出世物語のテンポも心地よくて、さりげない笑いのペーソスも散りばめられて、楽しいひと時を過ごしました。監督は瀬川昌治

 

昭和六年、旧岡山城主伊勢田家に見合い相手で公爵の娘がやってくるにあたり、地元警官らが道の整備をしている場面から映画は幕を開ける。そこへ、母の棺桶を引っ張って幼い切人が通りかかり、巡査に咎められる。一方、見合いに乗り気ではない伊勢田家の若殿直政は、家を抜け出して植木屋の半纏を着て丘の上で寝そべっていたが、そこへ切人がリヤカーを引いてやってくる。そして二人で切人の母を埋めてやり、切人は礼に直政を自宅に呼んで食事をご馳走してやるが、そこへ伊勢田家の番頭がやって来て、手伝ってくれた男が伊勢田家の若殿直政だと知る。

 

直政は切人を自宅に迎えて書生として雇うようになるが、途中、切人が捨て子の女の子を連れて来てしまったため、その女の子もマリアという名をつけて一緒に暮らすことになる。五年の月日が経ち、青年になった切人は東京にいる直政の元へ修行に向かうことにする。直政の口利きで和菓子の老舗虎屋に奉公に出るべく切人が虎屋に向かうと、そこで、虎屋の娘で今は園田という華族の家に嫁いでいる美津江と知り合う。美津江はかつて直政と恋仲だったが、結婚に至らず今の家に嫁いでいた。しかし、仲が良くない美津江夫婦は間も無くして離婚し虎屋に戻ってくる。

 

直政は、放蕩が過ぎてついに廃嫡となりヨーロッパに旅立つことになる。直政は切人に住まいと一万円の金を与えて旅立っていく。切人はしばらく虎屋で修行していたが一向に埒が開かないと判断し、自ら羊羹屋を起こし、陸軍に食い入って、軍御用達となり、みるみる出世していく。一方美津江への想いは途切れることはなく、美津江が胸の病を患ったことを知って自宅に迎えようとするが美津江は断る。

 

そんな時、軍に出荷していた羊羹が原因で赤痢が広がり、切人は一文無しになる。そんな切人を励ましに美津江が無理やり住み込みに来るが、そこへ切人への召集令状が届いたと岡山から知らせが来る。美津江は切人を送り出すために体を与えようとするが、切人はすんでのところで潔く断り、出征していく場面で映画は終わる。

 

当然続編が作られていて、切人のその後が途中で終わる形になっています。役者陣の好演で非常に心地よい映画に仕上がっていて、見ていて思わず涙ぐんでしまう場面もちらほらあり、当時大ヒットしたのも納得の一本でした。

 

 

 

「三等兵親分」

アメリカ映画「マッシュ!」を彷彿とさせる軍隊群像劇で、個性的なキャラクターを個性的な俳優陣が演じていく面白おかしい展開がとにかく楽しい娯楽映画だった。監督は瀬川昌治

 

出征を明日に控えた中林が、遊廓にいる恋人カズ子と五夜を過ごしている場面から映画は幕を開ける。同じ廓で十文字組の親分兵頭も出征を明日に控えてどんちゃん騒ぎをしていた。そして二人は厠でで会う。やがて兵舎にやって来た中林や兵頭だが、サーカス出身の豊川や占い師の大峰、運転手の清水、警察官の赤松など個性派揃い。彼らは補充兵という立場もあり、事あるごとに堀軍曹ら上等兵からのいじめにあってしまう。

 

中隊長の橋爪は中林と中学時代の同級生だった。そんな中林にカズ子から手紙が届くが、上等兵らに揶揄われてみんなの前で読まされてしまう。中林は、屈辱に耐えても優等兵になって外出することを誓うが、中林が野戦に出されるという噂を聞きつける。野戦にでたらカズ子に会うこともできなくなると思った兵頭は、コネを使って中林をカズ子の元に送り出してやる。ところが折下、中林の居る廓に憲兵隊の検閲が入り、中林は這々の体でその場を逃げるが、その際足を挫いてしまう。兵頭の十文字組の機転で中林は十文字組に匿われる。

 

一方隊では、中林は脱走兵として軍法会議にかけられようとしていた。窮地を打破するため、隊の軍旗を豊川に盗ませ、それと引き換えに中林の罪を消してもらう計画を立てる。ところが豊川が、盗んだ軍旗を落としてしまい、それをたまたま隊の仲間が拾う。兵頭は部隊長と交渉し、中林と軍旗の交換をさせるべく大峰に占いの芝居を打たせる。そして無事中林は隊に戻り軍旗も元の場所に戻るが、結局兵頭らはそのまま戦地に送られる。輸送船の中で河内音頭を歌う兵頭らの姿で映画は終わる。

 

心地よいテンポで展開する群像劇で、深みあるドラマは微塵も出てこないものの、ストレートに感情に訴える娯楽作品として仕上がっているのは流石に職人監督らしい仕上がり。面白い一本だった。