くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「紅夢」(HDリストア版)「レッド・サン」(4Kリマスター版)

「紅夢」

左右対称の徹底的なシンメトリーな構図と朱に彩られた色彩演出の妙味、中国古典芸能の音楽とモダンなテンポを組み合わせた音響演出、まるで世界の姿を富豪の大邸宅に凝縮させたストーリ展開、初公開以来の再見でしたが、やはり傑作だった。これが張芸謀だといまだに思うのですが、その印象は崩れることはなかったです。素晴らしい映像芸術でした。監督は張芸謀

 

画面中央、頌蓮のアップ、そして嫁がないといけないとつぶやき、涙が一筋流れてタイトルが出る。夏、頌蓮は嫁ぎ先の陳家に第四夫人としてやってくる。召使の女が洗濯をしていたので、荷物を預けるが、のちに頌蓮の召使となるその女は何かにつけて頌蓮を敵視するようになる。陳家の屋上には秘密の部屋があり、死人の部屋と呼ばれていた。

 

主人が頌蓮の初夜に寝所で過ごしていると、第三夫人の梅珊は具合が悪いと無理矢理主人を呼び出す。梅珊は役者上がりで、翌日も主人を呼び出そうとするが主人が応じなかったので、早朝から歌を歌って頌蓮に嫌がらせをするが、頌蓮は挑戦的に梅珊の歌を聞きに屋上へ行く。頌蓮に親しくしてきたのが第二夫人の卓雲だった。彼女は何かにつけて頌蓮に親切にするが、ある日、頌蓮の父の形見の笛が見当たらず、召使の女が盗んだのではと女の部屋へ行くと、その召使が夫人と同じく赤いランタンを灯しているのを見つける。頌蓮は、夢中で笛を探し荷物を荒らしていて頌蓮の人形に針を刺している物を発見する。召使の女は字が書けないのを知っていたので問いただすと。卓雲の仕業だという。

 

後日、梅珊が頌蓮に、一番腹黒いのは卓雲で、かつて梅珊が妊娠した時も流産する薬を盛られたりしたことを告白する。人を信じられなくなった頌蓮は、自ら妊娠したフリをして主人に毎夜来てもらうようにし、他の夫人を顎でこき使おうとするが、たまたま生理の血を召使の女が見つけて卓雲に告げ口し、主治医の高が診察にやってきて妊娠の嘘がバレてしまう。怒った主人は頌蓮のランタンを封印してしまう。実は高先生は梅珊の愛人でもあった。

 

それからは、主人は卓雲に入り浸るようになる。頌蓮は召使の女に仕返しのため召使の女の部屋のランタンの事をを明らかにして、正妻にそのけじめをつけさせる。召使の女は、意地で詫びる事をせず、雪が降る夜、庭に座らされ、それが原因で、病院で死んでしまう。やがて、頌蓮の二十歳の誕生日、年老いた召使に酒を買って来させて酔い潰れた頌蓮はつい、梅珊と高先生の不倫を口走ってしまう。卓雲が梅珊の密会の現場に踏み込んで梅珊は使用人に拉致され、屋上にある死人の部屋に閉じ込められる。

 

頌蓮がその部屋に行くと梅珊は死んでいた。頌蓮は梅珊の部屋にランタンを灯して、梅珊の歌声の入ったレコードをかけて、使用人たちを怖がらせる。翌年の夏、第五夫人がやってくる。外では、あれ以来気が触れてしまった頌蓮は真っ赤に灯されたランタンの中でふらふらと彷徨っていた。こうして映画は終わる。

 

入り組んだ屋根を俯瞰で捉え、大富豪の屋敷に世界の縮図を描いていく手腕が素晴らしく、時に遠景で捉え、時にクローズアップを挿入し、シンメトリーな画面にかぶる古典芸能の音楽を交え、全てが組み合わされて一つの映像芸術に昇華していく作りは圧巻で、これぞ映画芸術という一本だった。

 

 

 

「レッド・サン」

シンプルなストーリーで、見せ場の連続で描くエンタメ映画。とにかく次々と見せ場が繰り返されるのであれよあれよとラストシーンまで突っ走ります。男の友情や武士道、ラブストーリーも交えているものの深堀はせずに、ひたすらガンアクションを展開していく潔さがとにかく面白い作品だった。監督はテレンス・ヤング

 

馬に乗ったリンクが、駅で一台の汽車を待っている場面から映画は幕を開ける。1870年、日本の使節アメリカ大統領の元へ向かっているというテロップが出る。やがて到着した列車に乗るが、リンクはお尋ね者らしく賞金を狙って一人の男が銃を向ける。ところがその男の背後で銃を向けたのがリンクの相棒ゴーシュだった。二人の乗った汽車が出発するが、リンクの合図で同乗していた男たちが銃を持って立ち上がり列車を占拠、列車の先には羊の群れが線路を覆って、汽車はそこで立ち往生、日本使節団の警護の兵隊も一旦汽車を降りてしまう。

 

間も無くして馬でリンクらの仲間が駆けつけて来て、貨車に積まれた金庫が爆破され、大金が運び出される。日本使節団の貨車にもリンクらは突入して、使節団の金を奪うが、大統領へ献上する刀を見つけたゴーシュは日本人の一人を撃ち殺しその刀も奪ってしまう。ところが、ゴーシュの手下が、金を持ち出している途中のリンクにダイナマイトを投げ入れ、リンクはすんでのところで脱出したが、ゴーシュは手下と共に金を持って逃げてしまう。去り際、黒田はゴーシュに、必ず見つけて殺すと豪語する。

 

使節団の一人黒田がゴーシュに撃たれた仲間を埋めてやっていたが、傍に倒れているリンクを発見、銃を奪って助ける。どうやらリンクはゴーシュに裏切られたと見た黒田は、上司の命を受けて、リンクと共にゴーシュを追うことにする。黒田の使命は仲間を撃ったゴーシュを殺すことと献上品の刀を奪い返すことだったが、リンクはゴーシュを殺さずに金の在処を探すのが目的だった。黒田は、期限は七日後と指示される。

 

隙を見ては逃げようとするリンクと共に黒田はゴーシュのアジトを目指していく。リンクらはゴーシュの情婦クリティーナがいる売春宿でゴーシュを待つことにする。クリスティーナはリンクの元情婦だった。ゴーシュの手下がクリスティーナを連れ出しに来たのでリンクらが返り討ちにし、手下の一人に、外れの教会で待ち合わせることをゴーシュに伝えさせる。

 

リンクはクリスティーナ、黒田と教会を目指すが、途中立ち寄った村で、コマンチ族に襲われた跡を見つける。翌朝、クリスティーナは一人馬で逃げるが、途中でコマンチ族に捕まり、あわや殺されるというところをリンクと黒田が助ける。そして約束の教会に着くが、ゴーシュらが待ち伏せしていた。一時は武器を奪われたリンクたちだが、そこへコマンチ族が襲いかかる。ゴーシュは黒田に献上品の刀を返し、リンク、ゴーシュ、黒田らがコマンチ族を迎え撃ち、草むらの中で最後の決戦となる。そして、コマンチ族を倒し、黒田は最後に仲間の仇とゴーシュに襲いかかるが、リンクが斬り殺せという叫び声を、待てと勘違いして一瞬怯んだ隙にゴーシュは黒田を撃ち殺してしまう。リンクは金のありかを聞くためにゴーシュを助けるつもりだったが黒田を殺されたことでゴーシュを撃ち殺す。

 

黒田は死の寸前、取り返した献上品の刀をリンクに託して息を引き取る。リンクはクリスティーナと別れ、約束の汽車を待つ。最後の最後、手渡すことをやめ、電線に刀をつないで何処かへ去る。電線にぶら下がる刀のショットで映画は終わる。

 

リンクと黒田の男の友情ドラマで締めくくるあたりが憎いというか、今となってはやや古臭いのかもしれないが、全編ひたすら見せ場の連続で、クライマックスのコマンチ族のエピソードは明らかに見せ場のためだけという展開はとにかくシンプルに楽しい。エンタメ映画はこうでなくっちゃという典型的な映画だった。