くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「夜の訪問者」「嗤う蟲」

「夜の訪問者」

リチャード・マシスンの原作があるのですが、展開が行き当たりばったりで、しかも悪人が主人公の味方に変わったり仲間割れしたり、主人公たちも、あっさり逃げられるのに窮地に舞い戻ってきたりとなんとも言えない映画だった。クライマックスのカーチェイスシーンだけが白眉の出来栄えでそれ以外は完全にダラダラと時間を引き延ばしていくだけだった。監督はテレンス・ヤング

 

クルーザーで観光案内をしているジョーが港に戻ってくるところから映画は始まる。家に帰ると妻ファビアンヌが待っていたが不審な電話がかかってくる。そして、気がつくと一人の男ホワイティが部屋に入り込んでジョーを殴り倒しファビアンヌを脅してくる。なんとか意識を戻したジョーは反撃してその男を殺してしまう。実は朝鮮戦争の後、営倉でロスという男と知り合い、脱走計画に乗るが、すんでのところでドイツ警官に見つかり、その際ドイツ警官を殺したため、ジョーはロス達を残して逃亡、ロスたちは二十年刑務所に入った。

 

七年後、出所してきたロス達は、たまたま新聞記事で人命救助をしたジョーを見つけて居場所を探し、麻薬取引にジョーの船を借りるためにやってきたのだ。ジョー達はホワイティの死体を崖から捨てて家に戻ったが。そこにロス達が待ち構えていた。そしてジョーに協力を強制する。ジョーはロスの仲間のカタンガを船に乗せて取引の現場に向かうが、途中でジョーの機転で船を操作してカタンガを眠らせて港に戻る。ところがロスたちはミシェールも人質に取っていた。

 

ジョーは取引の金を取りに空港へ向かったファウストをエレベーターで殺し、金を持ってくるモイラを欺いて金とモイラを町外れの小屋に監禁、ロスのところへ戻りファビアンヌとミシェールと引き換えにモイラたちを渡す取引をする。モイラのいる小屋まできたジョー達だったが、ファビアンヌとミシェールを逃した途端、カタンガのマシンガンが火を吹き、それに飛びついたジョーが揉み合ううちに流れ弾がロスに当たってしまう。

 

ロスは瀕死の状態でモイラのいる小屋に辿り着いたものの、このままでは死ぬと判断したロスはファビアンヌとミシェールを人質にしてジョーとモイラに医者を連れてくるように指示、ロスはカタンガを見張ることにする。この辺りになると誰が悪人かごちゃごちゃである。なんとか医者を車に乗せたジョーだが、制限時間が迫っていた。ものすごい運転でジョーは疾走してロスがいる小屋を目指すが、時間が迫りロスはほとんど意識がないままカタンガを脅しているだけになる。ファビアンヌは隙を見てミシェールと脱出するが、気を失ったロスを残して金を持ったカタンガがファビアンヌに迫ってくる。

 

ファビアンヌは草に火をつけてカタンガを撒いていくが、そこへジョー達が駆けつける。医者がロスのところへ行くがすでに事切れていた。ジョーはカタンガに脅されてファビアンヌ、ミシェール共に再度船に乗って取引の場所へ向かうが、ジョーが避難信号を出す銃を手に入れ、それでカタンガを撃って火だるまにして海に落として無事港に戻る。港では革命記念日のお祭りが賑やかに行われていて、警官が暴走したジョーの車の違反切符を切って映画は終わる。

 

なんとも言えない展開にツッコミどころ満載ですが、チャールズ・ブロンソンのスター映画として見るならこれもまた良しとできる一本だった。

 

 

「嗤う蟲」

田舎蔑視の気持ちの悪いB級ホラーだった。しかも脚本が薄っぺらくて、中身があまりにも面白味がないので見ていて嫌になってくる。今更大麻でも無かろうにという独創性のなさも残念だったし、映像に面白みもないし、ちょっと期待もあったので余計にがっかりな映画でした。監督は城定秀夫。

 

若い夫婦杏奈と輝道が麻宮村に移住していくるところから映画は幕を開ける。在宅ワークで暮らす二人はそれぞれに仕事を持ち、輝道は田舎で野菜を育てる計画、杏奈はイラストレーターの仕事をこなし始める。隣に住む三橋に野菜をもらったり、最初から期待通りの田舎暮らしに喜んでいた。村では村長の田久保を中心に歓迎され、いろいろと世話をしてもらうが、何事にも田久保を通す村人の姿に違和感を覚える。

 

間も無くして杏奈は妊娠し、村をあげてお祝いをされる。年に一度の村の火祭りで火筒を持つようになった輝道は何かにつけて田久保に目をかけられる。そして火祭りの後、宴会で酒を飲んだ輝道だったが田久保に促されて田久保を乗せて車で帰路に着く。ところが途中で人を轢いてしまう。それは三橋だった。田久保は警察に行かない方が良いと説得し、二人で川から死体を投げ捨てる。

 

後日、田久保は輝道を自身の温室に案内する。そこには大麻が栽培されていた。政府の許可をもらって、合法な部分だけを出荷しているのだという田久保の説明に、不安ながらも納得した輝道だったが、不信感を持つ。やがて杏奈は出産、村人は大喜びで赤ん坊を迎えるが、田久保の妻よしこが執拗に関わってくる。さらに三橋の妻も首をつって自殺してしまう。輝道は田久保に誘われて大麻栽培の仕事をするようになるが、どうやら反社と大麻取引をしているようだった。合法で栽培したものを田久保の蔵で村人達が精製しているのだった。

 

杏奈は、次第に落ち着きがなくなる輝道にしばらく休むようにと勧めるが、輝道が田久保に休む旨を告げると途端に嫌がらせが始まる。輝道は田久保に詫びを入れて大麻の仕事を再開、蔵の中の様子を杏奈は見てしまう。杏奈は村を出る決心をして赤ん坊を連れて車で出るが、途中で村の駐在に止められ、拉致されてしまう。実は三橋は、不審な行動をしていて駐在に咎められ、揉み合ううちに駐在の銃を盗んだ三橋は田久保を襲った。そして銃で田久保を撃とうとした瞬間、駐在が駆けつけて三橋を殺し、その遺体を道に寝かせて輝道の車に轢かせたのだった。

 

全てを話された杏奈は、観念して田久保らに従うようになる。やがて二回目の火祭りの夜が来る。輝道らが抱える大筒に杏奈はあらかじめ蔵から盗んだ大麻を詰め込む。大麻の煙が充満し朦朧とした村人の中を、赤ん坊を取り戻した杏奈は車に向かう。車にたどり着いたものの田久保が追い縋ってくる。輝道が駆けつけ田久保を殴り殺す。そして杏奈、輝道、赤ん坊の三人は車で村を脱出して物語は終わる。エンドクレジットの後、寂れた村の様子と、冒頭で映された蟲のアップが映って映画は終わる。

 

社会風刺が隠されているのかもしれないが、映画全体としてはテレビドラマレベルに気持ちの悪い仕上がりで、ラストもあっさりだし、途中の展開もありきたりで、しかも今更大麻栽培って芸がなさすぎる。なんで赤ん坊を産むことがそれほど歓迎されているのかには触れない。どうしようもない気持ちになる映画だった。