「大きな玉ねぎの下で」
いい映画の予感はしていたが、期待以上にいい映画だった。脚本が抜群に良くて、少々凝りすぎ感がないわけでもないけれど、一つ一つのセリフに無駄がないし、伏線をしっかり貼った展開も実によくできている。さらに配役の配置がまたよくて、それぞれの役者さんを生かせるようにそして生かすように演出していく作りも見事。桜田ひよりはそれほど好きな女優さんではないがこの作品ではめちゃくちゃにキュートで可愛かった。神尾風磨もいい感じを出しているしそのほかの脇役も生き生きしているのがいい。久しぶりに掘り出し物に出会いました。監督は草野翔吾。
郵便配達のバイクが走ってきてポストに手紙を放り込む。背後に「大きな玉ねぎの下」の曲がかぶる。場面が変わり居酒屋で友達喜一の内定祝いをしている男子学生のカット、「人生なんてなるようになる、偶然だ」といかにも無気力感の自説に酔っている丈流の姿になって映画は幕を開ける。自分のことをそっちのけにされた喜一は隣の女子グループに勝手に声をかけ始める。丈流の熱弁に異論を投げたのは女子グループの美優だったが、次の瞬間喜一が突然倒れる。看護学校に通っていた美優が咄嗟の判断で応急処置をして救急車を呼ぶ。
丈流は夜はバーでバイトをしているが、その店は昼はケーキショップだった。それぞれの備品の発注など情報を共有しようと一冊の連絡帳を作ることになる。丈流は昼の担当に引き継ぎ事項を書き、ついでにファイトマークをつけるようになる。昼のケーキショップは沙希が店長だったが、美優もバイトで入っていて、美優が連絡帳に引き継ぎ事項を書いていたが、いつに間にか夜の担当と交換日記のようになっていた。
丈流の母今日子は病弱て入院していて丈流はいつも見舞いに行っていたが、その病院に看護実習にきていたのは美優だった。二人は最初から意見が違っていたこともあり会うごとに言い合う関係だった。ラジオDJの大樹は、この日いつものようにラジオパーソナリティを務めていたが、たまたまきた手紙から高校時代の思い出を語り始める。
高校時代の大樹は親友の虎太郎と放送部にいた。大樹は、雑誌のペンフレンド募集で、明日香という女性を気に入り手紙を書くのだがその手紙は虎太郎が代筆していた。明日香はいかにもヤンキーな女の子だったが大樹は気に入っていた。明日香は病弱で入院しているらしいが、爆風スランプのファンで、初の武道館公演に行くのを夢見ていた。そんな明日香のために大樹は勝手に募金を呼びかけてチケットを買い明日香にプレゼントする。しかし公演日、昭和天皇の崩御で公演が中止になった。速達でその旨を虎太郎は知らせようとするも昭和の消印を求める人で郵便局に入れなかった。
一方、明日香は友人今日子の病室にやってくる。実は明日香は今日子に代わって手紙を代筆していた。冒頭の郵便配達が届けた明日香宛の手紙は実は今日子に宛てたものだった。虎太郎は父の仕事の関係でロサンゼルスへ行き大樹と離れ離れになり、明日香も東京へ出ていくことになり今日子と別れる。丈流の母今日子のそばに丈流の父がいた。父の名前は虎太郎だった。
丈流は先日友達を救ったという理由で喜一に勧められて、仕方なく美優を食事に誘う。そこで美優がAliというアーティストのファンだと知る。しかも丈流もファンだった。Aliは「大きな玉ねぎの下で」をカバーしていて、間も無く武道館コンサートが予定されていた。すっかり意気投合した二人だったが、丈流は武道館公演に一緒に行きたい女性がいると告白する。それはバイト先の連絡帳で交換日記をしている女性だった。丈流は、バイト先の昼の店を覗きに行き、たまたま休んでいた店長沙希を見てすっかり連絡帳の相手だと思い込んでいた。喜一が丈流からその話を聞き、昼に店に行って沙希の名前を聞き出す。
看護実習をしている美優は丈流の母今日子の病室を掃除に行き、丈流が母に書いたメモに書かれたファイトマークを見つけて、連絡帳の相手が丈流だと知る。一方丈流はAliの武道館公演のチケットを手に入れ、連絡ノートに挟んで一緒に行こうと誘う。美優は連絡帳を見て、てっきり自分宛にチケットが来たと思ったら、封筒の宛名がサキになっていた。すっかり落ち込む美優は、友人と一緒に喜一がバイトしている居酒屋で真実を言い合うが、丈流が思い描いて連絡帳に書いていた相手は沙希であることに変わりはないと、あっさり別れてしまう。
今はラジオDJの虎太郎の元に大樹から手紙が届く。久しぶりに会いたいという。実は今日子の余命は僅かだと診断されていた。虎太郎と大樹、明日香と今日子はこの日高校時代以来の再会を果たす。そして、懐かしい中で四人で写真を撮るが、間も無くして今日子は亡くなってしまう。
実習を終えて正式に看護助手となった美優は今日子の病室の前を通り、彼女が亡くなったと知る。やがて、Aliの武道館公演の日がやってくる。一方、虎太郎もまた爆風スランプの武道館公演の日がやってきた。今日子を誘ったものの、今日子は医師の許可が降りず出られなかったが、武道館の前で待っていた。丈流もまた武道館の前で何かを待っていた。美優は仕事の後、本当に会いたいのは丈流だと考え、かつてのバイト先に行ってノートのチケットを手にしてバーの店長の自転車で武道館を目指す。
爆風スランプの公演で待つ虎太郎に明日香がバイクで駆けつけ、今日子の代筆をしていたことを話し、今日子が来れない旨伝えるが、虎太郎は明日香のバイクで病院へ向かう。一方今日子も病院を抜け出し自転車で武道館を目指す。そしてすれ違いざまお互いを認め、初めて話をする。傍に玉ねぎの無人店舗があった。丈流は公演最後まで待つも美優は現れず帰りかける。美優は途中自転車が壊れ、それでも武道館を目指して、とうとう丈流と出会う。二人は見つめ合い映画は終わる。
クライマックスはかなり込み入った凝りすぎ感がないわけでもないが、小さなセリフの数々だけでなく、何気ない仕草の演出が微に入り細にいって非常に書き込まれていてハッとさせられてしまう。小品ながら非常に丁寧でいい作品に仕上げようという意気込みが見え隠れするとっても好感な良い映画だった。
「野生の島のロズ」
これは傑作だった。とにかく絵が恐ろしいほどに美しい。それは色彩のみならず構図、画面構成、動きそれぞれが超一級品に出来上がっている。それほどのスケールにも関わらず隅々までシーンが描き込まれていて楽しくて仕方がない。動物それぞれも愛くるしいほどに可愛いし、重曹的に暗喩された物語もとっても良い。良いアニメを見たという満足感に浸ることができました。監督はクリス・サンダース。
壊れた輸送ケースのようなものの中にあった一体のロボットロッザム7134が目を覚ます。どうやら輸送船が難破して流れ着いたらしく、起動したロボットは、目の前にいる生き物に、指令を求めるも生き物たちは戸惑うばかり。打ち寄せる波から逃れるために崖の上に這い上がったロボットは、広がる森の中へ進んでいく。このオープニングのユーモア溢れる絵に引き込まれる。
森の中には様々な動物がいたが、ロボットには理解できなかった。一旦学習モードに入ったロボットは動物たちの言葉を分析して理解できるようになる。ロボットは救難信号を送るが雷に打たれ動物達に襲われる。動物たちはバケモノのようにロボットと対峙し、熊と遭遇したロボットはそのどさくさの中で崖を落ち、ロボットはガンの巣に落ちて親鳥を殺してしまう。たった一つ残った卵を見つけたロボットはその卵を抱えて森に戻る。卵を狙う狐のチャッカリと争奪戦の末、卵を守り抜いたがチャッカリはハリネズミの針に刺されていた。ロボットはその針を取り除いてやる。
間も無くして卵から一羽の雛が生まれるが、最初に見えたロボットを母親だと思ってしまう。ロボットは戸惑うが、やってきたチャッカリは、冬に旅立つために今から食べること、泳ぐこと、飛ぶことを学ばないといけないと言われる。仕事ができたロボットはロズと呼ばれるようになり、ガンの赤ちゃんはキラリと名づけられる。そして、オポッサムのピンクシッポや鷹のサンダーボルトなど森の動物たちとチャッカリの奮戦で、なんとか泳げるようになり飛べるようになるが、ガンたちは化け物に育てられた鳥と言って相手にしなかった。さらに、キラリの親を殺したのはロズだとバレてしまい気まずくなってしまう。
ロズは一緒に流れ着いたロボットに残骸を発見し、自ら修復してユニバーサル・ダイナミクス社に戻るように言われるも、きらりを最後まで育てる決心を固める。渡りのリーダークビナガがキラリを認め、キラリは旅立つことが決まる。やがて秋も暮れ、クビナガたちとキラリは旅立つ。
ロズはキラリを見送った後、回収のための救難信号を送る。チャッカリら動物たちは冬に備えて穴の中に籠る。キラリたちは順調に飛んでいくが途中、雷雨に遭い、一旦ユニバーサル・ダイナミクス社の農場に避難する。しかしそこではロズの形のロボットたちが仕事をしていた。見分けのつかないキラリはつい声をかけてしまってユニバーサル・ダイナミクス社に見つかり、ロボットたちに攻撃され、その中でクビナガは命を落とす。
その頃森では強烈な冬に襲われていた。ロズは救難信号を止めてチャッカリの住処やってきたが、今年の冬は異常に寒く、動物たちは凍え死にかけていた、ロズはチャッカリと協力して巨大な穴蔵を準備して動物たちを避難させる。ロズの決死の活動で動物たちは全て洞窟に避難するが、弱肉強食の争いが起こる。ロズはチャッカリに命じて、争いをやめさせる事に成功する。
冬がさり春がやってくる。キラリたちがまた森に戻ってきた。ロズはキラリと再会するが、そこへロズを回収するための輸送船がやってくる。一時はロズは戻ろうとしたが思いとどまる。輸送船から回収ロボットが下されてロズや動物たちに襲いかかってくる。動物達の奮戦で、回収ロボットは破壊されるが、ロズが回収船に取り込まれる。そこへキラリ達ガンの群れが襲いかかり、キラリは身を挺してロズの元に駆けつけ二人で脱出、回収船は大爆発を起こし、森は山火事になってしまう。
山火事を消すために巨木を倒すべくかじっていたベッケルの力で大木を倒し川の流れを変えて山火事は消されるが、ロズとキラリが過ごした巣も全焼していた。再び回収船が来る事を予想してロズは去る事を決意する。そしてやってきた回収船にロズは乗り込んで去って行く。すっかり修理されたロズにキラリが会いに行く。ロズのキラリの記憶は残っていた。二人は再会し映画は終わる。
絵の美しさ、シーンごとの奥の深さ、動物達の愛くるしさ、そして物語展開の秀逸さ、子供だけでなく大人の干渉にも耐えうる傑作で、深読みすればさまざまな暗喩が考えられるものの、今は素直に感動したい、そんなアニメだったと思います。

