「ゲームの規則」
ほぼ四十年ぶりくらいの再見。流石に恐ろしいほどの傑作だと改めて感じ入ってしまった。不道徳な恋愛関係のドタバタ劇で、しかも殺人事件まで起こる物語なのに悲壮感の微塵も感じられず、逆に人生ってこんなもんだと笑い飛ばすような人生讃歌が描かれている。この感性はなんだろう。カメラのリズムが生み出すものか、機関銃のように繰り出されるセリフの応酬が生み出すものか、凡人の力量を超えた作品の迫力に唖然とする映画だった。監督はジャン・ルノワール。
23時間の大西洋横断飛行に成功したアンドレが大勢の人々に迎えられて現れるところから映画は幕を開ける。ところが、愛するクリスティーヌはその場に来ていなかった。彼女のために命をかけて臨んだ偉業なのにと嘆くアンドレに、友人のオクターヴが駆けつける。そんなクリスティーヌはパリの邸宅で次女のリゼットに着替えを手伝わさせながらラジオでアンドレのニュースを聞いている。夫のロベール・ラ・シュネイ侯爵を始め、社交界ではクリスティーヌとアンドレの仲は有名だった。一方ロベールもまた愛人ジュヌヴィエーヴと関係を続けていた。
クリスティーヌの相談相手でもあるオクターヴは、ラ・シュネイ家の領地コリニエールで催される狩猟の会にアンドレを招待させる。ロベールの知人達と共にアンドレも現れ、この日、コリニエールで狩猟の集いが開催される。コリニエールの密猟管理人シュマシェールは、妻リゼットと別居していたが、妻のことが心配でコリニエールにやってきて密猟人のマルソーを捕まえる。ロベールはマルソーを気に入って使用人として雇い入れるが、マルソーはリゼットを口説く。
ロベールはジュヌヴィエーヴと別れることにして別れのキスをするが、それをクリスティーヌはてっきり二人は愛を交わしているのだと誤解し、クリスティーヌに愛を打ち明けるサン=オーバンと姿を消す。シュマシェールは、リゼットがマルソーと抱き合っているのを見てキレてしまい銃を振り回しながら追いかけ回す。舞台上の余興で、ロベールは自慢の自動楽器を演奏させる。クマの着ぐるみを着てダンスをしていたオクターヴは着ぐるみが脱げなくなり右往左往する。ロベールはアンドレとクリスティーヌが抱き合っているのを見つけてアンドレを殴る。
ようやく大騒ぎも収まり、ロベールはアンドレと和解し、クリスティーヌの幸せを願うことを誓う。そしてマルソーとシュマシェールを解雇する。マルソーとシュマシェールが落胆して庭で話していると、玄関からマントを着たリゼットとオクターヴが現れる。しかし、それはリゼットのマントを着たクリスティーヌだった。オクターヴとクリスティーヌは温室にいって抱き合い、二人で邸宅を抜け出して出ていくことを約束する。そしてオクターヴは上着とクリスティーヌのマントを取りに邸宅に戻る。一方シュマシェールは、オクターヴを撃とうと銃を取りに戻る。
邸宅に戻ったオクターヴは、リゼットに止められて、クリスティーヌのマントをアンドレに託し、自身のコートをアンドレに着せてやり送り出す。実はオクターヴもクリスティーヌを愛していた。温室に戻ったアンドレだが、オクターヴのマントを着ていたため、シュマシェールは銃でアンドレを撃ち殺してしまう。事情を知ったロベールは、密猟者を撃とうとした事故だったとその場の人たちに説明して、全員邸宅に招き入れ、何事もなかったかのようにして映画は終わる。
クライマックス、銃で追いかけ回すシュマシェールの姿と逃げ回る妻リゼット、そしてそれに絡むリゼットを口説こうとしているマルソー、さらに、余興で行われる舞台上の自動演奏楽器、クマの着ぐるみが脱げなくなって右往左往するオクターヴ、愛妻クリスティーヌがアンドレに気持ちが揺れているのに戸惑いながらも妻の幸せのために妻に出ていくことを勧める夫ロベール・ラ・シュネイ侯爵、そんなこんなが長回しと絶妙のカットの切り返してあれよあれよと描かれる。そしてラストの悲劇への流れが見事だった。これこそ映画史に残る傑作。素晴らしい。
